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「ペリメトル・プログラム」。
1月の凍てつく雪原で最後の敗北を喫した彼らは、最悪の一手を発する。
2035年__今からちょうど半世紀前。
シベリアの奥地から次々と宇宙空間へ放たれた弾道ミサイルは、各々の目標へ向けて落下を始める。
ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコ。
ロンドン、パリ、ベルリン。
イスタンブール、テヘラン、ドバイ。
東京、ソウル、北京、香港、上海。
__その他、世界の各主要都市合計24。
音速を遥かに超える速度で雨霰のように降ってくる「死の槍」になすすべなく、それは世界の中核をなす大都市を悉く焼き尽くした。
世界人口90億人のうち12億人は着弾時の熱線で「蒸発」もしくは爆風により焼死。脅威はそれだけではなかった。
かろうじて直接の死は免れたものの、放射線を直に浴びた数億人、数十億人の人々の身体は蝕まれ続けた。その上、世界中での同時核爆発による灰はジェット気流に乗り世界中を対流。
「死の灰」「死の雨」として厄災後の地球を容赦なく破壊していく。
2085年現在、世界の人口は27億人にまで減少。
通称、「賽投げの厄災」である。
世界中を支配していた「国家」という共同体基準は、すでに朽ち果てた不安定な足場に今更気づいたかのように次々と崩壊して行った。そして世界は新たな火種をも産む。
エネルギー物質「プリズム」。
核兵器の超高温の熱線や放射線が都市のコンクリートやガラスを溶かし、その内部構造を急激に変化させる。結果として生まれたのは、透明で虹色に輝き、光を分化する特性を持つ半固体半液体の新物質であった。
火をつけると超高温の青白い光を放ち、同質量の石油に対し数千倍という圧倒的エネルギーを発生させる夢のエネルギー資源__。
「賽投げ」が産んだ最悪の副産物はその日、新世界の火種として確かに地獄の産声を上げたのである。