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たかしと一緒にカラオケに行ったのはもう一ヶ月ほど前の話となる。今僕は、彼女がいる。えーりである。あの後、僕は彼女に電話をかけ、告白の時に言えなかった、ありのままの思いを言葉にしてぶつけた。えーりは僕の思いを聞いた後ふっと笑い、そして僕の告白を了承した。
明日、ちょうど交際一ヶ月記念日となる。僕はどうせだから二人で甘いものでも食べてお祝いしようと思い、彼女をケーキ屋に誘った。そして今、駅の近くにあるケーキ屋、「ブルタバ」の店内に彼女と向かい合って座っている。
僕は気づいてしまった。この店内はなかなかに混沌とした状況になっていることに。なぜ混沌なのか、その理由は店内にたかしがいるからだ。さらに、たかしを「私飽きっぽいの」と言う理由で振ったたかしの元カノ、「あんか」もいる。一体どういった状況なのかはわからないが、たかしは感情の大きい素直な奴だから、今でもあんかのことが忘れられず、だからもう一回付き合わないか、と再告白でもするつもりなのかもしれない。なんにせよ、なんという偶然だろうか。同じ地域に住んでいるのだからそんなに珍しいことでもないのかもしれないが、にしてもなんというか、こんな修羅場に巻き込まれるとは。
たかしの格好は見るからに決まっていた。今はもう11月、だいぶ寒くなってくる季節だ。たかしは黒くシルエットの長いジャンパーに白いコーデュロイパンツを合わせ、靴はオールスターを履いている。俺と遊ぶ時はジャージみたいな服装のくせに、だ。
彼にとっては一世一代の賭けなのだろう。それほどまでにも彼はあんかのことが好きだったのだ。何とも一途な男である。幸い、僕にはまだ気づいてなさそうだ。えーりもまだ来ていない。僕は1回店から出て、店の前で待つこととした。
すると、目の前に猫が歩いているのを見かけた。その猫にはエリザベスカラーがつけられている。その猫が通り過ぎた後、その道の奥からとてつもない轟音が聞こえ、見ると大勢の猫が先ほどの猫を追っているようだった。その猫たちは怒っているのではなく、アイドルに目をハートマークにする主婦たちのような、そんな表情をしていた。
なんとも不思議な光景を見た。彼女はまだ来ない。するとたかしからメールが来る。
「俺、今日、あんかにもっかい告る」
感情が伝わる、男らしい文章であった。僕は速攻「がんばれ」と送った。さて、彼の告白は成功するのだろうか。