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とても綺麗な夢を見ていた気がする
深く鮮明には思い出せないけれど、とても美しく何処か懐かしくて、桜が吹く道に立つ彼には見覚えがあった
桜の木下に立つ彼は微笑んで此方を見て云う
『君も何時かちゃんと幸せになってね、』
そう言われて目覚めると涙で枕が濡れていた
懐かしい夢。もう二度と訪れることの無い夢。
見る度に泣いてしまうけれどもう一度見たいと願ってしまう
「手前にもう一度会いたい…太宰…」
❊❊
数年前
「ちょっと!中也〜!聞いてるの!?」
顔に包帯を巻いた青年が此方を覗き込んでいた
「わりぃ…聞いてなかった」
「全くもう…」
不貞腐れた彼は歩いて行く
汐の香りが鼻をつき波の静かな音が聞こえる
砂浜を歩いて行く太宰は日光に照らされ輝いていた
(ぁ……)
太宰の腕を見ると気付いた
腕に包帯が増えている。太宰は日常的に自殺未遂や自傷行為を繰り返す人間だ。傷や包帯の一つや二つ増えても不思議では無い。
「〜〜♬〜〜,〜〜♫〜,_〜♪」
鼻歌を口ずさむ太宰は不意に此方を見て口を開く
「あ、そうだ、ねぇ中也。もしも僕が死んだらどうする、?」
「あ”?」
「ちょっとは話を聞き給えよ…僕はねあと数ヶ月で死ぬ事が赦されるんだぁ……ふふ、嬉しいでしょ?」
感情の篭っていない瞳で此方を見つめる
「とうとう頭可笑しくなったか…?でもそうだな…手前が死ぬくらいなら俺が殺すかな」
「酷いね中也!?もう知らない〜!」
此奴の自殺趣味は嘘ではない。
此奴は毎日毎日自殺未遂を繰り返す
まるで自分は今死んでも良いのか、死ぬ事が赦されるのか確かめるように川に入り首を吊る
まだ赦さないで、ずっと赦さないで、ーーと
俺は太宰がこの世界に赦され無い術を知らない
だからこそ俺は太宰が何時かこの世界に赦されてしまう事が恐い
✻✻
数ヶ月後。
太宰が消息を絶ったと首領から聞かされた
自分でも驚くほど冷静だった
何となくそんな気はしていた
けれど命令で一先ず太宰のマンションへ向かった
番号を入力して扉を開ける
玄関には靴が一足。部屋の明かりは付いていなくてカーテンは閉め切っていた
部屋を回っていると机に色々な薬が置いてあった
ーー睡眠薬
でも睡眠薬は空いていないから此れを使って死んだ訳では無いだろう
廊下の奥の部屋だけが、不自然なほど静かな闇に沈んでいた。
いつもの太宰なら、巫山戯て声をかけてくる時間だ。なのに、どこにもその気配はなかった。
嫌な胸騒ぎが胸の中に広がる。
微かな足音で太宰の部屋の扉の前に立ち止まり、鍵はかかっていなかった
重たく開く扉の先、中也の視線はすぐに、部屋の異様な空気を察知する。
天井には、ゆるく垂れたロープ。窓からの薄光に照らされ、静止した影が壁に滲んでいた。
「太宰……?」
その名を呼んでも、返事はない。
足が勝手に部屋の中心に進んでゆく
太宰の身体は、まるで睡眠の最中に浮かんでいるかのようだった。その顔にあの皮肉な笑みは無い
一瞬、時間が凍りつく
――現実であってほしくない光景。
膝の力が抜けそうになるのを必死でこらえ、無言でその場に立ち尽くす。
心に広がるのは、深い虚無と、どうしようもない喪失感だけだった。
「……お前、本気でこんな幕引きするなんてな」
声はひどく掠れていた。
ただ、窓の外の風が少しカーテンを揺らす音だけが、二人を隔て続けている。
祈る様に組まれた手はしっかりと握られていて
その顔には安堵と嬉しさがあった
きっと、太宰はこの世界に死を許されたのだろう。それが此奴の幸せなら俺は否定しないと決めていた。
足元には手紙
ーー遺書
墓焼けた目を擦って手紙を開けた
拝啓 中原中也様
最初こんな感じで書いたけど中也相手に仰々しいし僕なりの感じで書こうと思う!
きっと、僕は自殺が終わって今では幸せだと思う。もう思い残す事も無いしいつ死んでも良かったのだけれどね、君に一つ伝えておこうと思う
君は本質的には人間じゃ無いしマフィア幹部だし小さいしで沢山苦労があると思うんだ
だからね
君も何時かちゃんと幸せになってね
僕は君との時間を過ごせて幸せだったよ
それだけ!じゃあね中也。
敬具 太宰治
随分と自分勝手な内容だった。
薄い封筒にざらりとした便箋
差出人の癖のある字、きっと最初で最後になるんだろう手紙。
中也は手紙を開きながら、胸の奥がひりつくのを感じていた
「拝啓 中原中也様」
……は? くそ真面目ぶってやがる。
読み進めるごとに、太宰らしい斜に構えた言葉や、からかうような調子が滲む。
「君は本質的には人間じゃ無いしマフィア幹部だし小さいしで沢山苦労があると思うんだ」
……この野郎、最後の最後で俺のことチビ呼ばわりまでしやがって。
けれど、最後まで読んだ中也の肩が、少しだけ震えた。
「君も何時かちゃんと幸せになってね」
「僕は君との時間を過ごせて幸せだったよ」
窓の外では、秋風が帽子を揺らす。
――本当に、勝手な奴だよ、お前は。
中也はふっとため息をついた。
つい何か叫びたくなる気持ちを、帽子を深くかぶり直してごまかす。
「何が“幸せになってね”だ、バカ太宰……そんなの、お前がいなくちゃ――」
声にならなかった言葉が喉に詰まる。
指先が震えて手紙が揺れる。目の奥が熱い。息を吸い込んでも涙が込み上げてきた
「そんなの……そんなの、お前がいなくちゃ意味ねぇだろ……!」
涙が止まらない。拳で目を擦っても、あとからあとから溢れてきた。
手紙を胸に押し当てて嗚咽した。
「……ありがとな、太宰……」
ぽたぽたと手紙に涙の跡が残って文字滲む
涙を拭うことすらできなくてただ、胸の奥が張り裂けそうに痛かった
✻✻
切り悪いけど一旦切ります🙇🏻♀️՞
リクエストとかしてほしい展開あったらお願いします!
ではまた〜