リュックに色々な物を詰める。
これから、俺は京都……、マオさんが書いてくれた場所に行ってみる。
「……、行ってきます。」
誰に言うでもなく、扉を開ける。
最後に少し名残惜しくて、振り返る。
けれど、紙や服が散乱していて、俺、こんなところに住んでたんだ、と少し引いた。
ていうか、改めて気付いたけど、俺の部屋って結構荒れてるんだね(笑)
「でも、もう、【誰か】になれるから、」
俺は部屋を出た。
俺……、天乃 絵斗、またの名を……、ぺいんとは今、とても、とても緊急事態だ。
「嘘…、トラゾーの連絡、2人ともとってないの?」
そう。日常組の1人…、トラゾーが音信不通になったのだ。
『家は!?誰かいないの!?』
先程から、電話でクロノアさんと話している。緊急事態で、クロノアさんの声がこれ以上ないほど、焦っているように聞こえる。……、いや、実際ものすごく焦っている。
「今、タクシーで家に向かってる!!」
『しにがみ君には?!』
「もう伝えた!」
焦りすぎていつもクロノアさんに使う敬語も抜けている。…、でも、今は許してほしい。
俺の焦り具合が伝わったのか、タクシーの運転手さんも速く運転してくれている。
「とりあえず、もしかしたら、クロノアさんにはトラゾー、出るかもしれないから、電話かけてみて!!」
『うん!……、無事を祈るよ』
プツッ
と電話が切れる。 先程から息が荒い。
「トラゾー……、っざけんなよッ……ッ」
そして、車が止まり、家についた。
お金を払って、飛び出すようにドアを開け、家に噛み付くように走っていく。
インターホンを何度も押す。
「トラゾー!! ……ッ、クソッ、なんで出ねぇんだよッ!!」
ダメ元でドアに手をかけると、スウッと吸い込まれるようにドアが開いた。
「ぇ、鍵、開いてる…、?」
一瞬、入るかどうか迷って、心の中でトラゾーに謝りながら家の中へ入る。
「…、お邪魔…、します」
一応、挨拶をして家に入る。が、
そこで、俺は思いがけないモノを見た。
「…、は、?」
その後、俺は後悔に包まれた人生を歩むのである。
「…、昔のことを思い出していたら、気分が悪くなっちゃった」
俺……、マオ は、【ご主人様】と話していた。
「大丈夫?…、俺も、思い出してたわ。」
辛い顔をする。【過去】というものは、本当に、私たちにとっては毒だ。
「…、トラゾーとは?うまくいってるんですか?」
【ご主人様】は優しいから、俺のことも、【お客様】……トラゾー様のことにも気を遣われせてくれる。
「うん。順調だよ」
最初は敬語を使っていたが、【ご主人様】は敬語じゃなくて、タメ口にして、とご依頼があったから、今はとてもタメ口だ。
「恐らく、遅くても明日くらいには来そうだけどね」
「マジすか…、仕事速いっすね…、」
「まあ?生前も仕事は淡々とこなしてたんで?」
「…、俺と大違いじゃん……」
【ご主人様】とは…、なんというか、友達、と呼んだほうがしっくりくる。
が、これは契約をした為、【ご主人様】の要望に応えるまで、彼とは仕事の関係だ。
「なんか、もー、嫌んなっちゃた」
【ご主人様】がそんなことを言う。
「まさか…、ダメですよ。俺と同じに、『自殺』なんて……、貴方にはまだ光がある!……その光に目を背けたのが俺だよ。」
そうだ。俺は、逃げてきたんだ。
光があったのに、見えないふりをして、……命を自分で絶った。
せめて、俺の【ご主人様】にはそんなことはして欲しくない。
「……、考えとく。」
昔のような太陽のような笑顔じゃない。
そこはキッパリと断わるところ…、なのに。
「……、お客様がお出でになられそうなので、店で待ってます。」
「うん。気をつけてね」
【お客様】……、トラゾーを元気にするのは俺の役目。きっと、トラゾーが元気になれば、
……【ご主人様】も、前向きになってくれるはず。
「待っててね。トラゾー。」
俺はフードを目深に被り、上着を羽織った。
「やぁっと着いた…、」
新幹線に揺られ、約四時間。 俺はようやく京都に着いた。
「長旅過ぎ〜…、さて、ここから、タクシー捕まえて、この住所の場所に行きますか」
相変わらずの京都だ。
どうせなら、日常組の皆で来たかったなぁ…、なんて……、
「俺が、日常組の名前なんて、出していいのかな…、?」
いや、もう余計なことは考えない。
ひたすら、進むだけだ。
少し後ろめたさを感じながら、俺は歩みだした。
……、【俺以外】のだれかになる為に。
コメント
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どういうことなんだろう...! ご主人、って何者なのかな?? そもそも、マオさんも謎が多いよね(゜゜;)クロノアさんかな??でも、クロノアさん死んでないよな...? 続きがマジで楽しみです😆⤴️