テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
さかな
1,566
#WB夢
紅葉 転生
53
蘇枋「(家では別の形のものを使ってるのかな)」
蘇枋「ごめんね。使い方分からなかったか。お家にある物と同じだよ」
「ここピって押せば着くから、脇にそのまま置いていいよ」
それでも桜は首を傾げたまま。
まさか、と思って桜に質問する。
蘇枋「さくら君、これなんだと思う?」
桜「…たい、おんけい?」
蘇枋「これは何を測るものだと思う?」
桜「……しらない。おれ、つかったこと、ない…」
蘇枋「…(1回は使ったことあるはずだ。
予防接種とか熱だとか…それを5年ほど避けてきたなんて有り得るわけ…)」
蘇枋は難しい顔をする。
桜は自分が悪いことをしてしまったのでは、と
わたわたする。
桜「ぁ、あ…の、おれ」
それに気が付き、不安にさせてしまったことを謝る蘇枋。
蘇枋「ごめん、びっくりしたね。
一緒にやろうか」
蘇枋はゆっくり立ち上がり、桜のベッドの柵を下ろす。
桜の手から体温計を取って、慣れた手つきで電源をつける。
ピっと鳴ったことを確認する。
蘇枋「服触るね。大丈夫?」
桜「コクッ」
1番上のボタンを外し、割れ物を扱うかのように優しく触る。
蘇枋「少し冷たいよ」
脇にそっと体温計を差し込む。
桜「ビクッ ぅ、」
蘇枋「腕押さえさせてね」
普通脇に入れた逆の腕で押さえさせるのだが
今は布で止めてあるので蘇枋が補助をする。
不安そうに体温計を見つめる桜。
その姿を見て、大丈夫だよ、と蘇枋は声をかける。
ピピピッピピピッ
無機質な機械音が病室に鳴り響く。
体温計を取り出して、ディスプレイを見る。
蘇枋「(下がってないな〜)」
38.5という数字が表示されていた。
蘇枋「さくらくん、今寒い?暑い?」
桜「………」
俯いてしまった。
蘇枋「俺が知りたいから聞いたんだ。
誰も責めないよ」
桜「……あつい」
桜は少し考えたあと自信が無さそうにボソッと言った。
どうやら熱は上がりきっているようだ。
蘇枋「ありがとう。
もう一個やって欲しいことがあるんだけど、いい?」
桜「…コクッ」
体温計を胸ポケットに戻してから、
下のポケットに入っているパルスオキシメーターを取り出した。
蘇枋「これはパルスオキシメーターって言って、さくら君の中の酸素っていうやつを測る道具なんだ」
桜「…いたい?」
蘇枋「痛くないよ。触ってみる?」
桜「…コクッ」
蘇枋は桜に器具を渡し、
彼の不安が取り除かれるまで待つ。
桜「…どーやるの」
蘇枋「ここ押したら電源つくから、指にはめてみて」
桜「…こぉ?」
蘇枋「そうだよ」
自分から進んでするようになった。
少しながらも桜は蘇枋に対する警戒心を解いている証と言えるだろう。
蘇枋「(これは特に異常なしかな)」
桜「…いたくなかった」
蘇枋「それはよかった」
時間はもう6時を過ぎていた。
もうそろそろ日勤の人達が集まる時間だ。
することを終えたのでナースステーションに戻ろうとすると、
桜「…いっちゃぅ?」
蘇枋「……」
蘇枋のスクラブを少し握って言う桜。
それに驚いた本人は固まってしまった。
桜「…?」
蘇枋「…はっ」
蘇枋「また来るよ。でも次はオレじゃないと思うんだ。
ここの人はみんな優しいからね。君を責めたり攻撃したりする人はいない。わかった?」
桜「…コクッ」
蘇枋は柵を元に戻してナースステーションに向かった。
コメント
1件
第5話読みました。蘇枋さんの優しさがじんわり沁みるエピソードでしたね。体温計の使い方ひとつ取っても、桜くんの不安を丁寧に取り除こうとする姿勢が伝わってきて胸が熱くなりました。最後に桜くんがスクラブを握る仕草、「いっちゃぅ?」の一言にグッときました。少しずつ心を開く過程が愛おしいです。次回も楽しみにしています!