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此奴と会ったのはほんとに偶然だ。明らかに遊んできたであろうこの男、閃堂秋人。会ったんなら挨拶しろやら、そのままお前と話したいと言われ近くのカフェで話すことになった。 お昼時のせいかカフェは混んでいてテーブル席が無い為、2人席のソファに座ることになった。
そういえばふと思った事がある。
こいつ、よく見たらピアス穴あるなと。顔とかよく見てはいたが、耳をふと見たときに見にくいが空いてるのが見えた。
「おい、なんだよ。まじまじと見て。すっげぇ恥ずかしいんだけど…」
「……。」
「え、ちょっとなんか言えって!ゴミか何か着いてる…?」
なんて言おうかなと思って黙ってただけなんだが、凄いテンパってるな。ちょっと可愛いと思っちまったじゃねぇか。
「いや、可愛いなと思って」
「はぁ!?」
咄嗟で言った言葉がまさかの「可愛い」と言うとは自分でも思わなかった。訂正するか。
「すまん、間違えた。お前ピアス空けてんだなと思ってな 」
そのまま、そいつの耳を触って再確認するが空いてる。試合中とか初めて会った時は気にしてなかったから分からなかったのか。
「あ、あぁ。オフの時とかに着けてるし…ピアスとかつけてるとそれだけでオシャレじなん?」
「まぁ、それもそうだが…」
空けるとしたら普通そうだよなと思いつつ、どんなピアス着けてるのかと気になってしまった。リング系なのか、シンプルな物か、はたまたチェーン系か…と考えながら触ってたら急に手を掴まれた。
「な、なぁ。恥ずかしいからそろそろ触るのやめてくんない?擽ってぇし…」
そんなに長く触ってた感覚はなかったが、此奴からしたら長く感じたのだろうな。
「いや、悪い。触りすぎたな」
「普通に謝られると思ってなかった」
「謝る事位俺にだってできる」
なんだと思ってんだ?まぁ、初対面とかのせいもあるだろうな。
「そ、そうだよな…ごめん」
でも此奴、今日オフなのになんで着けてないんだ?着けてたっておかしくない服装ではあるはずなんだが。
「そういえばなんで今日着けてねぇんだ?オフだろ」
「んぇ?あー…さっきまで愛空達とボーリングしてたからその時邪魔で一旦取ったんだよ。その後絡まっちまってさ…」
ほらと言いながら絡まったピアスを見せてきた。今日付けてたのはチェーン系だったらしく外した後こんがらがってしまい、そのまま外したままだったとの事。
「まぁ、こうなったらなかなか取れないからさ…予備もないし」
ちょっと残念そうな顔するのも可愛いと感じてる自分はどうなんだろうかと不思議に思う。まぁ顔は綺麗系なのは確かなんだが。
「お前もピアス着けてそうなのに着けてないんだな…ちょっと意外」
「そうか?」
「お前、めっちゃお洒落だからさ。着けてるイメージあったんだよね」
いや、お前も充分お洒落してる方だろと返しそうになった。それよりも此奴からしたら俺はピアスしてるイメージあったのか。
「空けたとしても色々大変だからやってねぇだけだ」
「まぁそれは確かに」
さっきまで話してたサッカーの話やら世間話を放っておいてピアスの話になったが、此奴、凄い表情に出やすいなと感じた。見た目通りと言うべきがかなり純粋だから色々と心配になる。メンタル的もそうだが。
ふと外を見た時には夕方でそろそろ帰るかという話になり、席を立ち店を出た。
「それじゃ気をつけて帰れよ」
「お前が気をつけて帰れよ」
「はぁ!?どういう事だそれ!?」
やっぱり此奴、面白いなと思ったと同時に、やっぱり自覚してねぇのか此奴とも思った。あのキャプテンが気にかけるのも納得するレベルだ。
「なんなら送って行くか?」
「んな事必要ねぇよ!恥ずかしい!」
外も夕方なのもあるせいか此奴の顔が赤く見えたのは気の所為か。さぁ、本格的に別れる時にふと聞こえた。
「……さっきの可愛いって言ったのって本気か?」
「は?」
「さっき言ってただろ、俺の事可愛いって……間違えたって言ってたけど本当なのかなと思って…」
これは素直に言っていいものなのか。冗談では無く本当に思っていた事に嘘つく必要があるかと考えた末、伝えてもいいかと思った。
「……あぁ、可愛いと思った」
「ど、何処がだよ!?普通かっこいいって言うべきじゃねぇ!?」
なんで怒られたんだ俺。聞いたのそっちだろと思いつつ、やっぱり言わない方良かったのかと思ったが。
「可愛いなんて初めて言われたんだよ…」
ほんとに小さい声だった。多分聞き返しても同じ言葉は言わないだろうと諦め、別れ言葉を言いようやくホテルへとの帰路に着いた。
次会う時にまで彼奴に合うピアスでも買ってやるかと思い、渡した時の反応を楽しみにしながらホテルへと着いた。
「あんな顔真っ赤にするなら渡した時は茹でダコになってるな」
その言葉は誰にも聞かれる事も無く、空間へと溶け込んで行った。