無陀野
「こっちか?」
真澄
「あの部屋だな」
そう小声で話しながら、5人はある部屋を覗いていた…
そこには、神の子、一ノ瀬四季と、ここにはいないはずだった唾切がいた、、
唾切
「目隠し、とるね」
四季
「ん…」
そう言って目を開いた四季…
長いまつ毛と、今日の晴天のような青く綺麗な目が見えた。美しく、可愛げのある大きな目…けれど、ハイライトはない…
目元には古い切り傷のようなものがあった
唾切
「動かないでね…髪の毛とくから」
四季
「いつも、ありがと…」
唾切
「いいよ、僕はお世話を任されている。髪をとくくらい当たり前さ」
唾切はそう喋りながら、四季の美しく長い髪を丁寧に、優しく触れながらくしでとく
四季
「そういえば…今日、唾切と一緒に、住んでる人が来てたんでしょ?見てみたかったなぁ」
唾切
「そうだね…」
四季
「…どうした?」
唾切
「いや、何もない…」
そう言いながら、唾切は四季の目元の傷を撫でた。まるで割れ物にでも触れるかのように…
四季
「そっかニコ」
そう穏やかに四季は微笑んだ。
嗚呼、この顔を見ると落ち着く…君はまだ生きている。それがどれだけ僕は嬉しいか…君が生きて、こうやって僕に笑みを向けてくれる事がどれだけ幸せな事か…
そう、唾切も四季に惚れているのである。
数年前
**
**
**
唾切
「(なんでこんな村に…)」
親
「今日からここに住む、異論は認めない。お前に拒否権はないからな」
唾切
「はい…」
親
「それと、神の子ってやつの世話をお前に任せる。実験では役に立てないんだ、せいぜいそっちで努力する事だ」
唾切
「わかりました…」
唾切の親は研究者だ。
周りからは“研究に取り憑かれた”なんて言われるほどに研究を第一に考え、朝から晩までずっと研究していた。
家に帰ってくる事は少なかった。
昔、小学生だった唾切も研究所に連れて行くなどし、学ばせていた。
だが、小学生相手にこの実験の数値は?正しい公式は?なんて聞いたところでその言葉自体わからないゆえ、何も答えられなかった…
中学になった今では少しずつ分かるようにはなってきたが、親が出してくる問題は高校生以上…というか、大人に聞いてもごく少数しかわからない事ばかり。
それを知っているはずなのに、わざとそればかり唾切に聞き、答えられないたびに「役立たず」「もっと勉強しろ」そう言って責め立てていた。
唾切
「(もう慣れた事だ…)」
村に来てから、神の子に会ったのはすぐの事だった。
四季
「あれ…君迷子?」
本殿に呼ばれ、長い廊下を歩いているとゆっくりと、優しい声で迷子かと聞いてきた事が、僕と四季の出会いだった。その時から、四季は綺麗な白い肌と青い髪、吸い込まれるような目を持っていた。
けれど目は少し霞んでいた…なのに、美しいと思ってしまうのが不思議で仕方がなかった。そして、まだ切り傷はついていない
唾切
「いいえ…僕はただ神の子の世話を任されまして、今探しているんです」
四季
「え…」
四季は固まった。
さっきまでの優しい声とは違い、少し低く、暗い声だった…
四季
「君って、中学生…だよね?」
そう問いかける声はどこか震えていた。
唾切
「そうだけど…」
四季
「ごめんねボソ」
唾切
「え…なんて?」
四季
「ううん!なんでもない…君、名前は?」
唾切
「僕の名前は唾切…君の名前は?(さっきの声とは随分違う)」
四季
「えっと…一ノ瀬四季だよ」
唾切
「!?え…四季って、神の子の名前じゃないか」
四季
「うん…俺は神の子って呼ばれてる。」
唾切
「失礼しました。そうとは知らずペコ」
四季
「あ、頭あげて?あんまり歳も変わらないからさ…友達って言うのかな、、喋りやすい喋り方でいいよ」
唾切
「いや、でも」
四季
「唾切くんの事は聞いてる…俺は怒鳴ったり怒ったりしないから、安心してね。 」
唾切
「そう、か…」
四季
「うん、だから、四季って呼んで欲しいな」
唾切
「わかった…僕のことも唾切と呼んでくれ」
四季
「うん…これからよろしくね“唾切”」
唾切
「ああ…」
四季
「唾切って、親の事嫌い?」
唾切
「どうだろう…」
四季
「…辛かったら言ってね。」
唾切
「ッ〜…」
四季
「…(言えないよね。君はきっと優しい子だから…)」
ギュッ
四季は小さく華奢な体で、自分よりも背の高い唾切りを優しく抱きしめた。
唾切
「え…(暖かい、、)」
四季
「ニコ 俺は、みんなに笑ってて欲しいんだ…それは唾切もだ。だから、な?こうやって〜」
四季は小さく柔らかい両手で優しく唾切の口の両端をクイッとあげた
四季
「笑顔〜だよ? (*´﹀`*)」
唾切
「ッ?!////////」
そこで気づいた。自分は今日始めたあったばかりの四季に惚れたのだと…
と言うか、こうやって自分の口に触れられて、首を少し傾けて微笑まれたら好きにならない訳がないのだ。
四季
「あ、あとね…お父様とお母様には気を」
父
「四季、そこで何をしている?」
母
「そうよ。勝手に部屋を出てはダメでしょう?」
四季
「ビクッ す、すみません…すぐ部屋に戻ります」
また、四季の声は震えていた…
父
「おや、君は唾切くんだね。これからこの子をよろしく頼むよ…」
母
「いい子そうね…それじゃ、少し説明をしたいわ、着いてきてちょうだい。四季は戻っておくように」
四季にだけ低い声で、唾切は本当に家族なのか?と不思議に思った。
四季
「またね、唾切ボソ」
そう言って四季はゆっくりと、廊下を歩いて行った。
父
「そこに座ってくれ 」
母
「急にで悪いのだけど。あなたの仕事を詳しく伝えておくわね」
父
「〜〜」
母
「〜〜〜」
話の内容は簡単に言えばこうだ
四季はあまり力がないため、無理をさせない事、絶対目を離さない事。髪の毛や肌の手入れをする事。そして
父
「1番大切なのは、“外に出さないように”気をつけて欲しい」
唾切
「…え」
母
「あの子は危なっかしいの…外へ行ったらどんな事に巻き込まれるか…」
父
「信者が多くなってきたことは嬉しいが、決して全員信じられるかわからない…あの子はすぐに騙されるからダメなんだよ」
唾切
「わかりました…お任せください」
唾切は気づいてしまった。
きっと、四季は苦しんでいると、そして、この親たちは、嘘をついている。
まるで心配しているかのような口ぶりだが、心からの言葉だとは思えない…四季は確かに、初めて会った僕にすらあの態度…
すぐに騙されるかもしれない、だが、僕はそこに惚れた。優しいと思った…それを否定をし、ダメという2文字で済ませている。
それが許せなかった
そこから、時が過ぎるのは早かった…
四季と過ごしていくに連れ、より想いは強く確かなものになった
四季
「唾切、これあげる」
ある時そうやって言って四季が黄色やオレンジの糸を使ったミサンガのような物を渡してきた
唾切
「これは…」
四季
「それはね、ミサンガっていうの。これはお守り!黄色とかオレンジは、平和だったり希望の色って聞いた事があるから…作ったんだぁ」
唾切
「いいのかい?もらって」
四季
「うん!あと、ミサンガは、切れたら願いが叶うって言うのがあるんだって…唾切、願いある?」
唾切
「願い…今はないかな?」
四季
「なら、願いが見つかった時に付けてね!」
唾切
「ああ…」
願いはあった、四季とずっと一緒にいたい。
けれど、この願いが叶ったとしても、きっと四季を縛ってしまう。今の四季の親たちと同じように、四季の自由を奪ってしまう気がした。もし、四季がそう思っていなくても、親と同じ…そんな罪悪感でこのミサンガをそめたくなかったのだ
それからも、四季と他愛の無い話を良くしていた…ミサンガをつけなくても、今の生活が続くと
ミサンガをもらってから、まだ願いを決めれずつけられずにいた時…
なんとなくだが、廊下を歩いて四季の部屋へ向かっていた…
障子が少し開いていた…なぜだか嫌な予感がしてたまらなかった。
少し早歩きで四季の部屋に近づき、障子を開けると1人の男と、押し倒されて首を絞められ目元から血を流している四季がいた…
四季
「つば、きり…助けてッ」
消えそうな声で名前を呼ばれた時、自分の心の奥底にしまった何かが、込み上げてくる事がわかった
唾切
「なに、やってるんですか?」
唾切の低い声は響いた。
するとその男は
男
「こいつの目は高く売れそうだったからだよッ!!邪魔すんなよクソガキ」
唾切
「…」
唾切は無言のままそいつを蹴って四季から離し、首を絞めた
男
「アッガッ」
グググと首を絞める力が増してゆく、唾切の額には血管の筋が浮き出ていた…
四季
「ゲホッゲホッ つ、ばきり」
名前を呼ばれ、我に帰る
パッと離し、四季にすぐに近づき抱きしめた
四季
「唾切、、、」
唾切
「ごめん…守れなくて、」
四季
「大丈夫、唾切のせいじゃ無い、、」
ダッダッダッ
男は大急ぎで逃げて行った…唾切は追いかけようとしない。なぜなら、あの男は処分されると分かっていたから、きっとあいつは四季の両親が用意した。
許しがなければ、あんな信者の服装もしていない人物が入れるわけもない…何より、この前両親が、四季を金にしようと企んでいることを聞いたからだ…
この事があってから、一時期四季は笑わなかった。目元には切り傷、首には絞められた後、そこで決めた。
絶対に次は守ると、そして、ミサンガをつけた。僕の願いは、四季が心から笑えて平和な日常が送れますように そう願いながらミサンガを手首につけた。
すると
四季
「ミサンガ、つけてくれたんだね…いつか、その願い事が叶う時がきますように」
唾切
「そうだね…(絶対叶えてみせる)」
これが、昔の話…僕が四季に惚れた時と、その後の目隠しをしている秘密…
四季は、外へ出られない。
だから、僕は高校へ行って、どんな事があったかを教えていた。
故に四季の肌は白く、日に焼けることがなかった。
食べ物も、少ししか食べず、健康とは言えない…それでも四季は今でも笑っている。
みんなが幸せでいるために…今日も優しく、作り笑いなのか、心からなのかわからない笑顔を…
奪われたくない、奪わせる訳にはいかない…
だから人を選ぶ、最近は、同じ家の人間をよく見ていると、四季と似ている過去を持った者もいれば、それに寄り添える者もいた…一族に会うのは嫌だ、今でも許していないし、腹を立てている、が四季に報告と会いに行きたかったから、ちょうど学校の休みの今…僕は本殿へ向かった…まさかあいつらに会うとは知らず
こんな感じかな?
上手く伝わってるといいけど…
話ごちゃごちゃしてたらごめんなさい!
4000文字超えてるし…
呼んでいる方々が飽きなければ良いのですが…
それでは、また次回見ていただけると嬉しいです!
コメント
9件
唾切さんと四季君にそんな関係性があったとは… 唾切さん、優しすぎない!? 惚れた弱みとはいえ四季君が行動の主軸になっちゃってない!?(勝手な解釈) だから四季君は目を隠してたのか… ってか親ぁ!酷いどころじゃないじゃん…四季君も唾切さんもめちゃめちゃに幸せになって欲しい…
!四季くん…辛いのに笑顔見せれるのは、すごいよ 唾切が、四季のことを大切に思って守ろうってしているのが、めっちゃかっこよかった! …ちょっとクソ野郎どもは、そうじしてくるね〜