類side
司くんが、僕に助けを求めてる。さっきだって助けてくれたのは司くん達だった。助けなきゃいけないのに…なのに、僕の体は動かないんだ。
「司…くんっ」
こんなときくらい、動いてくれよ…!そう思った瞬間だった。
あまりに突然のことで、僕も驚いた。だって、意識を失っていたはずのえむくんが僕に近づいてきていた男を工場内で拾ったであろう鉄の棒で殴って倒したから。
「類くんっ!大丈夫!?」
「僕は平気だよ、それより…… えむくん…は大丈夫なのかい?」
「あたしは平気だよっ!それより、早く寧々ちゃんと司くんを助けなきゃ!類くん、一緒にあの人達を倒してくれない?時間稼ぎだけでも十分だからっ」
えむくんに言われてハッとした。結局、僕はみんなに助けられてしまってるんだな。僕はただ、仲間が傷つけられているのをみてることしかできないのか?どちらにせよ今は考えている時間はない。
「あぁ、わかった。ではえむくんはあの男を頼めるかい?きっと司くんのところについているやつがボス的立場のやつだと思うんだ。」
僕は、倒れた男が持っていた金属バッドを握って、えむくんを見つめた。
「うんっ任せて!」
そういうとえむは鉄の棒を持って男の方へ向かっていった。
「さて…僕はこいつを倒さないとね。司くんを苦しめたこいつを……」
僕は未だに司くんにナイフを刺して楽しんでいる男を睨みつけた。集中していて、仲間が一人やられていることに気がついていないらしい。いや、仲間だなんて思っていないのかもしれない。自分が楽しむためだけに協力し、いざとなったら囮として使ったりもする。そんな最低のやつなんだ。そんなやつに司くんを、仲間を傷つけられていると思うとイラついて仕方がなかった。まぁすぐに動けなかった僕にも非はあるけどね。
そんな僕の視線に気がついたのか、男が振り向いた。
「お?そんなものをもってどうした?俺に挑んでくるとはいい度胸じゃねえか。こいつがどうなってもいいのか?」
そういって男はしゃがみ、虚ろな目をした司くんの首にナイフをかざした。
_______今すぐにでも殺したい。
でも、こいつはいつでも僕達を殺せる。やろうと思えば司くんを今殺すこともできるだろう。
「くっ……」
僕は唇を噛んだ。
やっぱり僕には何もできないのか?このままだと、司くんは……
チラッとえむくんの方をみる。あちらも先程と違って上手く行かないようで、さっきはえむくんが動けないと思っていたからこその不意打ちで倒せたが、今回は気づかれているのに加えて、仲間が捕まっている。どうしたものか…。
「どうした?もう終わりか?」
男がニヤニヤしながらナイフをチラつかせる。
悔しさと絶望感で涙が一筋流れたときだった。
バンッという銃声がしたと思ったら、男が脇腹から血を流して倒れた。えむくんの方からも誰かが倒れた音がした。
「えっ……?」
「皆様!大丈夫ですか!?」