テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
◆
人魂とも霧ともつかないような精霊だ。
目が合う、なんて概念はないことくらいはわかる。
それでも、人間の危機察知能力は、これほどには直感的であるということも言っておきたい。
そんなどうでも良いことばかりが頭をよぎる。
鼓動がひどく頭に響いて、クラクラする。
それでも視界だけは妙に冴え渡っていた。
今だ。
今、行くしかない。
退けない。
退いても意味がない。
今退いたら、ほぼ確実に死ぬ。
鋭琉は、遮蔽物から背を起こして、浅く息を吸う。
深呼吸をしようとして、吸い損ねた。
頰がやたらと紅潮している。
最後にもう一度だけ、精霊に目をやる。
「(──ああ)」
「(見られてる)」
立ちあがろうとして、緊張のせいかふらつくのを根性で踏みとどまる。
──今から、後衛である精霊異能持ちをこの銃で撃ち抜けるくらいの距離まで特攻する。
つまり、敵陣の目の前まで、突っ込む。
そして、後衛から、精霊異能持ちを一瞬で見つけ出して、一発で撃ち抜く。
当てるだけじゃ意味がない。
ヘッドショット。確定で殺す。
そして、奴らが状況を飲み込む前に、人の1番多いところに手榴弾を投げ込み、精霊が消えたことを確認してからすぐに撤退。
──現実的じゃない。
でも、やるしかない。
鋭琉は、駆け出した。
敵陣までまだ距離がある。
精霊使いに場所がバレた以上、伝達される前に殺さないとならない。
胃が、ひどく縮む。
鉄臭い匂いも相まって、吐きそうだ。
「(・・・クソ)」
異能があれば。
そう思ったわけじゃない。
ただ、鋭琉の脳裏に、その言葉が姿を現した。
・・・異能があれば、戦いの度に前線に立つことはなかった。
今、こんなリスクを犯して走る必要はなかった。
敵陣まで突っ込んで、目標がどれかもわからないのに射程距離ギリギリからヘッドショットを決めないと死ぬなんてことはなかった。
そこまで考えて、鋭琉は手榴弾のセーフティーロックを解除した。
・・・違う。
今じゃない。
それを考えるのは、今じゃない。
敵陣が見えて、鋭琉は銃を握り直す。
汗で滑り落ちそうだ。
「(探せ──)」
精霊と動きがリンクしている人間を。
召喚に必要な道具はないのだろうか。
手がかりは、あるはずだ。
爆発音も遠く聞こえるほどの鼓動にそう言い聞かせて、周囲を見渡す。
霧のようなものが、視界を塞いだ──。
コメント
2件
おもろい!続きも頑張れ!