テラーノベル
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仁人の乱れた息遣いが、静かな部屋に響く。
どれくらい時間が経っただろう。長かった気もするし、ほんの一瞬だった気もする。
おれの下で意識を失った仁人にみっともなく狼狽え、何度も仁人の名を呼んで、身体をゆすった。
それでも仁人は目を覚まさなくて、
色のない顔に、もう二度と仁人に会えない気すらした。
とりあえず息をしていることに安堵し、ベッドへと運ぶ。
…身体が軽すぎる。
その瞬間、後悔が駆け巡る。
こいつがしっかり食事を食べてるのを見たのはいつだ。…いや、今日は食べていた。でも辛そうにお腹を抑え、トイレから帰ってきた時の顔色も悪かった。
吐いて、いたんじゃないだろうか。
パフォーマンス後の息切れも、車での脱力感も、全部予兆は見えていた。
そんな状態の仁人に欲望を剥き出しにして、無理をさせてしまった。
「くそっ…、、なんで俺は…」
悔しさと情けなさに思わず声が漏れる。
「仁人、ごめんな。」
そう言いながら仁人の頭を優しく撫でる。
熱は、やはり無い。
目を覚ましたら何か食べさせた方がいいだろうか。
ふと、不安になる。
……仁人、目を覚ますよな?
顔色も悪く、体温も低い。
呼吸も浅い。
これは大丈夫なのか。
心配になって携帯に手を伸ばし、仁人の症状を検索欄に打ち込む。
すると、これだ。というものがヒットする。
『低血糖』
「低血糖…。そうか。そうだよな、食べてないしあれだけ動いたら倒れるのも無理ないかも。」
症状の一覧に目が止まる。
「異常な眠気、意識消失、昏睡」など仁人に当てはまることばかり。しかも重症の場合と書いてある。
そして、血の気の引くワードが最後に書かれていた。
『命に関わる非常に危険な状態』
一気に焦りが襲う。仁人が、死ぬ?
「…じん、と、じんと!起きろ!!仁人!!起きてくれ…!」
必死に仁人を呼ぶがビクともしない身体。
「や、やばいきゅうきゅうしゃ、救急車、呼ばなきゃ」
動揺して携帯を持つ手が震える。
落ち着けよ、落ち着け!今仁人を助けられるのは自分しかいない。しっかりしろ。
深呼吸をし、やっと119の番号を押し終えたところで、
「はや、と…」
背後から声が聞こえた。
振り返ると仁人が横になったまま目を開け、こちらを見ている。
「じ、じんと、、?」
幻聴?幻覚?ゆめじゃ、ないよな…。
「おれ、…」
「じんとっ…っ、、」
寝たままの仁人に覆い被さり、強く抱きしめる。
「よかった、よかったじんと…
…もう、目を覚まさないかと思った。 」
みっともなく涙が止まらない。
💛視点
目を開けると、白い天井が広がっている。
酷く頭が重たい。ぼんやりする思考に現状が把握出来ないでいた。俺は一体どうしたんだろうか。ベッドに入った記憶はない。
近くで愛しい人の声が聞こえる。
でもそれは聞いたことないくらいに酷く震えていた。
視線を動かすと携帯片手に焦った様子の勇斗。
「(きゅうきゅうしゃ……?)」
「はや、と…」
声をかけると勇斗が振り返り、視線が合う。
声がうまく出なかった。
救急車…。はやと、どこか悪いんだろうか…。
血の気の引いたような顔をしている勇斗を見て、色々尋ねたいが、まだ頭が働かない。
すると、勇斗が横たわる俺に覆いかぶさり、抱きついてくる。
泣いているようだった。
…そうか、おれ、勇斗の家で倒れた、のか?
あの時の、意識が遠のく感覚を思い出して心臓がヒュッとなる。
どれくらい眠っていたんだろう。
「はやと、もうだいじょうぶ、だから。泣かないで」
そう声をかけると勇斗が顔をあげる。
涙でぐしゃぐしゃだ。
「じんとっ…お前たぶん低血糖で、調べたら最悪死ぬって…かいて、あって…。ほんとに怖かった。良かった、じんと。ほんとに良かった。」
低血糖…。1歩間違えれば死ぬところだったってことか。泣いている勇斗を見て、もし逆の立場だったらと考える。
……怖い。勇斗が死ぬかもしれないなんてことが起きたら、絶対に耐えられない。
俺はそんな思いを勇斗にさせてしまったんだ。
たくさん、間違えてしまった。
「ごめん、はやと。もうしない。」
「…っ、約束だ仁人。
食べられない時に無理矢理食べろなんて言わないからさ、せめて俺を呼んでよ。」
「うん、そうする。ありがとう」
勇斗は涙を拭き、
「まずは何か糖分取った方がいいよな…。
ジュース持ってくるから、飲めそうか?」と言う。
「うん、飲める。」
勇斗は返事を聞くとリビングの方へと向かっていく。 ジュースが飲めるように身体を起こそうとするが、上手く力が入らない。
今日自分はどうやって仕事をしていたのだろう。一度気を抜いた身体は、中々言うことを聞いてくれなかった。
「じんと、ジュース持ってきた。身体起こせそうか?」
「…ごめん、手伝ってほしい」
そういうと勇斗は俺の背中を抱き抱えるようにして、起きるのを手伝ってくれる。
「……っ、、 」
急に起きたからだろうか。目が回るような感覚に陥って、咄嗟に勇斗の服を掴む。
「大丈夫か?じんと」
「、、めが、まわる…けど、だいじょぶ。もうちょっとこのままで…」
頭を勇斗の身体に預け、目をぎゅっと瞑り耐える。
しばらくすると気持ちの悪い感覚が大分マシになる。
「ありがと。ジュース、飲む。」
…ジュースはこんなに美味しかっただろうか。
なんだかいつもより甘く感じる。
「おいしい…」
「ははっ、そりゃよかった!」
ジュースをあっという間に飲み干し、再び横になる。
頭を撫でてくれる勇斗。
それがすごく気持ちよくて、これだけでもう寝れそうだ。
「ありがと、はやと…。」
「……もう、二度とお前にこんな思いさせないから。だから、安心して寝な。」
こんなに気持ちよく寝に入れるのはいつぶりだろうか。大好きな人の匂いに囲まれて、おれは再び夢の中へと落ちていく。
-Fin-
初めての作品で拙い部分も多くありましたが、
ここまでお付き合いいただけて嬉しいです。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
コメント
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全て読ませていただきました神ですありがとうございます😭
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