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不知火
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#下手くそ注意
まっちゃ𖠚ᐝ
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雫の家庭環境は過酷なものだった。毎日のように浴びせられる愛した母親からのネグレクト。父親は単身赴任で家にいることが少なく、夫婦仲も険悪であった。「お母さん」声をかけても、目の前の女は返事をしない。自分は存在しないのではないかと疑うほど、彼女の視界には雫が映っていなかった。「お前のせいで全てが狂ったんだ」怒りに任せ、手をあげてくる。こんなのは日常茶飯事で何も感じなくなってしまった。荒い息が部屋に響く。そして、音を立てながら外へと出て行った。どうせ男遊びだろうと幼い頃から勘付く
ようになった。そんな雫は六歳。幼稚園にすら通わせてもらえなかった彼は、来年小学校に入学するまでとなっていた。窓から外を眺めると、赤いランドセルを背負って楽しそうにしている女の子の姿が映る。羨望を感じるのは仕方がないのではないだろうか。「僕は、どうして学校に行けないの?」ぬいぐるみに向かって問いかけるが、勿論返事など返って来ない。唯一の救いは足元に転がるドリルの数々。そう、父親が雫へ買ってくれたのだ。育児に関してはどうしても深く関われないため、せめてもの償いとして教養に使う物資を渡した。その為雫はある程度一人で生きていけるほどの言語能力を手にしていた。教養すら受けられない子供よりかはまだ恵まれた環境である。だが、外に出ることすら許されない雫は孤独感に苛まれる日常を送る他なかった。冷めきったカップヌードルを啜る。
父親は帰ってきても疲れ果ててすぐに寝てしまったり、何処かへ出かけてしまう。だから褒められることなど無いに等しい。雫は相当な努力家であるのに。「誰か、此処から出して。」切実な思いを胸に眠りについた。ある日、母親から一つの知らせを聞いた。「新しく隣に引っ越してくる」家での状況を言わないこと、という脅しの文言と共にであったが、雫は少しワクワクしていた。どんな人が来るのだろう。もしかしたら此処から助けてくれるかもしれない、と消えてしまうほどの望みを心に秘めていた。ピンポーン、と家のチャイムが鳴り響く。「はーい。今行きます」母親が明らかに甘い作り声で対応に向かう。今日だけはきちんとしたご飯を食べて、お風呂にも入って、服も綺麗だ。部屋もいつもは物が散乱しているというのに、無理矢理別の部屋に詰め込んである為足の踏み場がある。こんな光景、いつぶりだろうと雫は嬉しさのあまり少し泣きそうになった。あぁ、毎日これが良いな、と淡い希望を抱いてみる。「あはは、そうなんですね」穏やかな談笑が聞こえる。少し覗いてみると、雫と同じくらいの女の子がいた。その子は昨日赤いランドセルを背負っているのを見かけた、可愛らしい女の子。話しかけに行きたい。でも、あまりにも身分が違いすぎる。サラサラで編み込まれた髪型、可愛らしい服、礼儀正しい仕草。これが僕と同じ人間なのか?と疑問に思う。近くで見たことなど片手で数える程もない雫にとって、なにか違う生物に感じた。出て行ってはいけないと本能で悟り、物音を立てないように気を付けながらリビングへと戻った。その後当たり前のように母親に身体中を殴られた。どうやら自分より幸せそうにしている隣人が気に入らないらしい。雫は何も関係ないのに、という言葉を飲み込みながらいつも通りの暴言と暴力を浴びていた。既に、嫌という気持ちすら存在せず、これでしか役に立てないからと、身体中の痛みを感じながら外を眺める。そうすると、昨日の女の子が公園で遊んでいるのが見えた。その公園には他に誰もいない。それでも彼女は一人で楽しそうにブランコを漕いでいた。雫にとって、何にも囚われないようなその姿はとてもかっこよく見えた。この瞬間、羨ましさが憧れへと変わった。こんな風に、自由に生きてみたい。雫の中で何かが変わった。今日もドリルと向き合う。この情報量が限られた生活の中で新しい知識が手に入るというのは雫にとって至福のことであった。知らない言葉、知らない数字。雫の脳に次々と刻まれていく。知ることが楽しい。この時だけは嫌なことを全て忘れることができた。翌日、母親は家に知らない男性を連れ込んだ。「お母さん、この人は?」「うるっさいわね、邪魔しないでちょうだい」雫が発した疑問には答えず、ベランダに投げ飛ばされてしまった。柵が付いていなければ危うく落ちてしまうところだった。ガチャ、と鍵を閉める音がする。「ごめんなさい、開けて!!」窓を必死に叩くが完全に無視されてしまい、外へ監禁状態へとなってしまった。今の季節は春であり、昼間であったことから気温に困ることは無さそうだ。不幸中の幸いと言えるだろう。「君、どうしたの?」雫が声をかけられた方を見ると、昨日の女の子がベランダ越しに此方を向いていた。「ううん、なんでもないよ」気付かれてはいけない。母からの言いつけを守って笑顔でそう返した。「ふうん、そっか」彼女はそこまで興味を示していた訳ではなかったようで、その後はお互いに何も話さない時間が生まれた。雫はずっと此方を見つめてくるこの状況に居心地の悪さを感じていた。どうして鍵が空いているのに中に入らないのだろう。でもそれは所詮関係ないことで、いや、関係してはいけないことなのかもしれないと、思考を働かせる。しかし結論が出ることはなく、諦めざるを得なかった。「私、璃瑠」「え?」「君の名前は?」数十分、いや、数分しか経過していないかもしれない。突如名乗ったと思えば、雫にも名前を尋ねてきた。「雫」「雫…良い名前だね」少し嬉しそうな表情で名前を確かめるように呼んだ。そういえば、名前で呼ばれるのはいつぶりだろう。いつもお前としか呼ばれないため、少しの懐かしさを感じていた。「璃瑠って、瑠璃色の璃瑠?」「詳しいね。そう、瑠璃色から名付けたってお母さんが言ってた」誰にも披露できないこの知識が初めて役に立った瞬間だった。その日から雫と璃瑠は毎日のようにベランダで話すようになった。それは雫の母親が毎日男を連れ込むようになったことを示している。でも、そのおかげか最近は機嫌がよく、雫に対して暴力を振るうことが無くなった。少し安堵のため息を零す。「それで、校庭で遊んだんだけど」璃瑠は学校の話を雫にするようになっていた。雫が学校に行けないことを知っていながらも、事情は何も聞かなかった。その代わり、雫は勉強を教えるようになった。「例えばりんごが一個あると考えて」お互いにメリットしかない、有意義な時間。雫は余計に璃瑠の生活に憧れるようになっていった。
♢
そんな生活が続いて早一ヶ月が経過しようとしていた頃。「今日は何をしたの?」「別に、何もしてない」いつも通り学校での出来事を話してもらおうとすると、璃瑠の様子がおかしいことに気づいた。なんだか、いつもより元気がない。「どうしたの?何か辛いことでも」「ほっといて!!」寄り添おうとして璃瑠の方に手を伸ばすと、その手を強い力で叩かれた。「雫は学校に行ってないからわかんないんだよ」責め立てるような口調で、そう言い放ってきた。この光景は見覚えがある。「ごめんね」その日から璃瑠はベランダに姿を現さなかった。退屈な日常が戻って来て、いつも通りに外を眺めていたその時。「助けて」微かに璃瑠の声が聞こえた。聞こえた方に目を向けると、下の公園で僕より年上の男の子たちに絡まれている璃瑠の姿が見えた。胸ぐらを掴まれていて苦しそう。その光景を見ているだけで何も出来ない自分の無力さに嫌気を感じた。石を投げた。石がカコンと音を立ててトラックに当たる。「やべ、逃げろ」慌てて男の子たちが璃瑠から離れて行く。人の為に行動出来た自分に少し嬉しくなった。心配して璃瑠の方を改めて見ると、上を見上げて何かを探しているようだった。目が合う。その途端、走ってマンションの方へ向かって来た。古いマンションだからか、駆け上がる階段の音が微かに響く。バン、と隣の部屋の窓が開いたと思えば息を切らしながら「なんであんなことしたの!!」と訴えて来た。きっと感謝を伝えてくれるのだろうと思い「璃瑠が無事で良かったよ」と微笑みかけた。だけど璃瑠の反応は予想とは違っていて、「もう二度とあんなことしないで」と真剣な剣幕で警告された。僕は何がダメなのか検討もつかなかった。どうして、と問いかける前に璃瑠は部屋に戻ってしまった。またやってしまった。璃瑠を傷付けてしまった。僕は正式に璃瑠に見捨てられたと理解せざるを得なかった。
♢
心からの友達が出来たのは久しぶりだった。「引越しをする」お母さんから言われた、聞き慣れた言葉。私の家は俗にいう転勤族の、シングルマザー。お母さんは世界中を飛び回る忙しい社長さん。お父さんは私が産まれるのを見るために病院に急いで向かっている途中に車に轢かれて亡くなったと聞いた。それからお母さんは私を女手一つで大事に育ててくれたけど、いつも忙しくて全然会えない。学校にも行かせてもらえているし、どちらかといえば裕福な方ではある。でも、何も楽しくない。友達が出来てもどうせすぐ引っ越すことになるだろうから作る気にもならなかった。日々いつまでこんな生活を続けるんだろうという不安を抱えていた。でも、彼との出会いが私の生活を変えてくれた。「璃瑠、キーホルダー可愛いね。」それは雫。今住んでるマンションのお隣さんだった。「そうでしょ。雫も欲しい?」「ううん、いらない」雫の家は貧乏らしい。流石に本人に聞いたことは無いけど、服装とか、学校に行っていないところからある程度推測できる。でも誰よりも優しいし、すっごく頭が良い。最初に話しかけたのはただの好奇心。でも、いつの間にか気を許せる大切な存在に変わっていた。学校からの帰り道、今日はどんな話をしようかな、と考えながら歩いていると「お嬢様気取りかよ」という声が後ろから聞こえてきた。振り返ると、上級生の男子二人がニヤニヤしながら立っていた。こんなの、何度か経験したから慣れている。対処法も勿論わかっている。「おい、聞いてんのか」無視だ。此方が反応しないのに自分たちだけ話していると、恥ずかしくなってどうせ離れて行く。邪魔しないで欲しい。早く雫に会いたいのに、とこの日は少し苛ついていたのもあるだろう。「親の顔が見てみたいぜ」あと、お母さんを貶されたのもある。「絡んでくるの、ダサいからやめた方が良いですよ」過剰に反応してしまった。「は?生意気だな。なんだお前」「別に、事実ですよ」周りよりも少し発達した言葉使いも相手の気に触ったのだろう。「黙れよ!!」思いっきり押されて倒れ込んでしまった。「暴力に頼るとか、情けな」一度火がついてしまえば、お互いに止まれない。かなり大きな揉め事に発展してしまった。「大変申し訳ございません。失礼いたします」その後、近所の人が学校に連絡し、先生たちが慌てて来て学校に連れ戻された。忙しいのにお母さんも来てくれて、相手の親も来て話し合いが行われた。勿論相手が悪いけど、私にも非があるという内容になったのは納得がいかなかった。でもお母さんが早く帰りたそうだったし、私は大人だから。だから頑張って我慢した。でもお母さんは「面倒事は避けてね」としか言ってくれなくて、心配とか、褒めてくれたりとかは何も無かった。お母さんは大好きなはずなのに、今だけは嫌悪感が拭いきれなかった。「今日は何をしたの?」帰ってきて、いつも通り雫に学校の話をしようと思った。嫌なことなんて忘れられると思っていた。でも、学校に行っていない呑気な雫の姿を見て気持ちが溢れてしまった。「ほっといて!!」自分勝手に怒って、雫に八つ当たりしてしまった。その日からどこか気まずくて、ベランダに行くのはやめた。その後、何も楽しくない日が何日も続いた。雫が私にとって大切な存在だったと気付かされて、今日こそ謝ろうと決めた帰り道。「おい、よくもチクってくれたな」今度は前からやって来た、あの時の男子二人。どうやら待ち伏せしていたようだ。どうして私は帰り道に遭遇してしまうのだろう。本当に運が悪い。というか、こんなことに時間を使ってないでもっと他に有意義なことが出来るだろうに、勿体ない人たちだ。「どう見たって私じゃなかったでしょ。近所の人が学校に言ったの」「そんなの関係ねぇんだよ!!」一方的にキレて掴みかかってくる。ああ、私雫にこんなことしちゃったんだ。「助けて」口から微かに零れる。衝撃に備えて目を瞑ると、カコンと音が聞こえた。一斉に音のする方に目を向けると、目線の先にはトラックがあった。「やべ、逃げろ」大人がやって来たと勘違いした男子が一目散に逃げて行く。突然のことにその場に立ち尽くしてしまう。でも、どれだけ経っても大人が現れることはなくて、もしかしたら聞き間違いかもと思ったが、何故かそうとは思えなかった。きっと誰かが音を鳴らしたんだと思い、周囲を見渡す。誰もいない、ならどうして。その時、一つの考えが浮かぶ。マンションの方を見上げる。居た。目が合った。目的の人物の方へ走って向かっていく。カンカンと階段を駆け上がる音がマンション中に響き渡る。バン、と勢いをつけて窓を開ける。「なんであんなことしたの!!」目の前には、此方を見て目を見開く雫の姿。どうしても、そんな危険な行動をした雫が許せなかった。多分雫は、私を助けようとして、善意でこの高さから物を投げたんだ。でもここは十三階で、もし誰かに物が当たったら雫が加害者になってしまう可能性があった。そんなことになって欲しくなかった。「璃瑠が無事で良かったよ」何も分かってない表情で微笑みかけてくる雫に、私は、なんと言えば良いか分からなかった。「もう二度とあんなことしないで」出来る限り冷静に、雫の心に響くように真剣に警告した。なんと伝えれば、人との関わりがない雫の心に響くのか、この危険さが伝わるのか。幼いながらの拙い知能で考えてみたが、答えは出なかった。
♢
殴られた。久しぶりに痛みを味わった。「ぅあ…」掠れた声しか発せなかった。どうやら愛していた男に騙されたらしい。しかも、そのことがお父さんにバレたんだって。「どうして浮気なんてしたんだ!!」「貴方が私を放っておくからよ!!」「此奴の世話だって私に押し付けて、私を幸せにしてくれるんじゃなかったの?!」怒声が響き渡る。怖いよ、怒らないで。誰も僕を気にかけてくれない。全部自分のことだけ。僕は、誰にも見てもらえないんだ。涙が滲む。だけど、僕は泣くことが許されないから。熱いお湯をかけられちゃうから。「やめてよ…」この想いは、誰にも届かない。気が付いたら時計の針は八を指していた。疲れて寝てしまったようだ。お父さんが荷物をまとめているのが見える。「お父さん」「雫。お前は、どっちと居たい?」起きたばかりの働かない頭で必死に考える。どういうこと。二人とは一緒に居られないの?「お母さんと、お父さんと一緒が良い」「ごめんな」優しく抱きしめてくる。謝るなら一緒に居てよ。お願いだから、離れないで。お父さんは僕に決める時間をくれた。でも、僕には決められなかった。お父さんが仕事に向かった後、お母さんが起きてきて、僕に告げた。「雫は私と一緒に居たいわよね?」僕に有無を言わせないような、そんな口調で責め立てて来た。「貴方は私の息子だから」嬉しいはずなのに、嬉しくない。それはきっと、僕じゃなくてお金目当てだってわかっていたから。難しいことはよく分からないけど、何となくわかった。この出来事があってから、部屋が片付いてきた。片付けているのはお母さんだ。きっと養育費を僕に使わずに自分の為に使うつもりなんだ。だからどうせこの家から出て行く。やっぱり、嫌だ。僕はお父さんと暮らしたい。でも言うのが怖い。また殴られるから。
♢
今日もまた優等生として学校に行き、授業を受け、帰る。仲の良い友達も居ないままモノクロの世界を生きている。あんなにも明るくて楽しい日常は私のせいで消え去ったから。最近雫の家が引っ越すという話を聞いた。せめて、最後に謝りたい。叶うならば「やめて、ください」私を助けてくれた彼を、助けてあげたい。知ってたよ。虐待されているんだよね。でも深く関わりたくないからって知らないフリをしていたんだ。けれどもう無理だよ。だって、こんなにも仲良くなっちゃったんだもん。これは、私が最後に
出来ること。そうして毎日の特定の時間に、私は受話器を手に取った。
♢
「あんのクソ男…最後まで雫を奪うつもりか。ふざけるなよ!!」お父さんとのお別れの日。お父さんは最後まで僕を気にかけて、住所と電話番号を紙に書いて渡してくれた。ここに行けば、ここに電話をかければ解放される、と希望を抱えたのも束の間。お母さんに紙を取られ、ビリビリに破かれてしまった。そして、いつも通り殴られている。「やめて、ください」今日はどうしても気持ちを抑えきれなかった。「お前、反抗すんのか?」やってしまった。今日は何をされるのだろう。確実なのは、いつもより酷い目に遭わされるということ。ピーンポーン、とチャイムが鳴り響いた。不機嫌なまま勢いで応対したお母さんの前には、警察が立っていた。その後ろには見慣れた女の子の姿が。「雫」「璃瑠…なんで」「長谷川月乃さん。貴方には育児放棄と虐待の疑いがかかっています。」「私はそんなことしていません。私はこの子を愛していますから」「そうよね?雫」鋭い目つきに足が竦む。「雫、お願い。正直に言ってよ」璃瑠の態度から、通報したのが彼女だということを察する。「僕は」口の中の渇きを感じる。極度な緊張状態。ここで言えばきっと助けてもらえる。でも、ここで言ったらお母さんを裏切ることになる。どうすれば良いの。「雫」璃瑠とお母さんの声が脳内に響く。僕が選ぶのは。「たすけて」自然と口からそう発していた。「十五時三十七分。長谷川月乃さん、警察署へ連行します」「ふざけるな!!おい!雫!!」「暴れるな!大丈夫だ、すぐ迎えが来るからな」優しい口調で落ち着かせてくれる。そんな僕は、泣くことも無く呆然とその場に立ち尽くしてお母さんが連行される姿を眺めていた。「雫」名前を呼ばれてそちらに目を向ける。「あの時は、ごめんね」年齢相応の口調で、泣きそうになりながら僕に謝ってくる。「ううん、僕も、ごめんね」気付いたら涙が流れていた。「私ね、雫と会えてよかったよ」これが最後の会話。どうなるかは分からないけど、僕はきっとこの家には帰って来られない。「僕も!僕も、璃瑠と出会えて良かった。ありがとう」サイレンの音が聞こえて来る。「また、またいつか会おうね!約束だよ!」指切りげんまんの形を作って、小指を絡め合う。「ゆーびきーりげーんまーんうーそつーいたらはーりせんぼんのーます!ゆびきった!」
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十三年前、スズシロアパートにて小学生二人の約束が固く結ばれた。そして、彼らは現在二十歳。立派な成人となる年である。「まだ、居るかな」微かな望みをかけながら、記憶に深く刻まれた五一二号室。の隣の、五一三号室のチャイムを押した。ピーンポーン、と懐かしい音色が響き渡る。「はーい」ドアを開けたのは、見たことのない女性の姿。だけど、その顔には確かな面影が残っている。「約束、守りに来たよ。璃瑠」
コメント
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うわあああ第1話からエモすぎて泣いた😭💕 雫くんの壮絶な家庭環境がリアルで胸がぎゅってなった…そんな中で璃瑠ちゃんと出会って、ベランダ越しに少しずつ心開いていく過程が尊すぎる…!最後の「約束、守りに来たよ」からの再会展開にキュンが止まらんかった〜🫶 続きめっちゃ気になる!不知火さん素敵な作品ありがとうございます🌸