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『メロン』
久しぶりに祖母の家へ行った。
冷房の効いた部屋で一息ついたあと、冷蔵庫を開けると、冷えたメロンが入っていた。
「わ!メロンだ!食べていい?」
台所にいた祖母がふと顔を上げて、笑顔で言った。
「ああ、それはダメよ。あの子のだから」
「え、誰の?」
「○○ちゃんのよ。毎年、8月になると来るから」
名前を聞いた瞬間、背中に冷たいものが走った。
それは、3年前の夏、溺れて亡くなった従妹の名前だった。
祖母の家には、毎年同じ日、冷えたメロンがひとつ、なくなっているという。
解説 下にスクロール
解説
祖母は従妹にあげるため、メロンを冷やしていた。しかし、もうすでに亡くなっているのだ。祖母は従妹が亡くなったことに気づいていないのかもしれない。
“大切な人が亡くなった”なんて信じたくない。