テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
激動の一日となったこの日も漸く暮れようとしていた。
あれから半日近く石ばかりの谷底を歩き続けた一行は、その後、小高い丘を越え、今居る平原に生えた一本の巨木へと辿り着いたのである。
結構な時間をペトラの背中で寝て過ごしていたレイブは、目の前に広がる平原、そしてその遥か先に見える鬱蒼とした森林地帯を眺めながら仲間達に語り掛ける。
「えーっ? 俺ちゃんと言ってたろう? 『どこの誰だか知らないが、なんのつもりだっ!』ってさぁ、ズバッと言ってやったじゃんっ! な?」
『ギギ』
「えーっ!」
テューポーンが激しく首を左右に振って打ち消すが、どうやらレイブ的には納得していないらしい。
『我にはそう聞こえたぞ』
「流石はギレスラ」
イエスマンの風潮は健在らしい。
『ほら、話はそれ位で良いでしょ? 夕ご飯の支度が出来たわよ』
『おう、やっとか』
「そういや腹が空いたな」
今夜の夕食はペトラが拵えた様だ。
旅立ち以来大切そうに背負っていた背嚢から取り出したであろう、質素ながらも綺麗に揃えられている木製の食器の上には、待望のご馳走が並んでいる、筈なのだが……
「何だ、コレ?」
『何って、夕食よ、夕食!』
『ギギッ♪』
『いや…… 流石に、これは……』
『何よ!』
バッタのテューポーンだけはやけに嬉しそうにしているが、レイブとギレスラはなにやら不満げな素振りを隠そうともしていないそのメニューとは。
① オードブル、前菜として『季節の野草、アソート山盛りサラダ』
② スープとして『野の草と根っこのミネラルたっぷりナチュラルスープ』
③ ボワソン、魚料理として『石化の谷、池で見つけたヒルのあっさりボイル木の実風味』
④ ソルベ、口直しとして『摩訶不思議、正体不明な蕾のジュレ』
⑤ アンソレ、肉料理として『珍味、熟成モグラのソテー、香草ソース』
⑥ デセール、デザートとして『魅惑のマーブル、謎の野の実のフルーツ風』
⑦ カフェ・プティフールとして『野草ティー&ペトラの気紛れ草団子』
だそうだ。
まあ、ペトラなりの心尽くしのフルコース、なのではないだろうか?
歯に衣着せぬが心情のレイブが言い放つ。
「これ、ほぼ雑草じゃん」
確かにね。
『このモグラってさっき見掛けた腐乱死体じゃないのか?』
マジかよ?
『だとしたら何なの? 貴重なタンパク源じゃ無いのぉ!』
そ、そうなんだ……
鴨之助
489
いね
1,815
514
#ファンタジー
成瀬りん
21,784
コメント
1件
あはは、これはもう「心尽くしのフルコース」って呼んでいいのか悩むラインですね(笑)。ペトラの本気とレイブの「ほぼ雑草じゃん」の冷静さが絶妙で、テューポーンだけはしゃいでるのも可愛い。ヒルのボイルとか腐乱モグラ疑惑とか、旅の過酷さが食卓ににじみ出てて、なんだか愛おしいシーンでした。仲間たちのやり取りにほっこりしました。