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僕達が住む村の寿命はとても短い
平均して25年で、30年生きられれば長寿だ。
他の村の平均は知らないが、遙か遠方から来た
旅人に驚かれたことがあるらしい。
そんな話を、幼い頃に聞いた。
この村の運命なのか、
人々は同じ病に罹かっては命を落とす。
それでも人々は血を絶やさないように妻を娶
り、子を作り、様々な知恵や技を教え、自らの
遺伝子を継承させた。
そうして死んで行った。
村に2つある出入口の片方──
鬱蒼とした森の前に立つ。
以前は門があったはずだが、
今は面影すら無かった。
ただ、木屑が地面に散らばっているだけだ。
まるで分岐点友呼べるような場所に立ち、
改めて深呼吸をした。
この村には、代々伝わる伝承が幾つかある。
その1つが、”不老不死の魔女”に
ついて だった。
森に住む魔女の心臓を食べると、
その者は千年間生きられる──
そんな言い伝えだ。
短命な僕達にとって、それは夢のような
話だった。
魔女の実在を信じている分、 実現可能な
夢でもある。
ただ、魔女探しを阻むような噂も幾つかあり、
怖さゆえ人々は森に入ろうとしなかった。
けれど、僕がなぜそこに入ることを
決めたのか。
それは、固い決意があったからだ。
僕はもうすぐ25になる。
それだけならまだしも、既に病が兆候を
見せ始めていた。
その上、僕には子供が居なかった。
不幸なことに巡り合わせがなく、
結婚すら出来なかったのだ。
生まれた意味や、遺伝子を残せずに
死ぬのは正直怖い。
いや、違うかもしれない。
僕はただ”死”が怖い。だから生きる道が
欲しいと思った。
魔女の心臓を手に入れ、奪い、食べる。
僕に残された光は、それだけだった。