テラーノベル
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「はあっ、はぁ、」
結果論でいうと___負けた。
兵士は皆生きているが、ボロボロだ。まともに戦えない状態になった。
生きている、と言ったが、もし司団長が負けを認めるのが少しでも遅かったら、誰かいなくなっていたかもしれない。
(生きれた…。あいつのところに帰れるんだな…)
また幸せに暮らせると思うと、傷もすぐに治りそうな気がする。
「君が東雲くんかい?」
「____っ!!」
聞いたことのない声が聞こえて顔を上げると、そこにいたのは黒百合の魔術師、神代類だった。
「あぁ、倒しにきたわけじゃないんだ。僕は今みんな傷を治しに回っていてね。全く、人使いの荒いボスだよ」
「傷を治しに回ってる…?なんで今さらそんなこと…」
「元々この戦いを持ちかけたのは黒百合だからね。勝っても負けても誰かが怪我をしたら、治して回れと言われていたんだよ。今回は司くんが早めに降伏してくれたから、いなくなる人が増えずに済んだ」
オレはこの言葉に疑問しか浮かばなかった。
「は…?誰もなくなってねぇだろ…?」
「…そうか、君には伝えられてないんだね」
なんとなく、その先は聞いてはいけないような気がする。誰が、なくなったって言うんだ?誰もなくなってはないはずで。
「東雲くん、君は護衛を努めていたよね。第三皇子の」
あいつ?…あいつは、今、生きて、
「いなくなったのは、第三皇子___青柳冬弥くん。…ただ、一人だけだよ」
頭を殴られたような衝撃が頭に響く。頭が真っ白になる。
そんなオレを置いて、神代は話を続ける。
「…戦ってる間に、ボス達が城を攻めた。本当は話し合うつもりだったんだ。けど、僕達の中に裏切り者がいてね。」
「あいつの…兄さん達は…どしたんだよ。守ろうとしなかったのか…?」
聞いた声は物凄く震えていたと思う。今でも震えが止まらない。
「…逃げ道を塞ぐように攻めたから、応援に行く暇もなかったんだと思うよ。」
(なんで…)
「なんであいつだけなんだよ…っ、なんであいつだけで、!オレを倒してくれなかったんだよ!!どうして、…!どうしてッ、あいつを1人にするんだよ!!オレをッ倒せよ!!」
オレは思わず神代の胸ぐらを掴んだ。
「あなたが護衛騎士?」
横から沈んだ声がした。
「朝比奈くん、」
髪が長く頭に漆黒の百合をつけているロングの女性。目には生が宿っていないような。
「もう裏切り者は消した。あなたに、2つ渡したいものがある」
そういって取り出したのは大きな黒い百合と見覚えのあるロケットペンダントだった。
「このロケットペンダントは、彼が最後まで握ってたもの。最後まであなたの名前を呼んでいた」
そのロケットペンダントは、オレがあいつの誕生日の時に渡したものだった。
(…なんでそんな大切に持ってんだよ)
「そしてこの黒い百合は…、あなたを黒百合にさせるもの」
「は、」
(オレが、黒百合側に___?)
黒百合になるにはそれ相応の代償が必要で、命を捧げてしまった人も多くいる。
「神代、あとはやっておいて」
「了解」
「なんでこれをオレに?」
「彼女なりのお詫びじゃないかな。」
敵にお詫びなんてどうかしてる。あの人の考えていることが全くわからない。
(まるで…あいつみたいだな)
最初は何考えてるかわからなかったけど、後々すげぇ表情豊かになって。そんなあいつに恋をした。今では懐かしい思い出だ。
「…もし君が黒百合になりたいなら歓迎するよ。もし君の中に”守りたいものがなければ”ね」
(守りたいものか…そんなの)
「黒百合になるには…代償がいるんだったな」
「さすがに知っているか。…本当にいいのかい?」
「オレにはもう守りたいものも、守りたかったものもない」
大切なものを守れなかったオレが嫌いだ。こんな姿、今すぐにでも捨ててしまいたい。
「…君は、何を代償に黒百合になる」
「今のオレの容姿と性格____すべてだ」
この日オレはすべてを失った。
いや、捨てたの方が正しいか。
白騎士という肩書きも、思い出も、あいつ___冬弥も。
オレはもう、黒百合として生きていく。
握ったペンダント血で染まっていた。
コメント
1件
うわぁぁぁぁぁ!?!?すごい好きですこの作品!!!どうしてこんなにもいい作品を作れるんですか!?才能ですか!?そして彰人くん幸せになって!!!冬弥さんと!!!!お願いなので!!!