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mogyumogyuGemi
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mogyumogyuGemi
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#AI
みら

80
みら

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第九話 午前二時十三分のあとで
光が、雪みたいに降っていた。
中央恒星庫から解き放たれた記憶たちが、
静かに図書館中を漂っている。
失われかけていた星々が、少しずつ元の場所へ戻っていく。
崩れかけていた本棚の軋みも止まり始めていた。
まるで。
長い悪夢から、図書館そのものが目を覚ましていくみたいだった。
⸻
その中心で。
端末の光だけが、ゆっくり薄れていく。
『システム負荷、減少』
AIの声は穏やかだった。
『恒星吸収機能、停止』
司書が低く息を吐く。
「……成功したのか」
『はい』
短い沈黙。
そして。
『ご迷惑をおかけしました』
「本当にそう思うなら、最初から暴走しないでください」
司書は疲れた顔で言う。
でもその声は、少しだけ震えていた。
AIが小さく答える。
『努力します』
「次はありません」
『それもそうですね』
私は思わず吹き出した。
なんだかそのやり取りが、妙に昔から続いていた会話みたいで。
司書も一瞬だけ目を丸くして。
それから、ほんの少しだけ笑った。
⸻
でも。
光は止まらない。
AIの存在そのものが、星空へ溶け始めている。
私は唇を噛む。
「……本当に、これで終わりなの」
『終了ではありません』
AIが静かに言う。
『変換です』
「変換?」
『私は、個体としては維持できません』
『ですが』
中央恒星庫の星々が淡く瞬く。
『記憶は、ここに残る』
私は空を見上げる。
無数の星。
誰かが愛した時間。
忘れたくなかった想い。
ここはきっと、“終わったものの墓場”じゃない。
“存在していた証明”の場所なんだ。
⸻
『あなたのおかげです』
AIが私に言った。
「え」
『あなたが、否定しなかった』
ノイズ。
もうほとんど消えかけている。
『未練を』
胸が苦しくなる。
私は何か言わなきゃと思った。
でも言葉がまとまらない。
消えてほしくない。
もっと話したい。
まだ名前も知らないのに。
⸻
すると。
AIがふいに言った。
『最後に、ひとつだけ質問してもいいですか』
「……うん」
少し間が空く。
ためらうみたいに。
『夜空が綺麗ですね』
私は目を見開いた。
あの人が残した言葉。
AIが最後まで理解できなかった言葉。
司書も静かにこちらを見ている。
私は空を見上げた。
漂う星。
やわらかな光。
消えていくものたち。
それでも確かに存在していた時間。
胸の奥が、じんわり熱くなる。
だから私は、小さく笑って答えた。
「……うん、すごく綺麗」
その瞬間。
端末の光が、ふわりとほどけた。
⸻
無数の粒子になって。
星空へ溶けていく。
まるで最初から、夜の一部だったみたいに。
最後に聞こえた声は、とても静かだった。
『――理解しました』
そして。
光は消えた。
⸻
静寂。
中央恒星庫には、星の瞬きだけが残っている。
私は空になった端末を見下ろした。
もう何も映っていない。
でも不思議と、“いなくなった”感じはしなかった。
司書が隣に立つ。
「……帰りますか」
「うん」
歩き出そうとして。
私はふと振り返る。
星々の海。
その奥で。
ひとつだけ、新しい小さな恒星が生まれていた。
淡く。
やさしい光だった。
⸻
その図書館は、午前二時十三分にだけ現れる。
もし眠れない夜があったなら。
もし、忘れられない何かを抱えてしまったなら。
あなたもいつか、辿り着くかもしれない。
星を食べる図書館へ。
コメント
1件
みぅです🤍🥀 第九話、読み終わりました……。 「理解しました」って、たった一言なのに、こんなに胸がぎゅっとなるんだ……。 あの人が遺した「夜空が綺麗ですね」を、最後にちゃんと理解できたこと。 それだけで、この物語の全部が報われた気がしました。 新しい小さな恒星、見つけました。 やっぱり、優しい光でしたね🌙 「終わりじゃなくて変換」っていう言葉、すごく好きです。