TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

じゃあ、後はどこに行く?

「マックスさんたちはどうするの? 武具屋さんとか行く?」

おお、行きたいな。

「それなら一緒に行きたい」

よし、と馴染みの店があるらしいのでついて行くことにした。

どれほども離れていないその店は、ドールーハの店とは違い大きい。中は冒険者が数人いるみたい。

「よう。元気か」

マックスさんは気軽だね、ここでも。

「おお、来てたのか。で、今日はなんだ?」

「ちょっとこれ見てくれよ」

マックスさんは背中に背負った大剣を店のおじさんに渡す。

「これ、何とやり合ったんだ?」

「いろいろだよ。ここに来る前にもかなりの数のオークを狩った。ここに来る間もだ。おかしくないか、最近。街道沿いに普通にオークやブラッディウルフやフォレストウルフが出るぞ」

「ああ、聞いてる。ちょっとどころか、かなりおかしい。で、今回も護衛か?」

「それもあるけど、街でちょっといろいろあってな。領主様と一緒に陛下に謁見だ」

「謁見だと? ショルダーもか?」

「ああ。他にもいるぞ。そしてこいつもな」

「は? そのちびちゃんもか。冒険者か?」

そうだ、と二人は頷く。

「これでもCランク冒険者だ。ギルマスに言わせりゃBランクでもおかしくない。俺たちもそう思う」

すげぇな、と俺を見る。

なるほど、と何か解ったみたいだけど。

「そっちの従魔も優秀そうだな。二人はいいコンビだろうよ。で、お前の剣だが、そろそろ替え時だぞ。大剣としちゃもう無理だろ。次は折れるぞ」

マジかよーと頭を抱えるマックスさん。ショルダーさんはこの前来た時新調したらしい。

「今回の依頼料が吹っ飛ぶ! はぁ、でも命の値段と考えりゃ安いもんだ。何かいいのがあるか?」

命の値段か。戦っているとき剣が折れれば命取りだよね。そういう考え方が正解なんだろうね。


これは、と壁に掛かった大剣を外したおじさんは差し出した。

うをぉ、すげぇ。

ショルダーさんも興奮してる。

あれ、本当にすごいものみたいだね。でも隣りにあった方がマックスさんには合ってるとおもうけど。

すらりと大剣を引き抜いたマックスさんだけど、首をかしげてる。

少々違和感があるでしょ?

「なあ、ナギ。これどう思う?」

僕に聞くの?

「僕でいいなら言うけど。隣りにあった大剣の方がいいと思うよ。それは少し軽くない?」

「やっぱりそう思うか? 違和感があったんだよ。親父、あっち見せてくれ」

「いいが、高いぞ。やっぱりお前には軽いか。それにそっちのチビ。お前いい眼してるな」

えへへへ、と頭をかいてみせる。

「これいいな。ぴったりだよ、手に馴染む」

そうか、とおじさんは嬉しそうだ。

「で、いくらだ?」

「そこにかいてあるとおりだ。金貨九枚と銀貨五枚」

うえぇぇぇぇぇ~!?

「高いな。少し負けろよ。まあ、俺の命の値段とかかっこいいこと言ったけど、財布と相談しなきゃだろ。なんとかならないか?」

けっ、かっこいいこと言いやがって。そんなつぶやきに続いて、金貨八枚だと言った。ふふふ、結構仲良しだね。

しかたねぇ、それで買うか、と呟くマックスさんは太っ腹だ。本当ならもう少し値切れたかもだけど。

マックスさん、相手は商売人だよ。


クイクイと袖を引っ張ってみる。

「あの剣、いいものだけど鞘に傷があるよ。裏側見てみて?」

小声で言ってみれば、ひっくり返して確認してる。おじさんはチッと舌打ちした。

「お前、今舌打ちしたな。これ、なんの傷だ」

「はぁぁぁぁ、やっぱりそのチビはただもんじゃねぇな。なんでわかった?」

ふふふ、内緒、と笑って誤魔化す。

「とんでもねぇやつ連れて来たな。で、チビ。お前ならいくら出す?」

うーん、そうだね。

鑑定結果じゃ金貨七枚だけど、それは酷いかな。

「んとね。僕なら金貨七枚っていう。お弟子さんが鞘を落としたんでしょ。でも、装飾にもお金がかかってるから、新しく作り替えるより、多少安くてもそのまま売った方がいい」

なんでわかるんだ?

うん、わかるんだよ。俺の鑑定は普通の人とは違うからね。

いつごろか忘れたけど、違いに気づいてた。前後の景色がわかるっていう感じかな。

えへへへ、と笑って誤魔化すことにした。

本来なら、鞘だけでも金貨二枚はする代物だしね。でも、今売った方がいい。後では売れないよ、絶対。

「ふぅ。仕方ねぇな。このあと売れるとは限らん。今、お前に売る方がいいだろう。事情も知って買ってくれるなら」

よっしゃー!

マックスさんは大喜びだ。でも悪いことしたね。ごめんねおじさん。


じゃあ、俺も何か見てみようかな。

ふんふんと鼻歌を歌いながらいろいろ見てみる。そこには剣だけじゃなくいろんなものがある。お、これ、フラットに良さそうだけど、おやつしか入れないからいらないね。じゃあ、とあちらこちらを見ていれば、革でできた丸いメダルみたいなのがある。かなりきれいな彫刻がされてるんだけど、これなにに使うのかな。あ、貴族の紋章か。じゃあいらない。

えっと、どうしようかな。

これは? 剣につけるやつかな。飾りみたいなの? 革だけど、名前を刻んである細いベルトだ。普通のベルトみたいにバックルがついてて、どんなサイズの剣にもつけられるみたい。

これ、いいかも。

「すみません、これください。名前入れるの時間かかりますか?」

すぐにできるらしい。

じゃあ、と長いのと普通のを買うことにした。

名前は? と聞かれたので、置かれた紙に名前を書く。

おじさんは驚いてたけど、ニヤリと笑って奥へ入った。

何買ったんだ? 内緒だよ、とはぐらかしておく。

もっと長いのがあればフラットにと思ったけど、ネックレスだけでも邪魔になりそうだし、犬じゃないから止めた。


ふと視線を感じて振り返る。

フラットは既に気になっていたみたい。外をじっとみているんだけど。

店の入り口に移動したフラットは、探索してるみたいだね。

マックスさんたちも良からぬ空気を感じたんだろう、外に出ていった。側にはフラットが立つ。

俺はそのまま店内にいた。その方が安全だし。

なぜか俺に対しての視線だと理解したから。王都では知らない人と話してはいない。なんでこんな視線を向けられるんだろう。

俺の事、女だと思ってるのかなあ。


待たせたな、とおじさんが戻ってくる。

これでいいか?

おお、かっこいいじゃん。きれいに刻印されててとてもいい感じだ。

「無理言ってごめんなさい。これ、あとでプレゼントするの。今日はずっと買い物付き合ってくれたらからお礼に。おじさんもごめんね、営業妨害しちゃった」

「あはは、難しい言葉知ってるな。いくつだ?」

六歳だよ。

「お前はすごい冒険者になりそうだ。こっちに来た時にはよってくれ」

ありがとう、と金貨二枚を払った。

このベルト、平たくなくて丸っとしたベルトなんだ。おしゃれでかっこいい。バックルにも模様が彫られてるし、とてもいい品物だよ。

次に来た時には自分のを買うからと手を振っておいた。


「ねえ、誰かいた?」

「お、終わったか」

うん。

マックスさんが古い剣をアイテムボックスに入れて欲しいと言うのでそのまま収納した。だって重いからね。


フラットが背中に乗れというので、そのまま乗っかった。

両側にはマックスさんとショルダーさんが歩く。

それほど距離はないから大丈夫だと思うけど、大人の心配は本物だから。



すぐに到着した宿にはギルマスが来ていた。

受付してましたよ~

「お帰り。買い物たくさんしたか?」

「うん。いろいろ買ったよ。終わったの?」

「ああ、疲れた。今夜は酒でも飲んで寝るしかないな。じゃあ、飯はまだだろうから一休みするか」

そう言ってギルマスは二階へと上がった。

「あのね。二人のお礼をしたくて。これ、使ってくれる?」

なんだ? と食堂へと向かう。

果実水を頼んで、名前のメモを確認して二人に渡した。

「お前、これ……」

「すごいな。かっこいい」

ふふふ、と笑顔で二人を見る。

「今日はいろいろありがとう。お礼だよ。それ、剣の鞘に付けるんだって。この上のところらしい」

このあたりと指で示せば、さっそくつけはじめる。マックスさんは背中の新しい大剣をはずしてつけはじめた。

ショルダーさんはあっという間につけて、嬉しそうだ。

「これ、いいのか? 高かっただろ?」

そんなことないよ。

「いや、前に見たけど高くて手が出なかった。悪いな、ナギ」

「心から感謝してるから。一人だったら道に迷ってたよ。僕もフラットも来たことないしね。いい買い物もできたし、お土産も買えた。だからお礼」

ありがとう、と頭を下げる二人は、俺みたいな子供に対しても同じ冒険者として相対してくれるんだ。本当に感謝だよ。


じゃあ、少し休むかとそれぞれ部屋へと向かった。



夕食は、かわらずとんでもない量を食べるフラットと、俺。そして食べるしエールを飲むしと賑やかな二人。その上にギルマスが加わったから、とんでもない事になった。

フラットだけは気にせず食べまくっているけどね。

俺も最初はそうだったけど、今はお腹がパンパンだ。

温かい紅茶を飲んで三人の話しを聞いている。他の皆は、巻き込まれないように遠巻きだ。

楽しいのに、どうしてかな。たぶん、ギルマスがいるからだろうけどね。

「これ、いいだろう。俺とマックスにナギがプレゼントしてくれたんだぞ。買い物に付き合ったからって。お守りにするんだ、俺は」

「俺もだぞ。ナギのくれたお守りだ。それに剣も選んでもらったしな」

「……ナギ、俺のは?」

あははは、欲しかったの?

「そりゃ欲しかったさ。買い物について行ければ良かったんだけど、仕事だし。損した!」

おいおい、そんなことを大声で言っていいのか?

何買ってもらった? と皆が近寄ってくる。

これ、かっこいいな、と剣を使う人たちは大興奮だ。

「逆に高く付いたね、ナギ。私たちは何もいらないからさ、今度はお姉さん二人に付き合って」

うれしいな、と頷いた。

「じゃあ、帰りは俺と一緒な。ナギの隣は俺だ」

あははははーと皆が笑う。

ギルマスの焼きもちだ~とか言ってるけど、楽しいね。

フラットは果実水がもっと欲しいらしいので注文する。

ボウルをとりだして、その中に入るだけ入れておいた。

ゴクゴクのんでるけど、満足したのかな?

『ナギ、飴ちょうだい』

「飴がいるの? 寝るときには歯を綺麗にするけどいい? 歯に虫が付くからね」

『わかった~』

ふふふとカラフルな飴を口に入れてやった。

「ナギ、それは何?」

「飴だよ。砂糖の塊みたいなお菓子。寝る前に歯を綺麗にしないと、虫歯っていって歯を虫に食べられるから夜は止めた方がいい」

そうなの? と驚いている。

そういえば、虫歯が痛いって聞いたことがないね。あ、甘いものが少ないからか。

明日食べてみる? コクコク頷く二人に、小さな袋入りをあげれば大喜びだ。

きれいだねとずっと見ているんだけど、かわいいね。


そろそろみんな出来上がってきたので、俺は寝ることにする。

「じゃあ、子供は寝ますので。明日は何時ですか?」

「明日は十時に王宮だ。馬で移動するぞ。だから九時半には出発する。それまでに飯済ませとけ」

は~い、と皆に手を振って二階に上がった。

もちろん、お金は払いましたよ、俺とフラットの分は。



部屋に戻って鍵を掛ける。

クリーンで身体を綺麗にしてからパジャマに着替えた。フラットの口の中は別にクリーンをかけた。

動物は歯がいたいと大変だ。歯が抜ければ力も入らなくなるんだよ。そう話せば、すぐにやって欲しいと言った。そんなことになったら大変だと理解してくれたみたいだね。


隣りどうしのベッドに転がってお休みと声を掛け合って眼を閉じた。




朝、いつもより遅めにベッドを抜け出した俺とフラットは、クリーンをかけて着替えをする。

フラットにブラッシングをしてみたら、毛のツヤがよくなったよ。

俺も自分の髪をすいてみる。

うん、全然違うね。

きらきら光ってるみたいに見える。こんなにきれいだったんだね、俺の髪の毛。フラットも毎日ブラッシングだね。もちろん、俺も。


準備万端で食堂へと向かう。

ほぼ全員揃ってるみたいだね。

「おはようございます」

皆に挨拶しながら入って行く。

いつもなら返事がくるのに、今日はどうしたの?

俺を見て全員が固まってる。知らない人も固まってるけど、なんでだろう。俺、なにかやらかした?

くわぅ! とフラットの声で全員が動き始める。

「あーびっくりした。いつもきれいなナギだけど、今日は特別きれいだな」

「本当よ、ビックリしすぎて動けなかったわ」

「その髪の毛。昨日買ったブラシか? フラットも?」

お、気づいてくれたんだねショルダーさん。

「そう。そんなに違う? フラットはとってもきれいだと思うけど」

ぶんぶんと首を振る皆だけど、意味がわからん!

「いや、二人ともかなりすごい。ナギの髪の毛は特別な色だけど、いっそうきれいだ」

マックスさん、お世辞でも嬉しいよ。

はぁぁぁぁぁ~と大きく息を吐いたのはギルマスだ。

「お前、本当に危ないぞ。絶対に一人で行動するな、いいな!」

「う、うん。なんかよくわからないけど、そうする」

よし、と同じ席を指さしてくれる。今日はマックスさんとギルマスの間だ。

じゃあ、と朝食の大盛りを三つ頼む。これでも足りないだろうけどね。


フラットはあっという間に朝食を平らげた。

追加はできるかと聞いたんだけど、無理だとことわられちゃった。それなら何か出して食べてもいいかとギルマスが聞いてくれたら、問題ないらしい。

じゃあ、何が食べたい?

『ステーキとね、おにぎりとパン、オークの角煮と肉じゃががいい』

あはは、たくさんだね。

ステーキは五枚皿ずつ皿に盛っているのでそれをボウルに移してやる。となりには、大皿におにぎりとパンをのせた。皿の上に小さなボウルを置いて肉じゃがを鍋から移す。

「おい、それはなんだ?」

え?

転生した少年は三歳から冒険者生活始めました。

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

16

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚