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#ゲーム
#風見裕也
緑茶は飲めないが紅茶は飲める
――眩しい光が収まると、メルヴィナの前にはひとりの老人が現れた。
ヴェルガ教のローブをまとっているが、その表情は――神職者らしからぬ、下卑たものをしている。
「……あなたは?」
メルヴィナは仲間を心配するでもなく、まずは目の前の老人に問い掛けた。
……自覚しているのだ。自分が5人の中で一番、弱いことを。
今この場を、ひとりで生き延びなければならないことを。
「ファファファ……。
我は四戒司祭がひとり、闇使いのオスクロという」
「闇使い……闇属性の、魔法使い?」
「そんなものと同じにするでない!! 我の力は――
魔法よりも根源的な、闇……そのものッ!!」
オスクロが手をかざすと、そこを中心に闇が現れた。
光が遮断された影の部分……ではない。黒い煙のようなもの……でもない。
感覚的に、それが闇なのだと――
……人間ごときが触れてはいけない領域なのだと、身体がそれを、理解してしまっている。
「う……くはっ!?」
メルヴィナの身体が闇に呑まれる。
何かが身体を浸食していく。このままでは……自分が、朽ちていく。
「――う、うわあああ――ッ!!!!」
大声を出して自分を鼓舞し、力のありったけを込めて、異能を使う。
闇属性の魔法ではなく、人間が扱える力……なのであれば、これは異能だ。
それなら自分の、対になる力……光の異能であれば――
「……ほうッ!? 我が闇の力を掻き消しただと!?
お主は……光使いかッ!!」
「はぁ……っ、はぁ……っ」
メルヴィナは息を切らしていた。
いつもの彼女であれば、絶対にしないであろう形相で……オスクロを睨んでいる。
『光の饗宴』は見た目だけの異能ではあるが、本質的には光の力だ。
そのため、水で火を消すように――光で闇を消すことができたのだろう。
……闇に呑まれた腕が痛い。
治癒をすれば元には戻るだろうが、それも……生き延びればだ。
「――光、か。……知っているか?
我らが頭であるダリウス殿も、光の異能を持っているのだ」
オスクロは溜息をついて、声を整える。
「……何故、人々は光を尊ぶのか。何故、闇を尊ばぬのか。
甚だ疑問である。お主はどう思うね?」
「光は……人々の心を照らす。
闇は――人々の心に影を落とす……から」
「然して、暗き夜に心が癒えるのもまた事実。
眩い光に、心砕けるもまた事実」
オスクロの言葉のあと、静かな沈黙が流れる。
「――ふぅむ。お主は浅いのう……。
光の異能こそ持っているが、その様子では、まるで使いこなせてはおるまい?」
オスクロは再び、彼の手から闇を轟かせた。
先ほどよりも細かく、鞭のように――メルヴィナの身体を切り刻んでいく。
刃物のように斬れることは無かった。ただ、黒色の……火傷のような跡が、メルヴィナの肌に残されていった。
痛みに耐えかねたメルヴィナは、咄嗟に光を生み出して、オスクロの闇を打ち払う――
……が、次の瞬間に生み出された闇によって、メルヴィナの光は打ち払われてしまう。
「カッカッカッ! 闇が光に負けるとでも思ったかね?
認めたくは無いが、このふたつは表裏一体。どちらかが一方的に勝るということはないのだよ」
「……そうね。私も……それは、認めたくない」
「ほう? お主は、光こそが強いものだと?」
「いいえ……。確かに闇にも、あなたが言うように……暗い夜に、心を癒すことがあるから――
……たぶん、光も闇も、使い手次第――」
「闇の使い手たる我は、この世界を闇で埋め尽くしてやろう。……滅びの世界とは違う、闇の世界。
光の使い手であるお主は、その力で何を成すのだ?」
メルヴィナは、その答えを持っていない。
だから今、オスクロの問いに答えることができない。
――ドゴッ!
「……ッ!?」
業を煮やしたオスクロが、ふらつくメルヴィナの腹に膝を入れる。
身体の内部が逆流する。息が止まり、呼吸ができない。
老人とはいえ、その脚力は半端なものではなく――メルヴィナはその場に崩れ、倒れてしまった。
「――ただ、お主にも利用価値はあるだろうな。我はダリウス殿にずっと従うわけではない。
いずれ折を見て、我がヴェルガ教を率いていこう。くくくっ、今は壊滅状態……だがな」
オスクロは倒れたメルヴィナに近寄り、膝を突き、静かに右手を差し出した。
「……さぁ、この手を取るがいい。我と共に行こうではないか。
そうすれば……少なからず、我はお主の仲間には手を出さんよ」
メルヴィナはその言葉に、唇を噛みながら……オスクロに、弱々しく手を差し伸べた。
しかしその手は、オスクロの手をすり抜けて、彼の顔へと向かう――
「光の……饗宴ッ!!!!」
瞬間、メルヴィナの指先が強烈に輝いた。
何の効果も持たない、ただの光。しかし、一点に収束させた、メルヴィナの意地――
「ギャアアアアアアーッ!!!!?」
突然の閃光にオスクロは両目を押さえ、後ずさりをしてから、バランスを取れずに転倒した。
――自然の光とは違う、異能による光。
熱などは生まれないため、オスクロには外傷を与えられていない。
「私はまだまだだから……。あなたの言ったこと、これから……考えていきます」
そう言いながら、メルヴィナは部屋の中を探して――木製の杖を手に入れた。
その杖を握り、オスクロを殴る。
「ぎゃっ!? な、何をする……!?
……痛ッ!? おおい!?」
メルヴィナは数度、オスクロを殴り続けたあと……少し困ってから、小さく零した。
「あの……決着の付け方が分からなくて。気絶をさせれば良いんですよね?」
「ぎゃっ!! ぎゃーっ!!
気絶させるなら、ひと思いにやらんかッ!!」
「そんなことを言っても、人を気絶させたことなんて無いんですよッ!!
……あ。もしかしてそろそろ、目が見えるようになりますか? それならまた目潰しを――」
「し、縛るだけ! 縛るだけでいいからッ!!
老人を打つような真似をするんじゃないッ!!」
メルヴィナは素直に、部屋にあったロープでオスクロを縛り上げた。
……そう、メルヴィナは素直でいい子なのだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――眩しい光が収まると、ガルドの前にはひとりの女が現れた。
ヴェルガ教のローブはまとっておらず、カジノにでもいそうなバニーガールの姿をしている。
「何だ、お前は?」
「えー? 第一声がそれ? 私は四戒司祭、爆炎使いのプラミアよ!」
「ふむ……。魔法使いには見えないが、異能者か?」
ガルドはプラミアの答えも聞かずに、ズンズンと彼女に近付いていく。
「ちょ、ちょっと!? 私は知能派なんだから――」
プラミアの制止を聞かず、ガルドは拳に力を入れて、彼女を思い切りぶん殴った。
今は何より、フィオナを助けなければいけない。アリアの元に戻らなければいけない。
プラミアは後ろに飛んで攻撃の衝撃を逃がしたが、再び距離を詰められていく。
「ああ、もう! 最悪の野蛮人に当たっちゃったわね。
いいわ、それなら私の異能を見せてあげる――」
プラミアが両手を広げると、ガルドは大きな透明な檻に囚われた。
身体を縛り付けるようなものではないが、正六面体の領域で囲まれてしまう。
「これは……バリアか?」
ガルドが透明な壁を軽く叩くと、何の音も響かなかった。
「残念~。逆よ、逆。これは、あなたを捕らえる檻♪」
「オレを、閉じ込める気か?」
「そうじゃないの。これは、あなたを楽しませるためのモノ♪」
プラミアが指を鳴らすと、ガルドの前に宝箱が2つ現れた。
「宝箱のどちらかは、爆発トラップが入っているわ♪
3回連続で別の方を開けたら、あなたの勝ち。
……それ以外は、私の勝ち。ふふふ、面白いでしょう? 私の異能、『1/8の解放』――」
――ドカーンッ!!
「……へ?」
プラミアの目の前では、正六面体の檻の中に、煙が満ちている。
何の駆け引きもなく、ガルドが宝箱を開けてしまったのだ。
「この程度ならいけるな」
――ドカーンッ!!
――ドカーンッ!!
3回の爆発のあと、正六面体の領域は消えてしまった。
プラミアの目の前では、『狂戦士化』で巨大になったガルドがゆっくりと立ち上がってくる。
「え、えっと……。ずるいわよ!?
私の戦い方は、こういうんじゃないのッ!!」
「知るか」
『狂戦士化』の力が乗った拳が、今度はプラミアを直撃する。
プラミアは宙に飛ばされ、壁に叩き付けられて、そのまま床にボトリと落ちた。
「――時間を無駄にしたな。
外の様子を見るに……ここは4階か。まず、アリアさんと合流しよう」
ガルドは部屋から出て、3階の謁見の間を目指した。
コメント
1件
メルヴィナ、すごく成長してましたね…。光の力で闇と対峙するシーン、特に「光の饗宴」で目くらましをして杖で殴るところ、思わず「やった!」と声が出ました。彼女が「決着の付け方が分からなくて」って困るのも、本当に素直でいい子だなあって。オスクロの「縛るだけでいい!」のやりとり、笑っちゃいました。ガルドの豪快な戦い方との対比も良かったです。一気に読めました🤍