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はじめまして。日本史BL検定対策講座をご聴講くださってありがとうございます。
日本史に潜むBLの可能性を探求する「日本史BL検定」──難易度の高さで知られるこの検定の合格を目指して、みなさん一緒に勉強していきましょう。
歴史を動かすのは、ときに人同士の関係──とりわけ男性同士の繋がりがきっかけであったりします。
正史では深掘りされることのないこの関係性から、歴史に対する新たな着眼点を見つけ出そうという試みは、非常にファンタジックなものといえるでしょう。
ただの妄想ではなく史実、ときには伝承をもとに、体系立てて学んでいきましょう。その先にはきっと新しい発想、新しい関係性、そして新しい歴史が見えるはずです。
先入観を捨てて歴史を俯瞰し、想像の翼をはばたかせましょう。
……前置きが長くなりましたね。
早速、講義を始めます。
さて、今回のカップリングは源義経と武蔵坊弁慶です。
みなさん、予習はしてきましたか。
ああ、そうですね。義経と弁慶と述べましたが、この講座においては弁慶×義経と表現してもよいでしょう。
みなさんご存知のように、BL界において「×」は重要な意味合いをもちます。
「×」の前に記された名、それは「攻」さんを指し、後ろに書かれた人は「受」さんを意味するのです。
ザックリと説明すれば「攻」さんとは行為の際に挿入する側を、「受」さんはされる側をいいます。
行為のみならず、精神的な関係性そのものを含めての用語ということを覚えておきましょう。
「×」前後の名前の順番が逆になるだけ、つまり同じカップリングなのに攻・受が変わるだけで拒絶反応を示す人もいますので、用語の使用の際には注意が必要です。
話がそれましたね。
弁慶×義経──この二人を知らないという人はいないでしょう。
ドラマや映画、小説や漫画、ゲームなどでもおなじみの、日本史の王道カップリングといっても良いかもしれません。
年末恒例の『腐女子が選ぶ!最強の日本史カップリングランキング』でも常に上位にランキングされている組み合わせです。
弁慶×義経、このカップリングについてのキーワードは「主従」です。
ここでは、難関である日本史BL検定合格のために必ず押さえておくべきポイントとして、関係性とキーワードに焦点を絞って解説していきます。
二人の出会いのエピソードも大変印象深いですね。
なぜか刀集めに熱中し、人様の刀を奪って回っていた僧兵が弁慶です。
まだ幼さの残る美少年義経に「刀をよこせ」と襲いかかるも、あっさり躱されたとか。
この出会いから最後のシーンまで物語性があり、このことから弁慶は架空の人物という説もあるくらいです。
義経の容姿についても諸説ありますし、エピソードのひとつひとつをとっても史実かといえば疑問が残ると言わざるをえません。
しかし、この講座では史実か否かは問題にしません。
対平家戦を共に戦った二人ですが、ここでキーワードの「主従」を思い出してください。
ひとつの疑問が生まれるはずです。
弁慶×義経……なぜ逆ではないのだろう、と。
主君義経のほうが、当然ながら立場は上です。
従者である弁慶を好きにできるのではないでしょうか。
しかし冒頭で述べた創作物──とりわけ子ども向け学習漫画において、線が細く色白の若者として表現されることの多い義経に対して、弁慶はいかつい体格で描かれています。
そうです。両者のビジュアルイメージは固定されているといっても過言ではないのです。
見た目による圧倒的な決めつけ──この二人が並ぶと義経×弁慶ではなく、弁慶×義経というカップリングがおのずと成立してしまうのです。
それは何故か。
人々はこのカップリングを通じて求めているのです。
「主従逆転」という禁断のキーワードを。
いつもは従者に命令し、時に死地にまで追いやる主君が、夜は従者の腕のなかであられもない姿で攻められるのです。
そこには「背徳感」というオマケもつきます。
さらに奥州行きでは「背徳感」に加えて「死」という要素も見え隠れします。
BL学界においては、シチュエーションを重視しますので、この舞台装置は百点満点と言わざるをえません。
いやがうえにも主従の恋のつぼみが膨らんでいきます。
ところでこの時代、裏切りも日常茶飯事です。
長い逃避行のあいだ、弁慶は義経の身柄を確保して敵方へ引き渡すことも容易だったはず。
何故そうしなかったのか。
忠義といわれていますが、彼らの結びつきはそんな言葉でくくられるものではなかったのではないか。
それが最新の日本史BL学の見解です。
破竹の勢いで平家を滅ぼした、いわば時代の寵児。
にもかかわらず、すべてを失った義経。
弁慶からすると義経を守ってやれるのは今や自分だけという状況に酔いしれることができます。
すなわち「執着」。
義経にしても、自分がどんなに落ちぶれても弁慶が離れていくことはないという圧倒的な自信があるのです。
これを、難しいことばで「共依存」と呼びます。
「執着」「共依存」BL学における重要なキーワードが2つも出てきましたね。
弁慶×義経のカップリングについては、今回でてきたキーワードを重視して勉強してください。
これはあらゆる検定の中で最難関といわれる日本史BL検定を攻略するため、人物の概要とキーワードに基づいて解説する対策講座です。
テーマに沿って掘り下げることで、おのずとそのカップリングの萌えポイントを押さえることができ、理解が深まるでしょう。
次回は、BL学的見地から読み解く新選組のお話です。
予習してきてくださいね。
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