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昔々、あるところに赤ずきんという女の子がいました。ある日のこと、赤ずきんのお母さんが言いました。

「赤ずきん、お願いがあるの」

「なぁに?」

「このパンとぶどう酒をおばあさんのところへ持って行ってちょうだい」

おばあさんはよく体調を崩していました。そのため、赤ずきんはお母さんに頼まれてお見舞いに行くことが多くありました。

「わかったわお母さん」

赤ずきんはおばあさんのことが大好きだったので、今回も当然のように引き受けました。

支度を整えた赤ずきんに、お母さんは言います。

「赤ずきん、道中狼には気をつけるのよ」

「はーい!行ってきまーす!」

「行ってらっしゃい」

お母さんに見送られ、赤ずきんは元気よく出発しました。

彼女はおばあさんに会うのが楽しみで楽しみで仕方ありません。そのため自然と駆け足になっていました。

「おばあさんの所に早く行かなくちゃ!」

「やあお嬢さん」

そこに突然、並走する者が現れます。見てみると、それはなんと狼でした。お母さんに狼には気をつけるよう言われていた赤ずきんでしたが、彼女はそのことをすっかり忘れてこう尋ねました。

「あら、狼さんどうしたの?」

「そんなに急いでどこへ行くんだい?」

「おばあさんのお家よ!パンとぶどう酒を届けに行くの!」

「そうなんだね!だったらお土産にお花を摘んでいくのはどうかな?」

「お花?」

「ボク良いところ知ってるよ!」

赤ずきんは少し考えた後、狼の提案に乗ることにしました。

「それはいいわね!きっとおばあさんも喜ぶわ!」

「じゃあ案内してあげるよ!ボクについておいで!」

「ありがとう狼さん!」

赤ずきんは笑顔で礼を言うと、先導する狼の後を追い駆けました。

それから少しして、狼と赤ずきんは美しい花畑に到着しました。咲き誇る花々を見た赤ずきんは目を輝かせます。

「わあ! とっても素敵な花畑ね!」

「だろう?それじゃあボクはこれで」

「じゃあね」

狼に別れを告げた赤ずきんは、早速お花摘みを始めました。

一方狼は先程赤ずきんから聞き出したおばあさんの家に急いで向かいます。

「人間を二人も食えるなんてラッキー!早く行かねぇとな〜」

そう、狼は親切なフリをして赤ずきんを騙してわざと寄り道をさせました。そして空腹だった彼はおばあさんと赤ずきんを食べようと企んでいたのです。

やがて狼は目的地であるおばあさんの家に到着しました。彼は扉を強くノックします。

その音を聞いたおばあさんは、弱々しい声で尋ねました。

「あら……?どちら様かね…………?」

それに対し狼は裏声で答えます。

「おばあさん!赤ずきんよ!!」

何も知らないおばあさんは、狼の裏声を赤ずきんのものだと信じ込んでしまいました。

「おや……赤ずきんかい?今開けるからね」

おばあさんが扉を開けると、そこに可愛らしい赤ずきんの姿は無く、代わりに狼が立っていました。

「いただきまーす!」

「イヤァァヘンタイィィ!!」

少々誤解を招くような悲鳴をあげたおばあさんに向かって、狼は怒鳴ります。

「うるせぇ!ババアの癖に恥ずかしがるなよ!!」

「だって、心はいつまでも乙女……♡なんじゃよ」

「知るかよ」

「そんな男は嫌われるよ……」

おばあさんの乙女心を容赦なく踏みにじった狼は呆れている彼女に命令しました。

「おらさっさと服脱げ。そっちの方が食うのが楽だ」

しかしおばあさんも負けてはいません。精一杯抵抗します。

「嫌に決まってるだろうこの変態狼め!」

「あ?その喉噛み千切ってやろうか!」

「それもやめてほしいけど、せめて着衣で食べなさい。私にも恥があるんだから」

「服ごと食ったら腹壊すだろうが」

「あぁ、そこら辺はちゃんと気にするんだね」

ああ言えばこう言うおばあさんに、狼は投げやりになって命令しました。

「あーもう食う気失せたわ。ババア、クローゼットの中入れ」

「おまえさん適当だねぇ」

それを聞いてカチンときた狼はすぐに気が変わりました。

「やっぱ料理して食うか。味付けすれば美味いかもしれねぇ」

「骨しか無いから出汁にしかならないよ」

「ってかババア、割と元気じゃねぇかよ」

「おまえさんと話してたら体調不良なんて吹っ飛んだよ」

「……そうかよ」

「それにしてもおまえさん物好きだね。こんな老いぼれを食おうだなんて」

「……そんなのオレの勝手だろ」

この時狼の頭の中にはある出来事が頭をよぎっていましたが、彼がそれを口に出すことはありませんでした。

「ところでババア、旦那はどうした」

「とっくに旅立ったよ」

「そうか。じゃあ寂しくてしょうがないだろ」

狼が言うと、おばあさんは首を横に振りました。

「うちの旦那は暴君でねぇ、暴力と暴言は日常茶飯事。あんなのいなくなって良かったよ」

「あんなの、か……じゃあなんで結婚までした?」

「お見合いさ。無理矢理結婚させられたんだ」

狼に人間社会の詳しいことはわかりません。けれども旦那に対する強い憎しみだけは感じ取りました。おばあさんの話は続きます。

「思い返せば娘の旦那もろくでもないやつだったよ。なんで男ってみんなああなんだろう」

「……じゃあ、ババアたちは今の方が自由ってことか」

「そうだねぇ」

「残念だったなぁ。その自由が男であるオレに奪われて」

狼はそう言うと、おばあさんを丸呑みにしてしまいました。ひと息ついた彼は呟きます。

「……無駄な時間だったな。結局人間だってオレたち狼とほとんど変わらないじゃないか。一瞬でも同情しかけて、バカみたいだ」

そんな呟きは、扉の隙間から一部始終を覗いていた赤ずきんの耳にも届いていました。

この作品はいかがでしたか?

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コメント

3

ユーザー

おぉ!!!ノベライズも待ってました☆ 凄い、文字だけになるとなんかちゃんとした話みたいに見えるww 後半の自主規制あたりは、描写難しそうだけどどうなるんだろうw

ユーザー

ノリでやったおばあさんの旦那の話が社会の闇になっている…w

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