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1.オールスター
院瀬見は今、とあるビルの目の前にいた。姫野たちを殺した蛇女とモミアゲ男、そしてその仲間がこのビルにいるらしい。特異4課は全員集合しており、その他にも警察の応援が何人か来ている。
「あー…これって私も入んなきゃですかね?」
院瀬見がビルを指さして岸辺に聞いた。
…無言。”行く意外に選択肢はない”とでも言われているかのような気がして、院瀬見はため息をついてビルに入っていった。
「まぁでも、言えば病の悪魔を試すチャンスみてぇなもんだしな」
院瀬見はぼそりと呟く。つい最近院瀬見は新しい悪魔と契約を交わしたばかりだ。
向かった先に、早くもゾンビがいた。
できるだけ気づかれないように一体ずつ狩っていこうと静かに近づいた、その時。
パキ 、と何かを踏んだ音が響き、ゾンビがそれに気づいて一斉に振り向いた。
「おーおー、うじゃうじゃいやがる」
院瀬見はそう言うと、ワイシャツの胸ポケットから医療用のメスのような形をしたものを取り出した。
「甘く見んじゃねぇぞ」
院瀬見はメスをシュッと投げた。
次に瞬きをすると、メスが刺さったゾンビは全員血を吐いて死んでいた。
「こーりゃすげぇ!一瞬でみんな倒しちまった!」
院瀬見がメスを回収する。病の悪魔の話によると、これ以外にも技を発動させる動きはいくつかあるらしい。できるだけゾンビを倒しておこうと、院瀬見はまたメスを投げた。
2.大会
どれくらい時間が経っただろうか。ゾンビもすっかり倒しきってしまった。早川もデンジもいない。いるのは先日知り合った天使…と、ペストマスクを着けた男、蜘蛛のような脚をした女、そして半裸の鮫のような男だけである。院瀬見が外へ出ようとしたその時。
『こちら4課早川、時計館前線路内にて拘束済みの目標発見。応援求む』
ポケットに入れていた無線機に無線が入った。早川の声だ。応援に行こうと院瀬見はビルを出ていった。
「時計館前線路内─ここか…!」
院瀬見は線路に入っていった。そこにはデンジと早川、そしてパンツ一丁で連行される青ざめたモミアゲ男がいた。
「…アイツどうした?」
院瀬見が早川に耳打ちした。
「デンジが金玉蹴った」
「は?」
院瀬見は耳を疑った。訳が分からない。
「早川の先輩もやったぜ。院瀬パイもやれば?」
「なんでだよ」
デンジが目を逸らし、悪びれずに言う。
「姫野先輩の仇討ちっすよ。弾で撃ったんだからタマ打ったほうがいいっしょ」
「なーるほどな…」
院瀬見は空返事だけし、そのままその場を去ろうとした。
「? 院瀬パイやんねーの?」
「バーカ。んな事したって姫野は帰ってこねぇよ。無駄だ」
「ふーん…そう言いながら早パイもやったぜ」
デンジの返答に、院瀬見の歩みがピタリと止まった。後ろでは当の本人である早川が、罰が悪そうに目を逸らしている。
「ハァ……帰るぞ」
意外にも乗り気じゃない院瀬見に早川が驚く。
だが、すぐにその驚きは消えた。
院瀬見は唐突に後ろを振り返って駆け出すと、警察官に取り押さえられて連行されるモミアゲ男の股間を笑顔で思いっきり蹴り上げた。
モミアゲ男は絶叫してぶっ倒れる。苦しむモミアゲ男と、それを「してやったり」といった表情で見下ろす院瀬見を見て、デンジが爆笑し、ついには早川も俯いたまま肩を震えさせていた。
その後、駆けつけた他の警察官に3人揃って怒られたというのは、言うまでもない。
3.仲間と新たな一歩へ
その後、4課メンバーは揃って本部へと戻ってきた。院瀬見はまだ喋ったことのなかった奴に自己紹介した。
「俺、暴力の魔人!とか言っても暴力なんて良いもんじゃないし…皆と楽しくする方が好きだから気軽に話しかけてくれよな!」
まずはペストマスクの男。
「また会ったね…新しい悪魔はどうだった?」
続いて二度目の対面である天使の悪魔。
「…」
次に全く喋らず、黙ってこちらに頭を下げる髪の長い女。
「キャキャキャ!ゾンビ〜!!」
そして床に半分埋まった男。
(いや…キャラ濃…)
院瀬見は天を仰いだ。