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Episode 7『君を守れるこの手で』
日帝は、自分の過去を語り出す。
静かな部屋に、雨の音が混じる夜。
窓の外では本当に雨が降っていた。
アメリカは黙って、ただ日帝の隣に座り続けていた。
口を挟まない。途中で止めない。
どんな話でも、ちゃんと受け止める覚悟だった。
「俺な、昔……“あの人”に拾われたんだ」
日帝の声はどこか遠くを見ていた。
「家も、家族もなくして……もう生きる意味もなかった頃に、あいつは現れた。
“お前には価値がある”って、何度も言ってきた」
アメリカはその“あの人”が誰なのかを聞かないまま、ただ耳を傾けた。
「……でも、気づいたんだ。
あの人は俺を“道具”としてしか見てなかった。
“猫耳”も、“見た目”も、“素直さ”も、全部操りやすいって意味で気に入られてた」
日帝は拳を握りしめた。
「だから俺、自分から逃げた。
その人の元からも、自分自身からも。
誰かに見られるのも、信じるのも、怖くて」
アメリカはそっと、日帝の手に触れた。
日帝の指がピクリと震える。
「日帝ちゃん」
その声は優しくて、あたたかくて、どこまでもまっすぐで。
「俺、そんなお前を……本当に愛おしいって思うんだ。
過去があっても、痛みがあっても、関係ない。
今のお前がここにいて、俺の隣にいること――
それが何より、嬉しい」
日帝の目から、ぽつりと涙が落ちた。
「……アメリカ」
「うん?」
「……お前だけだよ、そんなふうに言ってくれたの」
その夜、ふたりは肩を寄せ合って眠った。
深く繋がるわけでも、言葉を重ねるわけでもなく。
ただぬくもりを確かめるように、そっと眠った。
心が壊れそうだった日帝を、
アメリカはそっと、包み込んでいた。
次回:
Episode 8『ふたりきりの夜、こぼれる言葉』
翌朝、いつもの日常に戻ったかのように見えて――
アメリカと日帝の関係が、また一歩、深くなる。