「るぅとは、私が何か頼んだらちゃんとすること。あなたに拒否権なんてないから。」
小さい頃、母親にそう言われた。その時から僕は、何かを断ることが出来なくなった。
「お前、もっといい点とれないのかよ。」
これは、父親の口癖。テストで90点とっても褒めて貰えない。100点をとっても褒めて貰えないし、愛して貰えない。泣いても怒られる、何をしてても怒られる。家では、お母さんの言うことを聞くか、勉強しか許されない。学校では、『こいつ何言っても、はいって答えるぞ。』『ロボットみたい。』と言われたり、机には、『気持ち悪い』『人外』と書かれ、ノートを破かれたりといじめを受けた。
そのせいで僕が笑うことなんてなかったし、いじめが始まった時初めは悲しいと思っていたがもう、何も感じなくなっていた。
あれ、笑顔って感情ってなんだっけ。
〇
それから僕は、そこそこ頭のいい高校に入学した。入学して教室に入ると、僕に挨拶をしてくる男子生徒がいた。彼は、蒼山ころんというらしい。彼と挨拶を交わした後、すぐにHRを告げるチャイムがなった。
「HR始めるぞ。早速だが、学級委員を決めたいと思う。やりたいという生徒はいるか?」
学級委員、それはほとんどの人があまりやりたくないだろうな、と考えながら僕はぼーっとしていた。
すると、とある生徒が「クラス成績トップのやつに任せればいいんじゃね?」と言い始めた。
「黄瀬くん、学年で1位だったらしいよ。」
誰かが、小さな声でそう呟いた。そんな噂、何処から流れるのだろうか。
「じゃあ、黄瀬くんが学級委員でいいと思いまーす。」
そんな声に、「賛成。」と言う声が聞こえてくる。
「じゃあ、黄瀬任せていいか?」と聞かれ、もちろん僕は昔から断ることが出来ない性格のため頷いてしまう。昔からずっとそうだ。断ろうと思っても、お母さんや小学校の時ように暴力を振られるんじゃないかなんて考えてしまう。何度、こんな自分を嫌いだと思ったか。もう数えられないぐらい考えただろう。
先生が「もう1人学級委員やりたいやついるか?」という声が聞えたと思えば「蒼山くんがやりたいって言ってましたよ。」という声が聞こえたので、彼の方を見る。
どうやら彼はまだ寝ているようだ。彼が、HRが始まると同時に寝ているのは知っていた。なのに、学級委員になりたいなんていつ言ったのだらうかと考えてみても思い当たらない。
「それじゃあ、蒼山に任せるぞって、蒼山起きろ。」
「黄瀬、蒼山起こしてくれ。」
先生に起こせと頼まれたので、蒼山くんに小声で声をかけると彼はすぐに起きた。
「蒼山、お前黄瀬と学級委員な。」
「は?」
そんな小さな声で聞こえた。恐らく先生や、他の生徒には聞こえていないだろう。
どうやら、この反応からして彼は学級委員はやりたくないらしい。
だが、そんな彼をおいて「じゃあ、頼んだぞ。」と話を進める先生。彼は未だに混乱しているようだったので「蒼山くんが寝てるから学級委員に任命されたんですよ。」と言っておいた。
押し付けられたと真実を突きつければ、きっと彼は怒るだろうと思ったのでそう言っておいた。特に間違えたことは言っていないので大丈夫だろう。
僕にとってここから先は、どうでもいいと判断したのでこの後先生が何を話していたなんて覚えておらずその後もぼーっとしたまま過ごした。
〇
るぅとくんと特に何かあったということも無く、数ヶ月過ぎた。季節は夏。もうすぐ期末テストのテスト期間に入る時期だ。外はもちろん暑い。
だが、僕は今屋上にいる。
「ねぇ!なんで外なの?」
そんな不満をぶちまける。
「まあまあ、そんなこと言わずに外で食べるご飯、美味しいよ?」
なんて言って僕を宥めようとする、なーくん。それに賛同するように「そうやで!ころん!」と言ってくるジェルくん。彼ら、なーくんとジェルくんは生徒会長と副会長だ。
4月に先生に頼まれた教科書か、何かを間違えた時名前を知り何故か仲良くなった2人だ。最近では、僕、るぅとくん、なーくん、ジェルくん、莉犬くん、さとみくんの6人で集まってお昼を食べるのが日課になっていた。
「るぅとも外で食べる方がええやろ?」
急にるぅとくんに話題を振ったジェルくん。るぅとくんは少し驚いた顔をしたが、すぐに笑顔で「確かに、そうですね。」なんて返していた。
「お前ら、早く食わねーと時間なくなるぞ。」
「そうだよ!早く食べよー!」
さとみくんと莉犬くんの声でスマホの時計を確認すると昼休みが残り10分になっていた。
「うわっ、まじじゃん。」
「早く食べましょ。」
それから僕らは、急いでご飯を食べてすぐに解散した。
教室に戻ってからずっと気になっていた事を彼に聞いてみることにした。
「ねえ、るぅとくん僕たちと居て楽しい?」
そんなことを聞いたのは、彼は僕らといる時でも、他の人といる時でもあまり笑顔を見ないからだ。愛想笑いとかは見たことあるが彼が心の底から笑っているのは見たことがない気がする。ジェルくんがたまに、「るぅとって何でも肯定するし、常に笑顔しか見せんよな。まるでずっと笑っとるロボットみたいやわ。」と言っていた。僕もそれには、確かになと思うことがあった。
「、、、楽しいですよ。」
るぅとくんは少し間をおいてからそう返事をした。
今の僕に本当に楽しいのか何度も聞いていいとは思わなかったので「そっか!」と笑顔で返した。
その後はお互いに話すこともなく、1日を終えた。
〇
(うわ〜、、僕るぅとくんに何聞いてんだよ。)
るぅとくんに「僕たちと居て楽しい?」なんて聞いてしまった。
ただ、お昼を一緒に食べて少し会話を交わす程度の僕にそんなことを聞く権利なんてない。彼に、どう思われただろうか。不快にさせてはないだろうか、など今になって後悔してしまう。
なんで、聞きたいと思ったのかそんなこと僕には分からない。
でも、どうしても彼は心の底から楽しんでいるようには見えなかった。僕が、彼と一緒にいる以上は彼には心の底から楽しんで欲しい、そう思った。だが、僕では彼を笑顔にさせることは出来ないのではないか、そんなことをよく考えるようになってしまった。
「1回でもいいから、るぅとくんが心の底から笑ってるところ見てみたいなぁ。」
心の底からの僕の願い。彼と恋人という関係になれなくてもいいから、彼の笑顔が見たかった。
だから、僕は彼を笑顔にしようと誓った。
それからの僕の行動は早かった。彼を笑顔にしようと誓ったのは昨日の夜。
朝登校してからるぅとくんと話し、休み時間になったらまた、るぅとくんと話す。
これを数日続けていたが、るぅとくんが心の底から笑った笑顔は見ることは出来なかった。
いくら、委員が同じだからと言って委員の集まりは滅多にないため、一緒にいられるのは学校の休み時間。僕はどうしたら彼と過ごす時間が増えるのか考えていた。
「せめて、放課後とかもいれたらいいんだけどなー。」
そんなことを呟く。ん?放課後?放課後、、、。
最も今の時期にピッタリなことを思いつき思わず「あ」と言う声をもらす。今は期末テストが近く幸運にも明日からテスト1週間前だ。正直勉強はしたくないが、彼と一緒にいるためなら勉強を教えてもらうという口実に一緒に過ごせそうだ。早速明日から始めようそう思いながら僕は眠りに落ちた。
「るぅとくん。今日の放課後勉強教えてくれない?」
朝、学校に来てすぐにるぅとくんに言った。
「え、ころんお前勉強すんの?!」
なんて、驚いた声を出すさとみくん。何故か僕が、勉強しないキャラになっていることはイラつくがさとみくんが驚く理由も分からなくもないのでスルーしておいた。
「全然いいですよ。」
「まじ?!ありがとう!」
その後は、ずっと浮かれっぱなしで授業で先生が何を話していたかもお昼になーくん達とどんなことを話していたかもあまり覚えていない。
「るぅとくん、図書室行こ。」
やはり勉強するなら、静かで集中できそうな図書室がいいと思いるぅとくんを図書室へと誘う。
るぅとくんは「分かりました。」といいながら急いで荷物を鞄に詰めていた。
〇
ころんくんが学校に来てすぐ「放課後勉強を教えてほしい。」と言われた。
本当はすぐにでも返って、家の事をしたいと思うが承諾してしまう。
放課後になって彼に、図書室に行こうと誘われた。きっと勉強するとなれば図書室が集中できるからだろう。
僕は急いで、鞄に物を詰めて彼の隣を歩く。あまり図書室まで距離はないので、気づけば図書室の前にいた。僕らは、静かに図書室でテスト勉強をしていた。
しばらく経って、彼から「ねえ、√ってどうやって計算するの?」と聞かれた。
「え、中学校で習いましたよね?」
√の計算は比較的簡単なものだと思った僕はそんな軽口を叩く。
数ヶ月、彼と話していてそんな事を言えるぐらい仲良くなったと思う。たまに冗談を言ってみても、彼は怒ることもないのできっと彼もさほど嫌ではないのであろう。
「いや、だって忘れちゃったんだもん。」
「しょうがないですね。」と勉強を教えてあげる。
教えてあげると「おお!なるほど。ありがとう!」と言われる。
誰かに何かしてあげて、ありがとうとお礼を言われたことはなかったので少し気分がはずんだ気がした。
その日から放課後はテストの日まで、彼と勉強をするのは日課になっていた。
テスト後、どうやら彼はテストの結果が良かったようでニコニコしながら僕の所まで「るぅとくん!テストの結果いつもより良かったよ!」と言いに来た。
「そうですか。ころんくんのお役にたてたようで良かったです。」
貼り付けた笑顔で彼に言う。
彼は何かを言いたげな顔をしていたが、無理に言う必要はないと思ったので無理に聞くことはしなかった。
彼といれば、いつかは笑えるんじゃないかと思うがいつまで経っても笑うことは出来なかった。
お待たせしちゃって申し訳ないですm(*_ _)m
なかなかいい感じのストーリーが思いつかなくて、、💦こんなの待ってくれてる人がいるのかななんて考えてますが、、()
私の中では短編小説を分けているだけなのであと1話か2話で完結させれたらなと考えております!!
続きは読みたいと言ってくれる人が1人でもいれば書きます。
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