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ド屑


太中注意

太宰屑

銀次さんの作品の続き。銀次さんの作品を見ましょう!!!


太宰side

……  、  中也が出ていってから数分。部屋に残されたのは私、太宰治と道端でナンパした女性だけ。顔から血の気が引いていく。女性は状況が掴めていないような、はてなを浮かべたような顔をした後、近くにあった自分の服と鞄を見つければ、直ぐに着替え出ていこうとしていた。

がちゃん。

扉が閉まる音がする。女性が出ていった音だろう。嗚呼、これでなにもかもが終わりなのか。まぁわかっていたことだろう。中也と私は犬猿の仲。こんなふうに恋仲になることが根本から可笑しい。ずっと前からわかっていたことだろう。



でも。



嗚呼。



私は、





中也のあんなふうな顔が見たかった。

単なる好奇心などではない。私は、恋人のああいう顔に興奮するのだ。目を見開き、裏切られたかのような顔。心臓の中から悲しみ、憐れみ、怒り。そんな感情が表に全て出たような表情。いつもの中也にそんな感情が全て出た表情など出来ない。

私が中也を嫌って?浮気などするわけないだろう。

もし浮気をするなら、もっと入念に、バレないようにするさ。

青ざめたような表情をしたのも全て演技。

「はぁ……  、  かわぃ、」

こんな異常、と言ってもいいような性癖を持っている私を愛してしまった中也にも責任はあるだろう。

あぁ、今、中也は泣いているだろうか。可哀想な中也。私が目の前に現れ、抱きしめたらどんな反応をするのだろう。また私に堕ちてくれるのだろうか。


中也side

気持ちわりぃ。胸糞悪ぃ。吐き気がする。浮気されたことも厭だが、俺が1番気に食わねぇのはあんなヤツを愛してしまったことだ。なんであんなに好きだったのか、もうわかんねぇ。屑。屑屑屑屑屑屑屑屑。俺の事を愛していたんじゃねぇのかよ。

「中也」

「ちゅーうや!」

「中也好きだよ」

「中也……、」

彼奴の記憶で俺の頭ん中は溢れてんのに。やっぱり、こんな筋肉質な男より女の方が……、

何考えてんだ俺。もう嫌いなんだろ。こんなんじゃいつまで経っても引き摺った儘だ。

心臓がいてぇ。口から心臓が出てきそうだ。もう嫌いなはずなのに、なんでこんな痛くなる?

目の前が歪む。まるで水を目に注がれたように。

雨でも降ってんのか?って思ったが、空を見上げてもなんも降っちゃいねぇ。そこにあるのは雲ひとつない空と、星。心が苦しいのか、星が光って見えねぇ。

下を向いてわかった。目から水が溢れた。これは涙だ。すこししょっぱい。街中で、泣いてる男ほどダサいもんはねぇ。というか、泣く理由がない。別にもう太宰のことなんか嫌いなんだ。クソ鯖だろ?もう俺が想う必要なんてねぇ。うぜぇ。ここまで吹っ切れてんのに、脳内に残るあいつの生命力がうぜぇ。今すぐ太宰の記憶が残っている脳みそを捻り潰してゴミ箱に捨ててぇぐらいだわ。

「きっしょ、がち。」

そう呟いたあと、体の後ろ、背中に重さがかかった。懐かしい匂いと、見覚えのある外套。

直ぐにわかった。でも今、1番会いたくねぇやつ。しかもさっきまで泣いていたから、今此奴の方に顔を向ければ目の周りが腫れていて、笑われるだろう。ほんと、なんでこんな俺が考えなきゃ行けねぇんだよ。もう、この匂いを嗅がせなくてもいいだろ。でも、この状況に少し嬉しく思っている自分がいる。俺を追いかけてくれたんだ、って。追いかけられても、なんも、嬉しくねぇはずなのに。

「……、、」

脳内では此奴を論破し、別れを切り出す所まで想像できているのに、口から言葉が出ない。きゅっ、と首を絞められるように喉が締まる。声を出すな、とでも言われているように。

「中也。顔を見せてよ。キミのこと、嫌いであんなことした訳じゃないんだよ?」

もう二度と聞きたくない声を此奴が発する。今すぐ口を縫いたい気分だ。

顔を見せろ?なんで手前の要望を聞かなきゃ行けないんだ。

嫌いじゃない?俺をキープしようとして言っているようなもんだろ。ほんとは俺じゃなくて女がいいくせに。

気持ちわりぃ考えが飛び交う。いや、これが浮気されたやつの正当な考えか。

「黙れ屑。俺じゃなくてあの女と幸せになれよ。気持ち悪ぃ顔を見せるな。失せろ」

背中を向けたまま答えた。そして声は震えていた。

やはり、浮気なんてされたら結構傷つくらしい。

ぐるん、と視界が回転する。目の前には屑の顔。

二度とみたくねぇ屑の顔。

吐き気がしてきた。

「中也、ぁ、泣いてる?辛い?」

意味わかんねぇ質問をしてくる。でも、1番不思議なのは此奴が赤面をして、興奮しているように見えることだ。

なんとも気色悪ぃ状況。今すぐ逃げ出したい気分だ。

泣いてる?辛い?という質問にはデリカシーなんて言う文字は存在しないようだ。否、屑にはデリカシーなんてねぇか。

浮気されたら泣きたくなくても泣いてしまうし、辛い気持ちなんて溢れ出る。

手前の無駄に発達した脳みそなら聞かなくても考えたらわかんだろ。

「屑太宰……、も、だまれ。俺の怒りが増すだけだ。気持ちわりぃ、もう手前と関わんねぇし、このまま恋仲、とい う関係を続けるつもりもねぇ。 」

先程より確りと芯の通った声で言えただろう。もう、別れたいという気持ちが強いんだ、ということがこの声を聞いたら誰しもがわかるだろう。

「……、たかが1回だけの浮気だろう?何故そこまで怒っているの君は」

たかが1回の浮気?俺はそれでどれだけ傷ついたと思ってんだ。

矢張りデリカシーのねぇやつと話しても無駄だ。怒りが湧いてくるだけ。ここで許すのも気に食わねぇ。

「うぜぇんだよ。たかが1回の浮気?俺がその浮気でどれだけ傷ついたと思ってんだよ手前は」

怒りが湧いてくる。

「そんな簡単なことわかんねぇなら俺と関わるな。」

呆れた。昔から屑だと思っていたが、ここまでとは。もう、元の感情になんて戻れないだろう。素直に愛すことなんてできないだろう。

「っ、♡」

ちら、と太宰の顔を見た。頬と口を覆うように手を添えて、息を荒くしていた。思考が停止した。気持ち悪い。どこをどう見て興奮する材料があったのだろうか。もう好き、という感情はゼロに等しいだろう。気持ち悪い、別れたい。その2つの感情しか俺には残されていない。

気持ち悪すぎて、吐き気がして、その場を離れることにした。逃げ出した。夜道を走り、あの気持ち悪い人物から逃げるように。

これでもう会うことなどないだろう。そう。彼奴はただの気持ち悪い人間。幻。こういうヤツとは話し合うのではなく、逃げるのが得策。あぁ、、終わったのだ。これで。全て。


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