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【irxs】医者パロ

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【irxs】医者パロ

38 - 第37話 「そんな珍しいものが2つも同日に見られるわけないじゃん」

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2026年02月07日

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こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります

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ご本人様方とは一切関係ありません

モブ視点

昨年別サイトで投稿したクリスマスの医者パロです






「ないこ先生!これ、いい加減に何とかなりません!?」



呆れたような…怒ったような声が宙を舞った。

そんな声をかけられた当の本人は、白衣から覗く首を竦めて「すみませーん」と悪びれた様子もなく応じている。

それから近くにいた私の方を振り返り、「…不可抗力じゃんね」と拗ねたように同意を求めてくるものだから、思わず笑ってしまった。



ないこ先生に注意をしたのは、この科の外来担当の看護師長だ。

診察室のすぐ裏の廊下からの声は割と響いていて、パーテーションで仕切られただけの隣の部屋の看護師やナオ先生の苦笑いも聞こえてきた。

今ちょうどないこ先生もナオ先生も診察が一時中断したところで、患者さんに聞こえていないのだけが救いだ。



師長が怒っている原因は、裏廊下にずらりと並べられたプレゼントの数々だ。

今日はクリスマス。

午前中から、診察にやって来た患者さんがないこ先生に差し出していったもの。

もちろん先生はやんわりと断るのだけど、患者さんたちはそんなことでは引かず、先生の手にほぼほぼ無理矢理押し付けていった。



午前だけでこの量だから、この後午後の診察もあるとなったらどうなるんだろう。

廊下に並べられたそれらは、確かに働く看護師の動線の邪魔になりがちではある。

でもないこ先生が言うように、先生にとってそれは「不可抗力」以外の何物でもない。

ないこ先生だって、本人が意図したことでも希望したことでもないんだから。



初診患者さんはもちろん別として、予約ありの常連患者さんからはこういった贈り物を受けることは少なくない。

一旦は「お気持ちだけ」と答えるけれど、それ以上押されてしまっては厚意を無下にはできないんだろう。

…とは言っても、クリスマスだからとこんなにたくさんのプレゼントを受けるのはないこ先生だからだろう。

他の診察室でこれほどまでの事態はあまり目にしたことがない。



「午後の診察始まるまでに、何とかしてくださいね」

「はいはいはいはい分かりました、っと」



私たちのような「医師のアシスタント」という立場では、もちろん先生には頭が上がらない。

そんな医師に対してもこう強く出られるのだから、看護師長って本当に強い。

まるでお母さんと注意される小学生男子みたいで、2人のやり取りに思わず笑ってしまった。



そんな私を振り返り、ないこ先生が「相田さん」と声をかけてくる。

「はい」と返事をすると、山積みのプレゼントを長い指で指し示した。



「好きなの持って行ってくれる? 隣の診療科のアシスタントの子たちにも配っちゃって。あとうちの科の受付さんたちにも」

「え、いいんですか?」

「いいよ、俺一人じゃこれ食いきれないし。早く片付けないと怒られるし」



近くで仁王立ちしている師長にも聞こえる声で言ってから、ないこ先生は近くにいた別の看護師にも声をかける。



「小林さん、看護師さんたちにも配ってくれる? あと病棟のナースステーションにも持っていって」

「わーいつもありがとうございます!」



うきうきと弾んだ声でお礼を言った看護師の小林さんに手招きされ、私も一度診察室から廊下へと出た。

そこには有名店の高級菓子や、大行列に並ばないと買えないなんて噂のお菓子までが所狭しと並んでいた。

まるで宝の山みたいで、小林さんときゃっきゃしながら物色する。



「ないこ先生、すごい! クールバッグに入ったクリスマスオードブルもありますよ」



小林さんが声をかけると、ないこ先生は「まじ?」と苦笑い気味に言った。

それもデパ地下の有名店のバッグに入っている。

大きさから言って、一人分の高級オードブルといったところだろうか。



「じゃあそれは傷みそうで怖いから俺が後で食べるわ」

「はーい取っておきますねー。冷蔵庫に入れてきます」



元気に応じてから、小林さんが「!うわ!」とまた声を上げた。

診察室に戻って電子カルテを開き始めていたないこ先生が、「今度は何」と言わんばかりに振り返る。



「ないこ先生!これは取っておいた方がいいですよ!これ、京都にしかお店がない上に、予約しようとしても1年先までいっぱいで全然買えないって噂のチョコ…!!」

「へぇ…患者さんもそんなのよく買えたなぁ」



感心したように呟いて、ないこ先生は診察室のドクターチェアをぎっと音を立てて揺らした。



「これは先生が食べた方がいいですよ!一生に一度食べられるかどうかですから!絶対!」

「大げさだなぁ…」



苦笑まじりに呟いたけれど、ないこ先生はふと動きを止めた。

何か思案するように目線を天井に這わせた後、もう一度こちらを振り向く。



「あーじゃあごめん、それも取っておいて。チョコ好きなやついるんだよね」

「そうなんですね。絶対喜びますよ…!」



ないこ先生用のオードブルと高級チョコの袋を、そっと横によける。

それからまたうきうきと物色し始めた小林さんと私を、看護師長が「早くしなさい」と言わんばかりに腕組みして見下ろしていた。






身近なアシスタントや事務の人たちに配っても、まだお菓子はたくさん残っている。

さてどうしようと、紙袋をいくつも持ったまま退勤時刻を迎えてしまった私は、更衣室で同期に出くわした。



向こうも私に気づいて「おつかれー」と声をかけてくる。

着替えている途中のその同期・長野に軽い挨拶を返して、「あ、そうだ」と紙袋の中のお菓子をいくつか取り出して渡した。



「長野、これもらってー。今日外来診察で患者さんからクリスマスプレゼントの差し入れたくさんもらってさぁ。先生の厚意でおすそわけしてるんだけど、まだなくならなくて」

「え!これテレビで見てめっちゃ食べたかったやつ!いいの!?」



事務の長野は事務室に缶詰状態で診察には関わらないから、こういった差し入れを受けることはまずない。

そのせいか「外来っていいなぁ、おいしいものいっぱいもらえて」なんて俗物的な冗談をこぼしながら、嬉しそうに受け取ってくれる。



「それにしても、そんなに患者さんからプレゼントもらうってどこの先生?」

「外科のないこ先生」

「あーーーー…」


答えた私に、長野は納得したような複雑な声を漏らしながら苦笑いを零した。



「ないこ先生なら納得。モテそうだもん、患者さんに」

「でしょ。まだいっぱいあるから、明日事務室の皆にも配ってー」

「いいの?やった。でもこんなにもらっちゃって、ないこ先生の分はちゃんと取ってあるの?」



袋ごと押し付けると、そんな返事が返ってきた。

ロッカーを開けて私も着替えを始めながら、うん、と頷く。



「なんかデパ地下の高級オードブルと、京都のなかなか買えないって噂のチョコだけでいいんだって」

「へぇ」

「やーでもねぇ、あのチョコは多分違うなぁ」

「『違う』って?」



私の言葉を繰り返しながら尋ねてきた長野に、にっと笑って返す。



「ないこ先生、『チョコ好きなやついるから』って言ってたんだよね。自分用じゃなくてその人にあげるんじゃないかな。しかもあの口ぶりは恋人とみた!」

「…へぇ」



長野のリアクションは薄めだった気がしたけれど、さして気にも留めず私は手早く着替えを終わらせた。

それから2人並んで一緒に更衣室を出る。

駅まではどうせ同じ帰り道だからと、院内を出口に向かって歩き始めた。

その途中、向こうの方から背の高いシルエットがこちらに向かってくるのに気づく。



長身に青い髪…あの目立つ容姿は、小児科のいふ先生だ。

私は直接絡んだことはないけれど、院内でも人気の先生だから噂はよく耳にする。

悪い話を一度も聞いたことがないくらいに評判のいい先生だ。



「おつかれさまです」



長野と一緒に、すれ違う瞬間ぺこりと頭を下げた。

そんな私たちに、にこりと微笑みながら「おつかれさまです」と優しく穏やかな声音が返ってくる。

物腰が柔らかく顔がいいだけじゃない。

…声もよすぎる。



「…ん?」



すれ違いざま、いふ先生の手へと視線が落ちた。

その手には、見たことのある紙袋がぶら下がっている。



「どうしたの?」



長野がそんな私に気づいて声をかけてきた。

その頃には足の長いいふ先生はもうかなり離れた場所まで進んで行っていて、その後ろ姿を凝視する。



「いや…いふ先生が持ってるあの紙袋、あの例のお店のやつだなと思って」

「例の?」

「さっき話したでしょ。ないこ先生が患者さんからもらってた、京都のなかなか買えないお店の高級チョコ。恋人にあげるんじゃないかなーって言ってたやつ」



いふ先生もクリスマスの今日、患者さんかその家族からもらったのだろうか。

それにしても一年以上先まで予約でいっぱいで買えないくらい珍しいものなのに、今日だけで2回も見かけるのすごくない?



そう思った瞬間、顔を上げると、黙したまま変な顔をしている長野に気づいた。



「……え、なにその顔」



唇をぎゅっと引き結んで眉間に皺を寄せている。

だけどそれは、不機嫌とか不快の表情ではなさそうだった。

どちらかというと、にやにや笑ってしまいそうなのを一生懸命こらえているような…。



「なんでもない」



そんな不可思議な顔をした長野の思考なんて読み取れるはずもなく、私は大きく首を捻ったけれど、結局その答えを得ることはなかった。




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