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耀聖(ようせい)
1,222
食パン
37
夕飯を食べ終えた真咲は、リビングのソファに座って、その年初めての茹でトウロモコシをデザート代わりにかじっていた。
最近元気がないように見える母親が、真咲の横に座った。
神妙な顔をしていたので「どうしたの」と尋ねると、母親は膝に置いた手を震わせて言った。
「真咲、落ち着いて聞いてね。·····お父さん、もう長くないらしいの」
一瞬「なんのことか」と耳を疑った。
呆然とする真咲に、母親は父が病魔に冒されていること、進行が早く気づいたときにはもう手遅れだったことを涙ながらに語った。
まさかそんな、と最初は信じられなかった。
父は医師で、しかも専門は外科なのに。
自分で自分の病気が分からないはずがない。
しかしその日以降、元々細かった父の体はますます痩せ細り、体調を崩しては入院し、そのまま何日も家に帰って来なくなることも増えてきた。
「がんばって、お父さん」
病床で骨と皮ばかりになってしまった父の手を握りしめ、何度もなくそう励ました。
奇跡が起こりますようにーしかし真咲の必死の祈りも空しく、新年の声を聞くこととなく、父は天へと旅立った。
その後、忌中が終わるなり母は真咲を連れて実家に帰ると言い出した。
もともと都会育ちのお嬢さん気質だった母親は、以前より田舎の暮らしにどうしても馴染むことができずにいたのだ。
上のふたりの子供は進学や就職ですでに家を出ている。
それに、亡き夫にしても土地の人間というわけではなく、たまたま奇遇の良い病院があったためそこに赴任してきたに過ぎない。
真咲が小学校の六年に上がるのを機に、母親は街を離れた。
「せめてあと一年、みんなと一緒に卒業したい」ー真咲の願いは聞き入られなかった。
真咲が新しく入ったのは、都内でも比較的古くからの住人が多い地域の公立小学校だった。
周辺の学校に比べ荒れている者は少なかったが、その分余所者を寄せつけない雰囲気ができあがっていた。
真咲は地方からやって来たにもかかわらず、素朴な雰囲気がなく、性格は理不尽を経験した故か、どこか冷めたものになってしまった。
加えて服装はまるで男子のようで女子とはつるむ気配がない。
クラスのリーダー格の女子グループに「生意気」「変人」と目をつけられるのも時間の問題だった。
他の児童たちにもそういった空気は瞬時に伝染する。
担任の教師に「真咲ちゃんのことよろしく頼んだよ」と言われた学級委員の子とその友達のみ、教室移動や給食の際などに真咲に話しかけていたが、リーダー格の女子の顔色を窺っているのか、明らかに腫れ物を触るような扱いでしかなかった。
コメント
1件
もう第10話か〜!今回めちゃくちゃ重くて胸が痛んだんだけど😭💔 真咲のパパが医者なのに自分の病気に気づけなかったってところが切なすぎる、、しかも最愛の父を亡くした直後に引っ越しとか、心の準備もできないまま環境変わっちゃうのツラすぎるよ🥺 新しい学校で「変人」扱いされて孤立する描写、リアルで読んでて胃がキリキリした…でも真咲の強さとか冷めた目線はこの経験があってこそなんだろうな。ヒナさんの心情描写がエモすぎて泣きそうになった😢💕 続きが気になるー!