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K-Takasaka
153
#K-T
#スクラッチャーズ
#異世界転生
第三ラウンド終了後、アリーナの壁が開き、五人は白いロッカールームへ移動した。
ロッカーには、それぞれ新しい服が用意されていた。丈夫そうな長袖のシャツ、動きやすいパンツ、番号入りのベスト。第三ラウンドで破れた服を着続ける必要はないらしい。
メバルは自分の袖を見下ろした。
「これは、さすがに着替えたほうがいいわね」
ミステーの上着は落ち葉のようになり、アオノの服は破損箇所が多すぎて、もはや検査用の標本に近い。カキの背中には大きな裂け目があり、マサカゲの肩口も破れている。
「全員、着替えよう」
マサカゲが言った。
「俺の服はまだ使えるぞ!」
カキが胸を張る。
「カキちゃん、それは使えるんじゃなくて、布がかろうじて残ってるだけ!」
メバルは女子用の仕切りを確認し、カーテンを開けた。
「私はこっちで着替えるから、男子は反対側ね」
そして、ミステーとアオノを指差した。
「いい? ぜっっっっったい見に来ないでね!」
二人は揃って頷いた。
「了解した」
「観察しない」
「今、二人とも返事が一拍遅れたけど?」
「誤差だ」
アオノが答える。
「観察の準備をしていただけだ」
「準備もしないで!」
メバルはカーテンの中へ入り、勢いよく閉めた。
「本当に来ないでね! カーテンを開けたら、今度はボールじゃなくて拳だから!」
マサカゲがミステーとアオノの前に立つ。
「二人とも、絶対に近づくな」
「分かっている」
ミステーは神妙な顔で頷いた。
「ただ、音の観察は許されるか?」
「許されない」
「匂いは?」
「もっと許されない!」
カキは男子側のロッカーを開け、新しい服のポケットを調べていた。
「この服、内側に小さい金属板が入ってるぞ」
「触るな、カキ」
マサカゲが注意した直後だった。
女子側から、メバルの声が響いた。
「……あれ?」
三人が振り返る。
「ちょっと待って。何かいる」
カーテンの向こうから、布が擦れる音がした。
「何かって何?」
マサカゲが尋ねる。
「分からない。でも、さっきから足元でカサカサ――」
その直後。
「いやぁぁぁぁぁぁぁっ!」
メバルの悲鳴がロッカールーム全体に響き渡った。
カキが飛び上がる。
「何だ!? 敵か!?」
「虫!」
カーテンの向こうからメバルの声が聞こえた。
「虫がいる! 誰か来て! でも見に来ないで!」
「どっちだ!」
マサカゲが叫ぶ。
メバルは完全に混乱していた。
「助けて! でも絶対に見ないで! 早く! でも来ないで!」
「メバルちゃん、指示が矛盾している」
ミステーが冷静に言う。
「そんなこと言ってないで助けて!」
マサカゲはためらった。
カーテンの向こうには、着替え中のメバルがいる。だが、虫が苦手らしいメバルの悲鳴は本気だった。
「メバル、虫はどこだ?」
「足元! たぶん! 黒くて速い!」
「たぶんって何だ!」
「今、そっちに行った!」
マサカゲは意を決した。
「分かった。カーテンを開けて確認する」
「えっ、待って――」
マサカゲがカーテンを開けた。
「メバル、大丈夫か――」
その瞬間、二人の目が合った。
メバルは着替えの途中だったが、前には新しい服を抱え、腰から下はロッカーの扉で隠れている。身体が露出することはなかった。
しかし、そんなことを確認する余裕はなかった。
メバルの背後を、黒い小さな虫が走り抜ける。
マサカゲが反射的に言った。
「えっ、虫?」
その一言が、メバルの逆鱗に触れた。
「虫ぃぃぃ!?」
メバルの拳が、マサカゲの顎へ突き上がった。
「アッパー!」
マサカゲの体がきれいに浮き、背後の壁へ軽く背中を預ける。
そして、そのまま床へ崩れ落ちた。
「マサカゲ!?」
カキが駆け寄る。
ミステーとアオノも、さすがに観察を忘れて近づいた。
メバルは、服を抱えたまま固まっている。
「ち、違うの! 虫に驚いて、つい……!」
マサカゲは床に座ったまま、ゆっくり目を開けた。
「ここは……どこだ?」
「ロッカールームよ!」
メバルが答える。
「俺は何をしていた?」
「カーテンを開けて、私を確認しに来たの」
メバルは言いかけて、表情を変えた。
「……あっ」
「カーテンを……開けて……?」
マサカゲが額を押さえる。
「その後は?」
「その後、私がアッパーを――」
「そこから先の記憶がない」
「ごめん!」
メバルが深々と頭を下げる。
アオノがマサカゲの目を確認した。
「短時間の意識消失。外傷は軽微。記憶の欠落は、カーテンを開けてから打撃を受けるまでの数秒間」
「数秒だけなのか?」
カキが驚く。
「服装の状態を確認しようとした直前から、記憶が抜けている」
アオノが淡々と説明した。
「アオノちゃん、そんなところまで分析しないで!」
ミステーが考え込む。
「マサカゲは、見てはいけないものを見た罪により、記憶の一部を捧げた」
「違う! 虫に驚いて殴られただけよ!」
メバルは急いで着替えを終え、カーテンの外へ出た。
「本当にごめんね、マサカゲちゃん。まさか気絶するとは思わなかったの」
「問題ない」
「それ、Kさんの言い方よ!」
マサカゲは立ち上がろうとしたが、少しふらついた。
「ただ、カーテンを開けた理由が思い出せない」
「虫を確認するためよ」
「虫?」
「そう。足元を走ってたの」
全員が床を見る。
しかし、虫の姿はどこにもなかった。
ミステーが床の隅を見つめる。
「虫は、我々の記憶を食べて逃げた」
「怖いこと言わないで!」
カキが新しい服のポケットを探る。
「いや、俺のポケットに入ったんじゃないか?」
「カキちゃん、余計なものを入れないで!」
そのとき、ロッカールームの正面にモニターが現れた。
『着替えを確認』
「着替えの確認はいいけど、覗いてないでしょうね!?」
メバルが画面を睨む。
『第二ゲームの説明を開始する』
モニターに、広大な都市の映像が映し出された。
道路、ビル、信号機、地下鉄の入口。そして、地面には赤いマス目が浮かんでいる。
『ステージ名――歩くと爆発する世界』
「タイトルからして危険!」
メバルが叫んだ。
『ステージ内では、歩行を検知した地点が数秒後に爆発する』
「歩くだけで爆発するのか?」
意識を取り戻したばかりのマサカゲが尋ねる。
『走行、跳躍、転倒、物体の投擲など、足裏の接地を伴う移動も判定対象となる』
アオノが説明する。
「つまり、地面に触れた場所が危険になる」
『爆発は一定範囲に発生する。吹き飛ばされた場合、着地点も新たな判定対象となる』
カキが目を輝かせた。
「爆発で移動できるってことか!」
「それを思いついても実行しないで!」
『制限時間は三十分。ステージ中央の塔にある起動装置を停止すればクリア』
都市の中央に、巨大な塔が映し出される。
『ただし、参加者のうち一名でも規定範囲外へ出た場合、全員失格となる』
マサカゲが地図を確認した。
「安全地帯は表示されていない。全員で移動方法を考える必要がある」
画面に最後の警告が浮かんだ。
なお、ステージ内のすべての床が安全とは限りません。
メバルが新しい服の靴底を見た。
「歩くと爆発する世界で、床も安全じゃないって……どうやって進むのよ!」
カキは拳を握る。
「まずは、爆発しそうな鉱石を探そう!」
「探さない!」
第二ゲームの扉が開いた。
五人が見つめる先で、都市の地面に赤い光が点滅し始めた。
コメント
1件
第4話読了〜!!🚀💥 もうね、ロッカールームのやり取りが面白すぎて声出たwww 「見に来ないで」「でも来て!」の矛盾指示、メバルちゃんパニック可愛すぎるでしょ😂💕 しかもマサカゲちゃん、カーテン開けた記憶までぶっ飛んでて草 第二ゲーム「歩くと爆発する世界」やばそう…! 爆発で移動とかカキちゃんノリノリだけど絶対やめてほしいw 次回どうやってクリアするのか気になりすぎる😭🔥