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植まどか
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#能力者
紅優
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ダンジョンの中は通路で入り組んでいて、迷路のようだった。しかし、罠やモンスターが現れる事はなく佐久間と姫花は順調に進んでいった。
「こういうのわくわくしませんか?」
「……気を抜くな。死んだら元も子もない」
「でも何もないじゃないですか。こんなダンジョン初めて見ました」
「他のダンジョンに潜った事があるのか?」
「はい。ダンジョンには様々なアイテムがあって、珍しい鉱物やモンスターから採れる素材なんかを集めたりします。魔法が使えればダンジョン探索は簡単ですよ」
「魔法か……興味ないな」
佐久間は右手を広げ見つめ、すぐに前を向いた。 そして先を進むと、洞窟のような広い空間に出る。
そこには神殿のような建物があった。遥か昔に建てられたものだろうか。それほど古く感じられた。そしてあらゆる場所に歪な形の鏡があり、自分の姿を映し出している。
「この空間は何でしょう?」
「地下にこんなものが……」
佐久間が一歩前に出ると、佐久間が来た通路に壁が現れ閉じ込められてしまう。
突然、佐久間は頭痛がして思わず手で頭を押さえた。
立ってられずその場で膝を床ついてしまう。その姿が鏡に映り、自分が今どんな姿で苦痛にもがき苦しんでいるのかが分かる。
「サクマさん!?どうしましたか?」
「頭が、痛い……!」
ズキズキと頭の中をかき混ぜられるような痛みが続き、あの時の声が聞こえる。
──本当はどうしたい?
(何が……!)
──このまま進むのか?
(どこに……行くんだ?)
──何もできないくせに、戻りたくないのに
(…………っ)
いつの間にか鏡に映り込んだ自分の姿は元の世界にいた時の、生きる意味を全てを失ったかのような姿に戻っていた。
・ ・ ・
「毎日学校に行ってて偉いわね。あんな所に行っても意味ないのに」
「……」
学生鞄を持ち薄暗い家を出て朝の光を浴び目が眩しくなる。父さんは俺達に多額の借金を残したまま姿を消した。それから母さんはろくに仕事もせず家にこもりきりになった。
母さんの世話は俺一人でやっている。働かない母のかわりにバイトを掛け持ちし、家事をこなす。
そのせいで毎朝体が鉛のように重い。
毎朝教室に入るとすぐに佐久間は席に着き眠る。友達なんてどうでもいい。自分がどう思われようが関係ない。
だが、あいつは違った。
「佐久間弁当は?」
「……つくってない」
「ならこれ」
そうして、かろうじて三角に見えそうなおにぎりを渡される。
同じ小学校だった直樹とは高校で再会することになった。
「ありがとう」
直樹は幼いころに事故に遭い両親を亡くしている。直樹の祖母と祖父は遠い場所に住んでいるため、元々施設で暮らしていて今は家で一人で暮らしている。
佐久間は直樹と自分が似ていると思うようになり、それから二人は互いに助け合うようになった。
でも、今の生活は苦しい。
母さんの世話なんてやらず、勉強して良い所に就職して一人で暮らしたい。だけど、それでも母さんの事が心配で就職する道を諦めた。母さんを一人にできない。だけど、逃げ出したい気持ちがどんどん溢れてくる。
『それでも元の世界に帰りたいのか?』
目の前には鏡に映った元の世界の自分が語りかけていた。その目は死にかけているようで薄ろだった。
『帰りたくないだろ、自分の気持ちに素直になったらどうだ?』
「……俺は」
今回修学旅行に来たのは、母から逃げたかった意思が無意識の内に表に出てしまったからかもしれない。
その時の佐久間の心と体はすでに限界が来ていた。修学旅行が終わったらこのまま帰らずに残るつもりだったのかもしれない。たとえそう思ってなくてとも、体が勝手にそうしてたかもしれない。
──逃げたい。何もかも捨てて、一人で……
元の世界がああなって母さんはどうしてるんだろう。死んでるのかな。そしたらもう……。
「……っ!?……なんでっ!」
記憶が蘇り、 二人だけの空間に直樹の声が聞こえた気がした。
「全部、佐久間が背負わなくても良いんだよ。限界なら俺に相談して、話ならいくらでも聞いてやる。佐久間はどうしたいんだ?」
「……逃げたい……だけど、楽して生きようとは思わない。もう一度……誰かに縛られた人生じゃなくて、誰かと一緒の人生を!!」
あいつは自分とは違って一人なのに、どうしてそこまでできるんだ?辛くないのか?
それだけあいつの心は強いのか。
『それがお前の答えか……母さんはどうするんだ?』
「母さんとはもう関わらない。あんなやつ今頃……だから俺は、自分のために生きる」
『ふっ……お前らしいな』
そうして目の前の自分が消えていく。姫花が呼ぶ声で佐久間は目を覚ました。
「サクマさん!!」
「……なんだよ」
「なにって……急に倒れて呼んでも目を覚まさないから心配したんですよ!?」
「そんなに心配するな」
佐久間は鏡を見る。そこには今の自分が映っている。覚悟を決め、雰囲気が変わっているのが自分でも分かる。
「……なにかありました?」
「いや、なにも」
すると鋭く太い声が聞こえる。
「試練を越えし者よ」
神殿の上空を見ると、先の見えない暗闇から白いドラゴンが現れた。そのドラゴンは神殿の一番高い塔の上に大きな翼を広げて舞い降りた。
圧倒的存在感が威圧感を生み、胸の鼓動が速くなる。佐久間は息を呑む。
「ドラゴン!?御神木の地下にこのような存在がいたなんて……!」
「その資格を称え、汝の願いを叶えよう」
「……願い?」
「ただし叶えられるのは1つだけだ、慎重に考えて言うがいい」
(俺の願い……)
今叶えるべき願いは、叶えたい夢じゃない。今、この現状を解決する事ができる願いだ。
「俺の願いは……!」
その場が静寂に包まれた。
「俺を……元の世界に帰してくれ!」