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5 - 第5話 照れくさいのに、あたたかくて

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2025年06月27日

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それは、ほんの少し前の出来事だった。

あの日、木陰で重ねた指先。そっと、でも確かにふれたぬくもり。


あれから。

タマモクロスは、オグリキャップと目を合わせるたびに、なんとなく胸がざわつくようになっていた。


今日も放課後、トレーニングを終えて、ふたりで裏庭のベンチに座っている。何気ない時間―のはず、なのに。


「、、、あのな、オグリ」


「うん」


「、、、この前、木陰で指、重ねたやろ」


「、、、うん」


オグリは、すぐに顔を赤くした。でも、それでもそれでも目をそらさず、真っ直ぐに見てくる。


「タマモ、、、あれ、私、、、すごく、嬉しかった」


その一言で、タマモの胸が跳ねた。顔が熱くなる。


「わ、わかっとるわ、そんなん、、、うちも、あんなの初めてで、、、なんや、どきどきして、、、」


「、、、今も、してる?」


「、、、、、、してる」


タマモは、小さくうなずいた。そして、勇気を出して、そっと言葉を重ねる。


「なあ、オグリ。あんた、うちのこと、どんな風に思ってる?」


しん、、、と静まりかえる空気。少しだけ、風が桜の残り香を選んでくれる。


オグリはしばらく考えたあと、真っ直ぐな声で答えた。


「、、、大切、だと思っている。レースでも、日常でも、、、一番、君のことを見てる」


そして、ほんの一瞬の枕黙のあと。小さく、でも確かに―


「、、、たふん、好き、なんだと思う」


その言葉を聞いた瞬間、タマモの、視界がふわっと熱くなる。思わず、制服の袖で目元をこすってしまう。


「そっか、、、うちも、たぶんやない」


タマモはにっこり笑って、オグリの手をとった。今度は、指先だけじゃない。しっかり手のひらを包むように。


「うちは、オグリのこと、、、本気で好きや。大切に思っとる。ずっと前から、ずっとな」


静かに結ばれる手。もう、ためらいはない。もう、まめらいはない。


ふたりの間に流れる空気は、優しくて、甘くて。それは、春の、どんな花よりもあたたかい時間だった。

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