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※ウィンブレ夢主(男)の話
「葵」って名前が、俺は嫌いだ
というより、俺は「俺」が嫌いだ…
「葵くんって名前、変だよね」
『え?』
きっかけは小学生2年生の頃、当時好きだった女の子にそう言われた事だ
それまであまり、というかまったく自分の名前に関して何も思っていなかった
『何でそんな事言うの?』
俺が尋ねると、その子は他の同級生と笑いながら答えた
「だって葵って、“女の子の名前”じゃん」
それからこの名前が嫌いになった、おまけに
「そもそも葵くんって、何で男の子なのにそんな女の子みたいなカッコー?してるの?」
と次々と質問された、このての話題は一人聞き出すと止まらないもので
中には面白がって「男女、女男」と揶揄う男子生徒もいた
今となれば、そう言われていた訳も全て分かる…
他の男子生徒が黒や紺色のランドセルを背負う中、俺だけが赤色のランドセルを背負う
他の男子生徒が耳より上まで髪を短くしている中、俺だけが肩まで髪を伸ばしている
他の男子生徒がズボンを履いている中、俺だけがフリフリのスカートを履いている
他と違いすぎたから、人形になり過ぎたから
俺はその日から、他人を好きになる事を恐れ自分が嫌いになった
6年生に上がる頃には、きっと「普通」の格好が出来ると思っていた
でもそうはいかなかった
逆に俺を着飾るものはどんどん増えていった
声、服、靴、髪型、体型、仕草、全てが俺を俺じゃなくさせていく
高い声を出すように強要され、服は明るく華やかに靴は服に合わせ必ずローファーで
髪は肩より下まで伸ばして、体型はくびれがあるのは当たり前、仕草は小さくお淑やかに
肌も焼けぬように日焼け止めを塗りたくって体育の授業は室内以外全て見学
常に笑顔で感情を出さず、ただただ周りに好かれる子で居るように
俺は母の着せ替え人形でしかなくなった
もし姉が生まれていれば、俺はこうならなかった
姉が生まれていれば、俺はきっと「葵」なんてつけられなかった
もっと別の、違う誰かになって 好きな格好して好きな事をできた
姉さえいれば…でも
そう思うと同時に、姉が流れていなかっ たら
俺は生まれてすらいなかったのだという事を理解した
俺は、結局 姉の「代用品」でしか無い
その6年間は、我慢と苦難の毎日だった
可愛いくなんてなりたく無い、こんなのは俺じゃ無いという思うを噛み殺しながら過ごした…
それから中学に上がり、俺は「僕」になった
俺は中学に期待した、ようやく「男らしい」格好が出来る、みんなと同じ制服を着れるんだ…っと
届いた制服が女子生徒と同じセータータイプのセーラー服とズボンと知るまでは
あぁここでも俺は他と違うのか、と絶望した
まさかここまですると思わなかった、母の姉への執着がこんなにも強いものなんて
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