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🌳×🐱
🌳くん過去に恋人いた表現あり(フィクションです)
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🐱side
最初に言われた言葉を俺はずっと忘れられない。
hd「……似てるね」
それがもりくんとの始まりだった。
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代役だってことは最初から分かってた。
もりくんには忘れられない人がいる。
それも今もなお、ちゃんと“好き”なままの相手。
俺はただ似ていただけ。
声のトーンとか、
笑うタイミングとか、
隣に立ったときの空気とか。
hd「無理しなくていいよ」
「今日は帰る?」
優しかった。
でもそれは俺に向けられているようで、
俺じゃない誰かを見てる気がしてた。
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だから深入りしないつもりだった。
名前を呼ばれても、
距離が近くても、
夜が一緒でも。
代わりなんだから。
そう思ってれば傷つかない。
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変わり始めたのはもりくんが“その人”の話をしなくなってから。
連絡が来る頻度が増えて、
会う理由がなくなっても会うようになって。
hd「今日も来る?」
ym「……別にいいですけど」
返事はいつも曖昧。
でも断らなかった。
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ある日ふと聞いた。
ym「俺、あの人の代わりですよね」
冗談みたいに。
逃げ道を残した言い方で。
もりくんは少しだけ黙った。
hd「……最初はね」
その一言が胸の奥に沈んだ。
最初は。
じゃあ今は?
聞けなかった。
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それからもりくんは俺を離さなくなった。
メンバーと話していると自然に隣に来る。
帰ろうとすると腕を引かれる。
hd「まだいいでしょ」
口調は優しいのに拒否を想定していない声。
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俺のほうがだんだん不安になっていった。
代役のくせに期待し始めてる自分が嫌だった。
ym「……もしあの人が戻ってきたらどうするんですか」
何気なく言ったつもりだった。
もりくんの手が止まる。
hd「その人の元には戻らないよ」
即答。
あまりにも強い否定。
hd「もう必要ないから」
そう言われてなぜか安心する自分がいた。
その感情が一番怖かった。
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気づいたら俺のほうが離れられなくなっていた。
連絡が来ないと落ち着かない。
一緒にいない夜が長い。
——代役なのに。
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hd「ゆうま」
ある日、
初めて名前を呼ばれた。
今までは呼ばれても曖昧だったのに。
ym「なんですか?」
hd「……いや」
それだけ。
でも胸がうるさくなった。
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後から知った。
もりくんが昔の写真や連絡先を消していたこと。
俺が知らないところで過去を片付けていたこと。
それを聞いた瞬間背筋が冷えた。
——代役はもう終わってる。
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hd「ねえ」
夜、隣で囁かれる。
hd「もう代わりとか思わなくていいよ」
その言葉は、
優しさみたいで、
逃げ道を塞ぐ音がした。
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俺はあの人の代役のつもりで始めた。
でも今は代わりじゃなくなったことが怖い。
だってそれは選ばれたってことだから。
——逃げられないってことだから。
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今日ももりくんの腕の中で息をする。
代役のままなら終われたはずなのに。
もう戻り方が分からなくなってしまったーー