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#学園
大正
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つかであきひろ
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椥守蕊月
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きっかけは、父方の祖父母がくれたランドセルだったと思う。
それまで真咲は、大人しくて目立たない普通の子供だった。
年の離れた兄姉は十分物心ついた頃に小さな妹に対して関心が薄く、母親は手のかからない子なのを幸いに、真咲が就学する前から仕事に復帰していた。
「真咲、おじいちゃんおばあちゃんからプレゼントだよ」
小学校に上がる直前、彼女は自分宛に届いた包みを開けてびっくりした。
そこには、青色とも黒ともつかない不思議な色合いのランドセルが入っていたからだ。
「きれいな色だね」
「ホントだ。お父さんも大好きな色だ」
父親はそう言って「これは藍色っていうんだよ」と真咲に教えた。
あいいろ、あいいろ·····。
耳慣れない響きだったが口に出すと心地良く、また難しい言葉を知ったことで少しだけ大人になった気がした。
今になって思うと、祖父母があのような色を選んでしまったのは、真咲の性別を一つ下の従兄弟と間違えていたのかもしれない。
母親は「女の子なのにこんな色を使うなんて可哀想」と送り返そうとしたが、父は本人が気に入っているのだから、とそれに反対した。
結局真咲の「どうしてもこれがいい」という駄々により、母親が折れた形になり、入学式には喜び勇んでそのランドセルを背負い校門をくぐった。
幸い、入学した小学校には保育園からの見知った顔も多く、またおおらかな土地柄もあってか、真咲のことをランドセルの色でいじめるような者はひとりもいなかった。
むしろ、「珍しいね」と言われて少し得意になったりもした。
それから真咲は髪を切った。
小学校に入り行動範囲が広がると、もともと女の子同士がするようなお人形遊びが得意ではなく、野山をかけずり回る方が性に合っていることに気づいたからだ。
洗うのも乾かすのも、短い髪は楽だった。
そして着る服も、より動きやすいもの、汚れが目立たないものを多く選ぶようになっていた。
そんな真咲の変化に母親はあまりいい顔をしなかったが、真咲は別に悪さをするでもなく学校内での態度は真面目で、近所の子を持つ親から「優秀でうらやましい」と褒められる。
自身も忙しくて構ってやれないことが多い手前、娘に強いことを言える立場になかったのだろう。
気がつくと真咲の外見は、同年代の男の子のそれとほとんど変わらなくなっていた。
そんなふうに、ちょっと風変わりながらのんびり育ってきた真咲が、小学五年生になったある日のことだった。
コメント
1件
第9話、拝読しました。 藍色のランドセルから始まる真咲の成長が、とても丁寧に描かれていて惹き込まれました。母親が「女の子なのに」と気にするのに対して、本人が気に入って駄々をこねる場面、真咲の確かな自己肯定感が感じられて微笑ましかったです。髪を切ったり動きやすい服を選んだりするのも、無理に「男の子っぽく」しようとしたのではなく、自分の性に合った選択を自然にしているように見えて、その在り方が素敵だなと思いました。物語はまだ始まったばかりで、これからどう展開していくのか楽しみです。