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あなたがいれば

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あなたがいれば

1 - あなたがいれば

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2024年08月14日

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※桃青です

※他メンがほんのちょぉっとだけ悪く映っちゃってるかも(話の流れ的にご了承くださいっ)





「次は、〇〇、〇〇〜、右側のドアが〜…」

ガタンゴトンと大きな音を立てて走る1両だけの列車。もう俺たち二人以外の姿が見当たらない車内に、アナウンスだけが鳴り響く。電車を何本も何本も乗り継いで、どこまで来ただろうか。アナウンスされる地名は、もう聞き馴染みの無いものばかりだ。横には何度も何度も染めて、少し傷んだ髪のあいつ。こんな時まで、軽く鼻歌を歌いながら、駅のホームで見つけたパンフレットを見ている。時々、「まろ、これ見て」なんて、楽しそうな笑顔で写真を見せてくるが、俺は全くそんな気分にはなれなかった。

俺たち二人は、メンバーにも、勿論家族にも秘密の恋人関係にあった。多様性がある程度認められてきた今、そうゆうことに対しての偏見が少なくなってきたのは事実。しかし、まだまだ男同士の恋愛に対して嫌悪感を抱く人が多いのも事実だった。ましてや、片っぽはグループのリーダーであり、会社の社長。もう片っぽも社長の相棒で、皆を引っ張っていく立場である俺たちが、付き合ってるとでも知ったらあいつらは、社員さんたちはどう思うだろうか。そんなことを考えると、とても簡単に言い出せることではなかった。

しかし、この関係をグループとして活動していく中で、隠し通すのにも限界があった。俺達二人も同様、他メンも、メンバーの変化にはよく気がつく。「何かいいことあったの」や、「疲れてるね」など、会話をせずとも、ちょっとした変化に気づき、飛び交うそんな言葉に、いつバレてしまうのだろうかと、ビクビクしながら生活するのはもううんざりだった。それにバレてしまうよりも、自分たちの口から言ったほうが、心のモヤも晴れるのではないか? きっと大丈夫、メンバーなら受け止めてくれる。

今考えれば、そんな気の緩みが良くなかったんだ。


ライブが終わり、一段落ついた頃の会議の日。俺とないこは、朝早くから集まって、社長室で話をしていた。内容は俺たちの関係のこと。前日の朝ないこから連絡があった。もうそろそろ話しても良いんじゃないか。そういうないこに、自分でもいろいろ考えてたこともあって、俺はつい頷いてしまった。

そして、会議が終わりないこがメンバーを呼び止めた。

「あのさ、ちょっと話あるんだけど。」

「聞いてくれる?」

そんな言葉に「なになにー」と、メンバーがいつもの調子でないこに耳を傾ける。

俺は、もう何も考えられなくて、メンバーの顔を見るのが怖くて。軽く下を向いたまま、震える手を押さえることしかできなかった。

「単刀直入に言う。」

「俺とまろは付き合ってる。」

「大事なことだから言っとこうと思って。 迷惑 はかけないから。」

ないこの淡々とした口調に、静寂が広がる。俺にはその数秒が凄く長く感じて、恐る恐るメンバーの顔をみると、戸惑いと軽い苦笑いが感じ取れた。その瞬間、嫌な冷汗が体中から出てきて、吐き気のようなものをおぼえた。

そして、静寂を破ったのは初兎の動画用のに作られた、明るい 声だった。

「、、、え〜!wwなになに?ドッキリ?w」

「前もにもおんなじようなことしてなかったっ け?w」

初兎に続きりうらも動画用のリアクションをとる。俺の頭はもう真っ白で、こんなときばっかり働かない脳みそをフル回転させる。そして俺が導き出した答えは、こいつらに話を合わせることだった。

「な、なぁんやぁ、、っ思ってたよりひっかから んかった、、w」

「失敗やな、wないこたん、。w」

「そんなんで引っかかんないよw」

「やっぱあかんかぁw」

「てか、ネタバラシ早くない?w動画になる?」

「、、ぁ、お蔵入りかも、w」

メンバーの言葉に、必死に返していく。ドッキリだとわかり、安心したようなメンバーの顔に、心臓を思い切り殴られたような感覚がした。いつも通り笑えているだろうか、声は震えていないだろうか。意識しないと今にも泣いてしまいそうだった。しかしその時、この間、否定も肯定もせず、黙って見ているだけだったないこが口を開いた。

「ドッキリじゃない。」

「へっ、、、」

俺はびっくりして、咄嗟に目を見開き、声を漏らしてしまった。メンバーたちも、再び戸惑いの表情に変わり疑問の声を漏らす。

「ん?、、どゆこと?」

「なに?、、まだ続けんのw?」

「だから、ドッキリじゃないって。」

「俺たちちゃんと真剣に付き合ってるから。」

「ぇ、ちょっ、とないこっ」

「まろ、行くよ。」

「えっ?!ちょっと!ないちゃん?!」

「おいっ!ないこ!」

ドッキリではない。そうきっぱり言い切ったないこは、メンバーの制止の声も無視し、ついに涙がこぼれてしまった俺の手を掴んで、外へ駆け出した。


というのが、今二人で此処にいる経緯である。 あれから、一度ないこの家に帰り、俺の家に帰り、それぞれの荷物を鞄にまとめ、家を飛び出した。行く宛は、俺もないこもわからない。取り敢えず、遠くに行きたかった。誰もいないどこかへ。勿論ずっとなんて無理に決まっている。俺達には沢山の、俺たちの声を待ってくれているリスナーさんがいる。ないこには社長業があって、俺には仕事がある。 そして、メンバーがいる。だけど、今はそのメンバーから離れたかった。勿論、あいつらがとんでもなくいい奴なのは、俺たちが一番解っている。そりゃ、メンバー同士で付き合っているなんて知ったら、動揺するだろう、受け止めきれないだろう。ただ、ただ今は誰にも、何も言われないように。二人きりになりたかった。

ないこもきっと、俺と同じ気持ち。

はしゃぐないこを横目に、窓の外の景色を眺めていると、終点を知らせるアナウンスがなった。

「まろっ。」

ないこがニコッと微笑み俺に手を差し出す。誰もいない無人の駅。俺たちを軽蔑する目も、気持ち悪がる目も此処にはない。俺は差し出された手を力強く握り締めた。


電車を降りて無計画に進めた足は、俺たちを海へと導いた。ついた頃には、もう結構な時間が経っていて、日が沈み始めていた。夏だというのに誰一人いない砂浜。ないこは目を輝かせ、靴と靴下を乱雑に脱ぐと、海へと走っていった。バシャバシャと水飛沫をたてながら、服が濡れることもお構いなしにはしゃぐないこが、汚いことなど何も知らない、純粋な少年に見えた。

「まろぉ〜!早くきてぇ!」

「冷たいしちょーきもちいっ!!」

そんなないこの呼びかけに、聞こえるか聞こえないか分からないような声量で「うん」と返し、靴を脱ぐ。ないこの靴もきれいに揃え水の中に足を進めた。思っていたよりも冷たい海水。今度は暖かさを求めるようにして、自分からないこの手を強く握った。

そして、本当に日が沈みきった頃。俺たちを照らすのは、海に反射した月明かりだけ。何用かも分からないベンチに二人肩を預け合って座る。

「ねぇ、、、まろ。」

今にも消えていきそうな、ないこの優しい低い声。この声を聞くだけでなんとも言い難い安心感に包まれる。

「なぁに、、ないこ」

「おれね、もちろんさ、このままでいいなんて 思ってな いよ。」

「どうせ、、すぐ戻らないと駄目なことも分かっ て るしさ 。」

「うん、、。」

「おれ、幸せなんだよ、、まろといれるだけで」

「うん、…おれも。」

「………」

「なんて言われるかな、、、w、」

「、、、どうやろ、w」

きっと俺たちが帰ってきたら、メンバーは安心した顔で迎えてくれるだろう。俺たちの関係も絶対に認めてくれる。そんな謎の自信まである。その証拠に、通知をオフにしていたLINEを開くと、すごい量のメッセージが届いていた。この様子だとDiscordにも来てるだろうか。何処まで行っても、あいつらは俺たちのことが大好きで、俺たち二人もあいつらが堪らなく好きなのだ。

「ねぇ、まろ。」

「ん、、、?」

「なぁに、」

「俺ね、あいつらが好きだよ。」

「、、、うん、しってる。」

「あと、いれりすとないふぁみ。」

「あと社員さんたち」

「うん。そーやね、、」

「でも俺、もしさ、大好きなさ、大切な奴ら に、 どんだけ否定されてもさ、どんだけ離れて いかれても、ひゃくまろをとるよ。」

「、、、うん」

「家族も、縁切る。」

「…やめろよ、、縁起でもない」

「うん、でもそれぐらい。」

「俺、まろがいれば何でもできるの。」

「、、ぅん」

「でもね、まろがいないと何が出来ても楽しく ないの。」

「大好きなの。、愛してんの。」

「うん、、しってる。」

「、、うん。」

「まろ、ないこいないならしぬよ。」

「、、んはっ、、おもっw、、、」

「うん、、生きてても意味ないからねっ」

「かわぃいな、、ほんと…」

「、、、」

「俺はかっこいいけどね」

「うん、、世界一かっこよくて、かわいぃ。」

「、、、んふっ、、身が重いな」

眠ってしまいそうな程にゆっくりで、低く、小さな会話。誰もいない。誰にも聞かれることなんてない、俺たちだけの世界。あれだけ離れたかったメンバーに、早く会いたい気もする。それぐらい、ないこがいれば、もう何も恐れる必要など無いのだと気づいた。

「もしさ、あいつらに、あの人達に、みんな に、否定されたらさ。」

「また俺と、逃げ出してくれる?」

「、、、うん。喜んで。」

もう絶対に起らないであろうことに約束を結び、月明かりに包まれながら口づけを交わした。

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