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ムツキはモフモフ洞窟探検隊が終わると、リゥパが一足先に帰って来るまで、家でまったりと家でモフモフたちと過ごしていた。
ケットからユウの部屋がもぬけの殻だと言われて少し焦ったが、彼女の書置きで「数日戻らないかも」と残されていたので、彼は大人しく待つことにした。
その後、リゥパがかなり急いで半日くらい早く先祖の霊たちを追い返して足早に戻ってきたのを皮切りに、コイハとメイリ、サラフェとキルバギリーが戻ってくる。
「というわけで、今日、ナジュを迎えに行くんだけど、お義父さんと漢どうしの喧嘩をしてから、酒を酌み交わすことになった。あと、お義母さんが他のみんなもご一緒にということなので、良かったら来てほしい」
全員が揃ったところで、ムツキが経緯を説明していた。ユウがいないのは彼として残念だが、どうしようもないので諦めることにした。
「鬼族か……」
「魔人族ですか……」
リゥパとサラフェが唸りながら渋い顔をする。
「私は構わないですよ」
「俺もいいぞ」
「僕も大丈夫だよ!」
その一方で、キルバギリー、コイハ、メイリは旅行気分のようで、楽しそうに反応する。
「サラフェは人族だから当然抵抗はあるよな。リゥパは何かあるのか?」
「ちょっと……知り合いがいるのよね。懐かしいなあ、って思っただけ」
リゥパが少し濁して答える。ムツキは彼女に鬼族の知り合いがいるとは知らなかった。そもそも、彼女は彼の家に入るまで、樹海の外に出たことがないと聞いている。そうなると、鬼族の誰かが樹海に何かの用事で入ってきたことになる。
「そんな雰囲気で言ってないことくらい分かるぞ。あまり乗り気じゃないならやめとくか?」
「嫌よ! せっかく、急いでムッちゃんに会いに戻ったのに、お留守番なんて! まあ、いいわ。会わなきゃいいだけだし」
「そうか。サラフェはどうする?」
ムツキはリゥパの意思を尊重して、首を縦に振って頷いた。
「……ムツキさんは一緒に行ってほしいのですか?」
「え、まあ、できれば、だけど、無理は言いたくないからな」
ムツキはどう言えば正解なのかを悩みつつ、変に取り繕っても仕方ないと考えなおして、サラフェにそう返答した。彼女はしばらく迷った上で首を縦に振る。
「いいですわ。キルバギリーも行きますから」
「え、いいのか?」
ムツキは断られるのかと思っていたので、思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。キルバギリーが少し笑いながら、会話に入ってくる。
「ふふふ、マスター。サラフェはマスターといられず、少し寂しかったようです」
キルバギリーの言葉に、サラフェは彼女を睨み付ける。その後、サラフェはムツキの方を見て、両手を胸の前から軽く横に開いた。
「そんなことはありません! まったく……」
「そうか。俺はみんながいなくて寂しかったけどな……」
ムツキが珍しくシュンとしながら呟くので、そのギャップに女の子たちは色めき立った。
「私もムッちゃんに会えなくて寂しかった!」
「私もマスターに会えなくて寂しかったです!」
「僕もコイハもそうだよ!」
「え、あ、そうだな……そうだぞ……」
キルバギリーがサラフェを見つめる。素直に言うべきだと伝えていた。しかし、サラフェは首を横に振る。
「うっ……その手には乗りませんからね!」
「でも、一緒に行ってくれるんだな。ありがとう。じゃあ、一泊の支度をしたら行こう」
ムツキのその言葉を聞いて、一度自分の部屋に戻った後、身支度をして再度集まった。
「よし、みんな集まったな。今回は猫が10匹いるし」
「にゃー!」
「お世話係に10匹は多くない?」
リゥパが目の前にいる猫たちを見てボソッと呟く。
「リゥパ、今回はニャジュミネさんのパパさんと闘うって聞いたニャ。つまり、応援団が必要ニャ! ネコさんチームの仕上がりが良いニャ! ダンスもパフォーマンスも最高ニャ! ご主人、お土産をよろしくニャ!」
ケットがリゥパに力説し始めて、リゥパは無言で首を縦に振った。
「わかった! 行ってくる。【テレポーテーション】」
「到着! 【コール】。ナジュか? 今着いたぞ」
ムツキは【テレポーテーション】で瞬時に鬼の村の入り口付近に着く。ムツキ以外の全員が周りを見渡して、のどかな田園風景を眺めている。やがて、【コール】に反応したナジュミネが赤い着物姿で駆けてきた。
「おーい、みんな! 旦那様! 旦那様っ!」
ナジュミネが勢いそのままにムツキの胸へとぶつかり、彼はしっかりと受け止めた。彼女の勢いが良すぎたため、危うく攻撃判定になって逸れていきそうだった。
「ナジュ、元気だったか?」
「寂しかった」
しばらく2人が見つめ合っていると、ナジュミネの後ろから大きな影が現れた。
「婿殿、さっそく拳を交わそう」
ナジュ父である。やはり、誰にも気配を悟られずに彼らの前に現れていた。思わず全員がギョッとする。
「お、お義父さん。早速ですか?」
「この日を待ち侘びていた。思う存分、力を試したい」
ナジュ父は、いつもの作務衣ではなく道着のようなものを着て、気合が入っていた。
「わ、分かりました。キルバギリー、審判頼んでもいいか?」
「承知しました」
キルバギリーが動くと、ナジュ父の目にリゥパが映る。
「む?」
「どうしました?」
「もしや、そこのエルフ、リゥパか?」
「……あはは……久しぶりね、カイ」
リゥパは一瞬どこかに隠れようとしたが、間に合わないと悟ってナジュ父に近寄った。