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本のタイトルを覗き込むと、どちらも洋書で、一冊は薄めなカタログ風なもので、もう一冊はだいぶ古いもののようだった。
「何の本なんですか?」
尋ねると、「こちらは、いろいろなパッケージデザインを扱ったものだ」と、それほど厚みはない方の本を開いて見せてくれた。
「特徴的な飲料用の瓶や、化粧品の容器が写真で紹介されていて、見ていると興味深い。ほら、君と関わりのある香水の瓶もあるだろう?」
指差されたページに目を落とすと、様々な形をした香水瓶がいくつも写真で載せられていた。
「確かに、興味はそそられますけど、でもこれだと貴仁さん自身には、あんまり休息になっていないようにも……」
そう懸念をする──KOOGAは、電化製品等のデザインにこだわって台頭をしてきたメーカーで、他に類を見ないスタイリッシュさから、部屋全体をKOOGAの製品でまとめる熱狂的なファンもいるくらいだった。
「そうだな……時にはアイデアに繋がるようなこともあるかもしれないが、」
彼がやや苦笑を浮かべて、本を閉じると、
「ただクーガの商品は、元々は商業デザイナーだった母が、『こんな家電があったらいい』とスケッチで書き溜めていたものを、父が製品化したのが初めなので、メーカーコンセプトはおおむね母のアイデアを引き継いでいるからな」
そんな話を語ってくれて、なんだか母の遺志を形にとKATZEを起ち上げた私の父と似ていてと、しみじみと痛感させられるようだった。