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67 ◇チャンス到来
どうしようかと、躍起になっている時には全くチャンスがなく、何も考えていない時に限って
物事が動くという──人には時としてそんな機会が訪れたりするものだが……。
山倉美並にもそんな機会が訪れた。
◇ ◇ ◇ ◇
ここ最近押していた仕事を終え、フロアにある休憩室で自販機に小銭を入れ
コーヒーを手にした時だった。
「お疲れさまです」
「あぁ──ドモ、お先にです」
振り向くと、なんとあれほど話たかった橋本蓉子が立っていた。
「あらぁ、橋本さん。お久しぶり」
「ほんとに、毎日顔は見ていてもお話するのはお久しぶりですね」
「今日もお肌ツルンツルンで血色も良く、元気いっぱいだね。
羨ましいわぁ~」
「ふふっ、そうですか。山倉さんもお元気そうで何よりです」
「ねねっ、少しだけ雑談してもいいかしら?
押している仕事とかなければ……」
「大丈夫ですよ。上司に叱られない程度でしたら」
「ありがと、ありがと。
う~んと……」
「何か、話しづらいことなんですか?」
「そういうことではないんだけど、心の準備ができてなかったので。
どこから話せばいいかと思うと、すぐに言葉にして出て来なくて……」
「そういうの、私、なんとなくわかります。
でも……ということは、何気に前々から私に話したかったこと? だったりして」
「えーっ、すごぉ~い。
なんでわかっちゃうの? 橋本さんってすごい人なんだ」
「いえまぁ、そう言われましても……っていうか、そのお話したいことっていうのが
気になりますね。何ですか?」
「実はね、私の友人の友達に婚活パーティーを主催している人がいて、まぁその──
パーティーを盛り上げるために、誰か妙齢の女性を誘って参加してみないかって、
言われちゃってて……」
「それで、山倉さんは私に白羽の🏹矢を立ててくださったということでしょうか?」
橋本さんの理解力と推察力に助けられ、いつの間にか私は首を思い切り
振っていた。
「橋本さんにはたぶん親しくしている男性が1人や2人はいるかなと
星キラリ

2,012
ムメイ
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まなこ〜友
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思うけど……」
「流石に2人はいないけど──。
まぁその、山倉さんだからお話しますけど、時々デートしたりする相手は
います」
そんな風に口元のそばに片手を添えて私の耳元にやや近づくようにして──
彼女はこっそり感たっぷりを演出して、内緒の話でもあるかのように異性関係を
教えてくれた。
「そうなんだぁ~。そうよね、橋本さんに全く交際している異性がいないなんて
そんなことないって思ってたけど、やっぱりだよねぇ~。
じゃあ婚活パーティーなんて誘ったりしたら、その彼に怒られちゃうわね」
「あ、でも……。
結婚が決まっているわけでも、ないので……」
彼女の歯切れの悪い物言いに、何気に『婚活パーティーに行ってもいいけど』という意思表示が
含まれていることに思い至った。
「じゃあ、もしも婚約しているとか結婚を決めて付き合っているとかではないのなら──
私と一緒に婚活パーティーに参加してみない? 玉の輿が待ってるかも~」
私は彼女の言葉のニュアンスで8割方断られないと判断をしたため、
婚活パーティーに誘ってみた。
若くて美人の彼女を誘って行くという選択をした自分。
普通、賢明な女ならしないよね~。
そうなのだ。
私は二択の選択肢の中から愚かなことと思いつつも、彼女を誘った。
初めてのことで、1人で参加する勇気が持てなかったのだ。
それと、そうはいうものの──
全くこれまで恋愛経験がなかったわけでもなく、女性としてまったく自信が
ないわけじゃないということもある。
そして、心密かにこうも考えていた。
一度経験しておいて、多少どんなものなのか経験値がつけば、二度目からは
1人で参加してみようと。
そして、婚活パーティーで最悪見つけられなくても自分には心丈夫な永堀文世という
大学時代からの友人で就職までも世話をしてくれた人がいて──
その彼女が誰かを紹介してくれると言っていたことが、気弱になりそうな自分
を押し留めてくれた。
コメント
1件
うわっ、来た来た!第67話、すごくいいタイミングで動きましたね。山倉美並さんが橋本蓉子さんを婚活パーティーに誘うシーン、二人の自然なやりとりが本当に心地よかったです。「何気に『行ってもいいけど』という意思表示」って部分、橋本さんの言葉のニュアンスを掬い取る美並さんの観察力が効いてました。それに「賢明な女ならしない選択」と自覚しながらも彼女を誘う心情、すごく人間らしくて惹き込まれました。永堀さんという保険があるのも効いてますね。続き、どうなっていくんだろう…!