「ん…ここは…?」
ふと目を開けると知らない部屋にいた。正確には、知っているはずだけど思い出せない。
周りを軽く見渡してみると、手元にはメモ張、枕元には日記が置かれていて、そのどちらにも沢山の付箋が貼られていた。
ひとまず、1番近くにあったメモ帳をペラペラ見て見ることにした。すると、”鈴夏“の事について色々書かれていることがわかった。
鈴夏には4人の兄弟がいること、過去の怪我が原因で時々記憶が曖昧になってしまうということ、絵を描くことが好きだということ、好きな人がいるということ…。
読み進めていくうちにその鈴夏が自分だとわかってきた。メモに書いてあった”記憶が曖昧”というのは、きっとこの事だろう。
昨日までのボクのために、次のボクに引き継ぐ準備をしていかないと…。
とりあえず、家族の元へ向かおう。時計を見るともう10時になる頃だった。心配をかけてしまったらどうしよう…。
「えっと…お、おはよ…!」
キッチンに居た姉…いや、兄に声をかけてみた。
すると、幽霊でも見たかのように驚き、目を見開いて固まっていた。何か可笑しかったのかな…それとも顔に何か付いているのだろうか。
「鈴夏…?あっ?あ〜…なるほど」
勝手に納得されても困る。
本当になんなんだろう…ボク、変なこと言った?
「お前、記憶とんだろ?」
「えっ…!?なんで…」
「やっぱり、鈴夏がこんなに早く起きるなんておかしいと思った」
笑いながら言う兄。今10時だけど…これでも早い方なんだ…。
しばらくして兄…いや、殺鬼が朝食を作って来てくれた。どれも美味しそうで早く食べたくて仕方がなかった。
そして、殺鬼はボクが朝ごはんを食べている間に家族のことやボクのこと、殺鬼自身の事を話してくれた。
ボクと血の繋がりのある家族は、姉である鈴と、鈴の弟でボクの兄の鈴斗の二人。そして、ボクと鈴斗の二人と鈴は父親が違うため、少し血が離れている…との事。
殺鬼と、その兄の屍暗はボクとは血の繋がりが無いそうだ。
正直、何が何だか意味がわからなかった。
ただ、おかげで少しだけ思い出してきた気がする。
全て話し終えた後はしばらく話したりゴロゴロしてのんびり過ごした。
殺鬼兄は面白くて優しくて…ちょこっと怒りっぽい所もあるけど、話しててとっても楽しい。
他の兄弟はどんな感じだったっけな、早く会いたいな。みんなのこと、ちゃんとずっと覚えていたい。忘れたくないし、忘れたくなかった。
いつか治る日は来るのだろうか…。
コメント
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読みました! 面白かったです