コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
拝啓
日差しが暖かい季節となりました。貴方は僕のこと、覚えていますか。
最近僕は、窓から見える海を、ひたすら眺めて貴方との日々を思い出します。
家を出て10分ぐらいしたところに、海岸がありましたよね。貴方はまだ、あの家に住んでいるのでしょうか。
あの家で過ごした日々は、僕にとって人生で1番の宝物です。
海岸で一緒に写真を撮った日
家で一緒に映画を見た日
シーグラスを拾った日
2階から見える景色を、絵に描いた日
どれも素敵で、忘れられない思い出です。特に、僕に毎日見せてくれたあなたのその優しい笑顔は、決して忘れることはありません。
大事なことを忘れていました。実は、僕がこの手紙を書いたのは、貴方にお願いしたいことがあるからなんです。
どうか、僕のことを忘れてください。
僕には、心がありませんでした。
何にも楽しさや、嬉しさを感じられませんでした。これは、貴方との幸せな時間に傷をつけてしまう事実です。
それでも、貴方がとても優しい人だということは知っています。貴方はきっと、忘れてなんかくれないですよね。
僕は、貴方との日々で心が持てました。
今では、貴方に会えたら泣き出してしまうほど、たくさんの感情が分かります。あなたに向けたこの感情は、友情というものでしょうか。それとも、愛情というものなのでしょうか。
あの日見た海の色を。
一緒に撮った写真を。
シーグラスを。
あの景色を。
どうか、忘れてください。
僕と一緒に過ごした日々を、あの海岸で過ぎた時間を。
貴方が思い出して、辛くならないために。
お願いです。
僕は明日、死にます。
貴方のいない日々に耐えられませんでした。
貴方との日々に、僕みたいな人間が隣にいた事。勝手にあの家から出て行った事。貴方を独りにした事。全て、許して欲しいとは言えません。
最期に、これだけは伝えさせてください。
僕は、幸せでした。
さようなら。
敬具