私の名前は、静樹 朱理。犯罪者の娘である。でも、昔は犯罪者の娘ではなかった。
私の家は三人家族。父と母は毎日イチャイチャして、私を愛してくれた、幸せな三人家族だった。
ある日、私達の家に叔母さんがやってきた。その時は、私と母しかいなかった。そして、二人は何かを話し始めた。まだ幼い私だが、二人の会話を理解できた。
その話の内容が──
私はお母さんの娘ではなく、叔母さんの娘で、叔母さんの娘、白輝 璃奈は私のお母さん…いや、元お母さんの娘だった。
私の名前は静樹朱里ではなく、白輝朱里で、白輝璃奈は静樹璃奈になる。
私達が入れ替わったのは、叔母さんの夫によってだ。その人は、私の元お母さんに恋をしていた人だ。でも、その人は私の元お母さんを手に入れることはできなかった。簡単に言うと、私の元お母さんは、その人の*白月光(しろつきこう)*だった。
*白月光とは、心の中で望んでいるが、実際には近づけない、または得ることができない人のことを示します。
母はその真実を聞いて、驚きを隠せなかった。何度同じ質問をしても、叔母さんはあっさりと同じ答えを返した。
母は叔母さんの確認を得て、足が抜けて椅子に倒れ、突然泣き出した。叔母さんはそんな母を、何の感情も無い表情で見ていた。
私は、二人の会話を聞きながら、ソファーに座り、考え込んだ。
叔母さん…いや、今はお母さんと呼んだ方がいいだろうか…白輝 愛美さん。
私はこれから、静樹 理々花さんをお母さんと呼ぶべきなのか、それとも叔母さんと呼ぶべきなのか。
そして、ここに来て、私の母と名乗る白輝愛美さんをお母さんと呼ぶべきなのか…。
私は別に、静樹理々花──今まで育ててくれた人が本当の親じゃないことを悲しむよりも、これからどうしていくのかを考えていた。本当に最低な娘だと思うけれど、私は予測していた。私はこの夫婦の娘ではないことに…。
それに気づいたのは、私が約七歳の時だった。
七歳の私は、この年の子供たちよりも頭が早く動いていた。私は七歳とは思えないほど、天才的だった。だから、自分が両親の娘ではないことにすぐ気づいた。
確かに私は、母と似ている…だって、叔母さんとお母さんは双子だから、私が母に似ていようが似てなかろうが、別に気づかない。
が、私はお父さんと違い、少し性格が落ち着いている。それだけでは気づかなかった…。でも、母のアルバムを開くまでは──。
母の妹、叔母さんの夫が私の顔と少し似ていた…。最初に考えたのは、お母さんが浮気をしたことだった。でも、お母さんはそんなことをする人間ではなかった。だから、その考えをすぐに捨てた。次に出てきたのが、私ともう一人の女の子と入れ替えられているということだった。その考えしか頭に浮かばなかった。最初はもちろん悲しかった。でも、だんだん慣れていった。その子に会うまでは──。
その子は、静かに桜の木の下で本を読んでいた私に話しかけてきた。髪が長くて、二つ結びをしている可愛らしい女の子。少し茶色がかった寝癖のある髪型。
「ぶあつい本だね。どんな内容してるの?」
甘ったるい声で、少し癖のある話し方で聞いてきた。その時の私は警戒していた。でも、一番最初に思ったのは──
─この子、お母さんの子かな?お父さんに似ているし…。
いつもは「何この子…」と見下している私が、この子を見た瞬間、父に似ていると思った。
「これは、ミステリーの本だよ」
普段、質問されても無視する私が、この子が本当の娘だと思って答えてしまった。
「ミステリーってなぁに?」
「気になる?」
私は、その子の不思議そうな顔を見て、少し心に何かが変わった。
「うん!!りなに教えて」
その子は「私」より「りな」自分の名前を使って頼んできた。私は「私」という言葉を使わずに自分の名前を使う人が苦手だった。いや、大嫌いだった。
でも、この子が「私」よりも自分の名前を使って話すのを聞くと、逆に可愛らしいと思ってしまった。
「ところで、名前はなんて言うの?」
私は説明する気はなかった。なぜなら、説明してもこの子には分からないだろうと思ったから。だから、すぐに話題を変えた。
「りなはね、しろき りなだよ!!」
「可愛らしい名前だね」
私はその「白輝」という苗字に驚いた。予想通り、叔母さんの娘…いや、静樹理々花さんの本当の娘だった。
「ほんと?璃菜もそう思うの!!パパがつけてくれたんだ!!」
私の言葉に喜ぶ白輝璃菜。そんな璃菜に、私はときめいた。
私は、目の前にいるあなたに恋をした…。
身分が入れ替わっている私とあなた。
そんなあなたに、私は恋をしてしまいました──
同性恋愛が同意されていないこの時代に、
私はあなたに…白輝璃菜、女の子であるあなたに恋をしてしまいました──。
コメント
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同性恋愛禁止な時代に産まれているのに、女の子に恋しちゃった朱里が可哀想😭
白月光の意味が書いてある!この意味最初分かんなかったんだよね笑