立って私の目の前で歌を歌うリン。歌ってるリンはとても楽しそうに見える。少しだけ絵名に似ている気もしなくもない。
歌い終わって、一息ついたところに話しかける。
「ねえ……リン」
「まふゆ、どうしたの?」
「絵名に遊ぼうって誘われた」
「絵名に?」
一瞬だが、リンの表情が明るくなった気がした。興味があったのだろうか。リンは私の横に座り、少し目を輝かせて質問する。
「いつ遊ぶの?」
「明後日」
「どこで?」
「絵名の家で」
「仲良くする?」
「仲良く……?」
仲良くする。仲良くする……?
仲良く、そもそも絵名と私は仲が良いのだろうか。いきなり家に誘われるくらいなので、悪くはないと思うのだが……よく、絵名は怒っている。これで仲が良いと言えるのかは分からない。
しかし、リンの質問はそうではない。絵名の家に行って仲良くするかどうかを聞かれている。今一度普段の絵名の様子を思い返してみるが、喚いている姿しか想像がつかない。これを一般的に仲が良いと言うのだろうか。
「難しいかもしれない」
「そっか……」
少しだけ悲しそうな顔をしたリン。別に、それが気になったわけではないが……。
「……少なくとも、私は仲が悪いと思ってるわけではないから」
「……」
「うん、だから、大丈夫だとは思うよ」
「ほんと?」
「うん」
「そっか」
足をパタパタさせて、忙しなく動くようになった。嬉しいのか。そこまで嬉しい理由がわからないが、不仲であると良い理由はない。このセカイの住人も、そういうところに気を遣っているのだろうか。
「これから、絵名と会ったら沢山仲良くしてね」
「どうして?」
「喜ぶ人がいるから」
ね?
言葉に重みはなかったが、意思を感じてその言葉に取り敢えず頷いておいた。しかし、仲良くの基準がわからない。
「仲良くって、何をしたら?」
「……うーん、奏は二人でいるだけで喜んでた。話しただけで嬉しそうだった」
どうして奏の話になるのだろうか。私達の仲を危惧して、ということだろうか。
「それなら、十分仲良く出来てるかな。安心していいよ」
「そう、わかった」
「ねえ、どうして奏の話が出てきたの?」
「それは……」
リンは暫く考え込んだ。そして、手で口の前にばってんを作った。
「一応、言わないでおくね」
「……うん、分かった」
興味は特になかったので、私はそれ以上聞かなかった。少ししてリンはまた歌い始めたので、夕飯の時間になるまでそれを聴いていた。