拝啓 10年前の私へ
そんな書き出しの手紙を見つけた。
「何、これ?」
私はバリキャリで人生を謳歌している、訳でも無い。
ただの広告代理店に務めるしがない独身OLだ
連日徹夜続きでようやく仕事が一段落した時にデスクの上にぽつんと置いていたこの手紙を見つけた所だ。
好奇心か、それとも徹夜続きで幻想を見ているのではという恐怖心でか私はこの手紙を呼んでいた。
「(何よほんとに、それにこういうのってせめて10年後の私へ。とかでしょ)」
そう思い手紙をデスクに置いたもののやはり手紙の内容が気になり読み進める事にした。
手紙の内容はこうだ。
『拝啓10年前の私へ、どん底状態で辛いよね。どう?当たっているかしら?
けどね、安心してきっと上手くいく、だから今読んでいるこの手紙をしっかりと読んでね、あとは』
ここで文字が途切れている。いや、途切れていると言うよりか濡れて文字が滲んでいる。
「はぁ、意味わかんない、そうよ、どん底状態よ。文句ある?」
溜息を吐きそう言いながら天井を眺め、ふと昔の事を思い出した。
子供の頃から至って平凡で特に取り柄も無い子供だった、運動も勉強も平均的、友達の数も普通。
けどそんな中私の唯一の特技、と言っていいものか分からないが趣味は絵を描くことだった。
絵を描いている時はとても楽しかった、それで大人になったら漫画家やイラストレーターなど絵を描く仕事に就きたいと思っていた。
けど現実は甘くなく気付いたら受験生になり高校、大学を卒業し社会人。
夫も居なければ恋人も居ない、30近い女だ。
その事実に少しショックを受けながらもその手紙を鞄の中にそっと入れて会社を後にした。
コメント
6件
10年後か……こういう未来からのお手紙系いいよな
あこれ多分10年後は成功してるやつだな