グシャリ、と靴の裏で砂を踏む小さな音が人の気配とともに背後から聞こえてくる。
『…あ、来てくれたんだ。ごめんねいきなり。』
音の主は私の顔を見た瞬間、黄色く色づいた瞳を大きく見開き、瞬きすら忘れているように動揺の色を顔全体に表す。
そりゃそうだろう。あんな告白しますと言っていると同じような手紙を、私が書いただなんて思うはずもない。それに加え、渡すだなんて。
『…本当にごめんね。こんなこと言われても困るだろうけどさ、』
言葉を吐こうと息を吸い、吸った息をそのまま飲みこむ。
そして、目を瞑りほぼ叫ぶように言葉を紡ぐ。
『佐野エマさん』
『あなたの事がずっと好きでした』
あの日見た真っ赤な夕焼けは、冷ややかな意地の悪い微笑みを浮かべて私を見つめていた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!