テラーノベル
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脱獄シリーズが終わり、いつもの動画撮影が始まった。
脱獄3は、大反響に終わった。リアム看守の死に涙を流すリスナーや、脱獄お疲れ様という声も聞こえた。
と同時に俺はどうしようもないスランプに見舞われた。
撮影、したくない。
「……、やっぱ、俺として動画に出て、いい意味ってあるのかな?」
ソファの上で寝転がりながら、脱獄シリーズを見ていた。 脱獄シリーズでは【リアム看守】として出た。
この後のシリーズで【夢枕シリーズ】という案も出ているが、それは暫くしてから検討し始めるという。
「………エゴサしよ」
自分の気持ちをかき消すように、脱獄の動画を閉じた。 もしかしたら、脱獄シリーズで俺の株が上がってるかもしれない。
だが、逆効果だった。
暫く検索していない言葉を恐る恐る検索する。
リアム看守のことについては良く語られていたが……、
俺のことは全くと言っていいほど語られていなかった。
「ッ……、」
アンチコメントも最近は少なくなってきた。が、やはり絶え間ない。
そりゃあそうだ。
大好きな3人によくわからん奴が1人入ってきて、嬉しいはずがない。
そして、そいつは元自衛隊員と婚約者という何受けなのかよく分からないキャラを持っている。
「普通だったら、嫌だよなぁ……」
そんな自分に、吐き気がする。
「ッぁ、」
やっと俺についてのコメントを見つけたと思ったが、それはアンチだった。
【なんでリアム看守を殺したんだよ】
今、一番言われたくない言葉だったかもしれない。我慢出来なくなって、近くの紙袋を引っ張り出して、
「ゔッ…、お”えっッ……」
きもちわるい。
吐いたモノも。自分の存在も。この俺を愛してくれない世界も。 全部、全部、きもちわるい。
「ッ……ゔッ……」
涙も溢れて止まらない。
吐きモノと涙が混ざった紙袋のそれに憎悪する。
「なんッ……で、ッ」
ぺいんとから電話が掛かってきたが、何となく出たくなくて、電話を無視する。
「……、俺って、サイテー」
元は俺が日常組に顔突っ込んだから、自業自得だ。それを他人のせいに、世界のせいにするなんて……
「……、馬鹿。」
自分が、
「大ッ嫌い」
そして、いつの間にか眠りに付いていた。
『は〜い、お客様ぁ。起きてますかぁ?』
「ん…、んぅ……」
誰かの声で目を覚ます。誰…、?
「ッ!?は、ッ?お前、誰!?」
見ると、紳士のようなスラッとした体型。
スーツを華麗に着こなしており、
年齢は……20歳か?かなり若いように見える。
だが、黒いフードを被っており、顔全体は見えない。
そして…、イケメンだ。
……、いや、クロノアさんに喧嘩売ってるワケじゃないよ?クロノアさんは、もうピラミッドの頂点に居るんだけど、この人もなんていうか…、こう……別の類の……
『www起きましたねwものすごく驚いてますけど、大丈夫ですか?』
「ッ……、はぁ?」
聞きたいことなんていっぱいある。
でも、ここは不思議で細かいことはどうでもよくなる。
『ここは、夢の中ですよ。』
「ゆめ……?」
確かに、周りは漆黒で、何処まで続いているのか分からない。
「……、で?貴方は?」
『あ、私ですかぁ?私は、マオと申します』
「……?マオ…?」
『貴方様は、【誰かになりたい】と強く願っているのですね』
急に。何の脈絡もなく、ストンと質問された。
でも、何度も言うが、ここは何故か頭が働かない。だから、正直素直に答えてしまった。
「……、はい。」
『やはり、夢で私と出会う者は全て誰かを妬み、誰かになりたいと願った者。』
ニコッ と不気味なほど、けれど、それでも爽やかなな雰囲気は壊さずに笑い、
『私のお役目ですね。』
「お役目……?」
『あれ?悲しいな〜この間、君の夢に少しだけ干渉してみたんだけど、覚えてません?』
「ぁ…。」
そうだ。なんか、夢でこの人、見た気がする。
『私は、その【誰か】になりたいお客様を応援する者でございます。』
「【誰か】になりたい……」
『そうです。けれど、ここでは私の力を発揮できない。というワケで、この住所の場所に足を運んでみてくださいませ。』
「京都……?嘘だろ。マオさんは俺の財布を空にするつもりですか!?」
『wwまあ、そんな強制ではありませんから。行くか行かないか、 信じるか信じないかも、お客様次第です』
最後にニッ と笑い、
『ご来店、お待ちしておりますよ』
「ん……、?」
目が覚めた。
「俺……、夢で、マオさんと話して……、」
ふと、ポケットに違和感があった
ポケットに手を突っ込んでみると、紙の感触があり、それを開くと、
「ッ!?」
、信じられない。だって、あれは夢で……、ッ
「嘘、だろ?なんで……、」
胸の鼓動が高鳴っていることに気づく。
「なんで、ここに住所の紙が……ッ?」
京都のとある住所……、マオさんが書いてくれた住所だ。
「……、誰かになりたい、か……」
近くにあったスマホが目に映る。
先ほどまで見ていたアンチコメントの内容を思い出してしまう。
「ッ…、」
でも………、
もし、俺が、ぺいんととか、しにがみさんとか、クロノアさんだったら、こんな思い、しなかったのだろうか。
「行って…、みようかな、」
スマホを手に取り、その住所を検索する。
なんか……、
もう、
「疲れ、ちゃったなw」
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