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K-Takasaka
153
#K-T
#スクラッチャーズ
#異世界転生
第一ゲームの第二ラウンド開始を告げる鐘が鳴った。
アリーナに残っているのは、メバル、マサカゲ、ミステー、アオノ、カキの五人だけだった。
メバルの左袖は大きく裂けている。幸い、下に着ていた服までは破れていないが、動くたびに布がひらひら揺れていた。
ミステーとアオノは、その袖をじっと見ている。
「……見すぎじゃない?」
メバルが腕を隠した。
「破損箇所の経過観察をしている」
アオノが淡々と答えた。
「経過観察って、そんなに目を輝かせてするもの?」
「メバルちゃんの表情変化も重要だ」
ミステーが真面目に続ける。
「第一ラウンドでは、驚きが四割、怒りが六割だった。次に被弾した場合、恐怖が何割になるか確認したい」
「確認しなくていい!」
メバルは腰を落とし、ボールを一つ拾った。
「そっちが変な観察をするなら、こっちも本気で倒しにいくからね!」
「望むところだ!」
カキが勢いよくボールを構える。
「カキちゃんは普通に戦って!」
「俺は普通だぞ!」
カキが投げたボールは、マサカゲの足元へ飛んだ。
マサカゲは一歩下がってかわす。
「狙いが低い。投げる前に肩が開きすぎている」
「マサカゲ、解説しながら避けるなよ!」
「分析しないと勝てないだろ」
ボールが壁に当たり、跳ね返ってミステーの足元へ転がった。
ミステーはそれを拾わず、メバルを見た。
「メバルちゃんの左袖は、現在も裂け目が広がっている」
「見れば分かるわよ!」
「次の一投で、袖口が完全に分離する可能性がある」
アオノが予測する。
「試さないで!」
メバルが叫んだ。
アオノはボールを拾うと、真剣な顔で狙いを定めた。
「左肩から三十センチ下を狙う。前回の裂け目が、どの方向へ広がるか確認する」
「狙う場所を具体的に言わないで!」
メバルは横へ跳んだ。
ボールは袖をかすめ、裂け目をさらに広げた。袖口が完全に外れ、床へ落ちる。
「破損範囲、拡大」
アオノが頷く。
「想定どおり」
ミステーは、落ちた袖を見つめた。
「左腕が自由になった。これは進化だ」
「服の袖が取れただけよ!」
メバルが怒鳴る。
マサカゲは一瞬、メバルの服を見たあと、すぐに視線をそらした。
「メバル、動きにくくないか?」
「大丈夫。でも、二人を止めて!」
ミステーがマサカゲを指差した。
「今、視線をそらした」
「何?」
「メバルちゃんの服が破けたとき、マサカゲは一秒以内に視線を外した。これは動揺、または配慮だ」
アオノも小型端末に記録する。
「声の高さに変化はない。しかし、返答までの時間が通常より〇・四秒長い」
「お前たち、何を調べているんだ!」
マサカゲが初めて声を荒らげた。
「マサカゲの反応」
ミステーが即答する。
「メバルちゃんの服が破けた際、仲間として心配するのか、責任者として状況を確認するのか、それとも別の感情が発生するのか」
「別の感情って何よ!」
メバルが顔を赤くする。
「そこは本人にも分からない可能性がある」
「分からないままでいいの!」
アオノがボールを拾い上げた。
「追加検証を行う」
「しなくていい!」
アオノが投げる。
メバルは慌ててしゃがんだ。ボールは背後の壁に当たり、そのまま床を転がっていく。
マサカゲが素早く拾い、アオノへ投げ返した。
アオノはかわしたが、ボールは近くの表示板へ直撃した。
画面が一瞬、乱れる。
観察行動が過剰です。
赤い文字が浮かんだ。
「ゲームのシステムにまで注意された!」
メバルが叫ぶ。
「観察行動の過剰とは、具体的にどの程度だ?」
アオノが画面へ尋ねる。
「そこを聞き返さないでよ!」
ミステーは顎に手を当てた。
「つまり、このゲームには観察してはいけない量が設定されている」
「たぶん普通に戦えって意味よ!」
「では、普通に観察する」
「やめて!」
カキが突然、アリーナの隅へ走った。
「見つけたぞ!」
「何を!?」
「床の線だ! ここだけ材質が違う!」
カキがしゃがみ込み、ポケットから金属片を取り出した。
「それ、どこで拾ったの?」
「さっきの壁の欠片」
「持ってきてたの!?」
「少し削った」
「採掘してるじゃない!」
カキが床の線をこじ開けようとした瞬間、アリーナ全体が揺れた。
五人の腕輪が一斉に赤く点滅する。
規定外の床面操作を検知。
床から、黒いボールがさらに四個せり上がってきた。
「増えた!」
マサカゲが叫ぶ。
「ボールが増えるなら、採掘は成功だな!」
「成功じゃない!」
メバルがツッコんだ。
ミステーとアオノは、増えたボールを見たあと、再びメバルへ視線を向けた。
「検証回数が増えた」
ミステーの声が少し弾む。
「衣服の破損段階を、より詳細に記録できる」
アオノも構えた。
「二人とも、まだ下心を隠す気ないの!?」
「下心ではない。研究心だ」
「その言い方をする人は、だいたい下心を疑われるのよ!」
マサカゲがメバルの前に立つ。
「メバルは俺の後ろへ。今度は二人を止める」
「マサカゲ、前に出た。防御行動へ移行した」
ミステーが呟く。
「観察対象として、非常に分かりやすい」
「もう観察をやめろ!」
マサカゲがボールを投げた。
ミステーは避け、アオノが横から投げ返す。
ボールはマサカゲの肩に当たり、上着の一部が裂けた。
「マサカゲちゃん!」
メバルが声を上げる。
「問題ない。まだ動ける」
マサカゲが肩を押さえる。
ミステーとアオノの目が、今度はマサカゲへ向いた。
「マサカゲの破損時反応も記録する」
「対象が増えた」
「やめろ!」
マサカゲが怒鳴る。
メバルはボールを拾い、二人へ向き直った。
「もう許さないからね!」
その表情を見て、アオノが小さく頷く。
「怒りが八割に増加」
ミステーが真剣に記録する。
「観察データとしては良好」
「良好じゃない!」
メバルの投げたボールが、アオノの足元へ迫る。
アオノはぎりぎりでかわしたが、背後の壁に新たな文字が浮かんだ。
第二ラウンド終了まで、残り三十秒。
被弾者の衣服破損が一定量を超えた場合、特別ルールへ移行します。
「特別ルールって何よ!」
メバルが叫ぶ。
ミステーがボールを拾った。
「特別な観察が始まる」
「絶対にろくでもない!」
アオノもボールを構える。
「残り時間で、最後の検証を行う」
マサカゲが前へ出た。
「メバルには当てさせない」
「マサカゲの保護行動を確認」
ミステーが呟く。
「ならば、マサカゲを先に狙う」
「それもやめろ!」
三人の視線が交差する。
そして、終了まで残り二十秒。
アリーナの床に、見たことのない赤い線が浮かび上がった。
線は五人を囲むように広がり、中央で複雑な模様を描いていく。
アオノが表示を確認した。
「次のゲームへの移行準備が始まっている」
カキが目を輝かせる。
「地下に続く道かもしれない!」
「採掘は禁止!」
メバルが叫んだ。
その直後、壁の表示が切り替わった。
第一ゲーム、最終段階へ。
観察者にも、観察される時が来ます。
ミステーとアオノの表情から、初めて余裕が消えた。
メバルはボールを握り直す。
「今度は私が、二人の反応を観察してあげるからね」
終了の鐘が鳴る直前、アリーナの天井がゆっくりと開き始めた。
コメント
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みぅだよ🖤読んだよ、第2話「観察者たちの作戦」。 めっちゃ面白かった〜!ミステーとアオノ、メバルの服の裂け目とか表情の変化を真面目に観察してるのが完全に不気味で笑えた反面「下心じゃなくて研究心」って言い張るところが逆に怪しくてたまらんかったw カキの採掘行動も、マサカゲがメバルを守ろうとするところもそれぞれキャラが立ってて好き。特別ルールの予告で空気一変したラスト、続きすごく気になるよ。