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りうらは、高校に入ってからもずっと“人との距離”を保って生きていた。
理由はただ一つ。
誰かに触れると、その人の心が全部聞こえてしまうから。
軽い接触でも、手がかすめるだけでも、
相手の本心や感情が雪崩のように流れ込む。
厄介すぎる能力
だから、りうらは人混みが嫌いだった。
誰かの肩が触れそうになると息が詰まる。
体育や掃除で近づかれると、足がすくむ。
周囲には「人見知りで距離感バグってるやつ」と思われているが、
本当の理由を知るのはりうらだけ。
そんな俺の前に現れたのが、
初兎だった。
転入初日。
学年でも噂になるくらいの愛想の良さで、
初兎はあっという間にクラスに溶け込んでいた。
初兎くん、席は……りうらの隣だな
教室の空気がふっと変わる。
え、りうらの隣?
あー…大丈夫か?
そんな声が聞こえ、りうらは内心ため息をついた。
(触られなきゃ…問題ない)
初兎は明るい笑顔でりうらに手を差し出す。
「よろしくな、りうら」
(下呼び…..)
その手を見た瞬間、りうらの呼吸が浅くなる。
(握手…は無理)
咄嗟に引こうとしたそのとき。
ガタン!
前のグループの誰かがイスを蹴り倒し、初兎がバランスを崩した。
「ちょ、わっ……!」
体が傾き、初兎の手がりうらの手首を掴む。
触れた。
次の瞬間、りうらの頭に初兎の“心の声”が流れ込む。
(うわ、触っちゃった…怖がらせた?やば……)
(でも、細い手首…意外と華奢)
優しくてまっすぐな感情ばかりで、胸が熱くなる。
初兎は驚いた顔もせず、すぐ手を離した。
「……ごめん! 怖かったよね? ほんとに事故で…!」
『べつに、怖くなんか……』
「それ、嘘やな」
りうらはびくっと肩を跳ねさせる。
初兎はにこっと優しく笑うが、瞳だけは鋭かった。
「僕な、人が嘘つくと分かっちゃうんだ」
『は……?』
「だから無理しなくてええよ。今すごく怖かったやろ? 嫌じゃなかったけど、びっくりした……って感じ」
全部言い当てられ、りうらは顔を真っ赤にする。 心を読んだみたいな正確さ。
初兎は続ける。
「安心してや。もう勝手に触らんから」
そして自分の机を、そっと数センチ後ろにずらす。 それはりうらにとって、誰よりも優しい距離の取り方だった。
『…なんでそんなに気使うの』
「だって…りうちゃんのこと、もっと知りたくなったから」
その瞬間、りうらの心臓が本格的に危険を感じた。