テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「お待たせ!!じ、じゃあ行こうか。」
よほど慌て来たのだろう。ほんの数秒で戻ってきた。
申し訳なさから急いだのか、人気のないところに待たせている私が心配だったからか。
出来れば後者の方であってほしいと願っていた。
「はい。」
そんな考えを見透かされたくなくて、ぶっきらぼうに答えると、再び鍵をかけ、車に向かって歩き出す。。
「………」
「………」
お互い、何も喋らずにひたすら歩き続ける。
2人の間にある音は、靴が地面を蹴る音だけ。
(今…店長は…何を考えているのかな。)
私より少し前を歩く後ろ姿を見つめながら思う。
だけどそれは聞けなかった。聞いてはいけないような気がしたから。
――ブルルルル――
「さ、寒くないかい?」
「大丈夫です。」
中身のない会話をしながら、車は走り出す。
「……それで。どこから聞いてたんですか?」
窓から覗く街明かりに目を向け、口を開く。
いくらなんでもこのままずっと沈黙は嫌だったから。
きっとこの店長のことだ。私から切り出さないと話さないだろう。
全く、年下に気を遣わせるなんて男らしくない。
「え、えぇ!?」
ガクン、と車体が揺れる。どうやら動揺してブレーキを踏んだみたいだ。
幸い、車がいないからよかったものの…
(私…何でこの人のことが大好きだとか言っちゃったんだろ。)
冷静に自分に突っ込みを入れながらも話を進める。
「だから、私達の会話ですよ。あそこに立っていた、ということは少し前から来ていたんですよね?」
「あ、あぁ…!!えーと…その…」
言葉ん選んでいるのか、しどろもどろになる店長。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!