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わわ…!!めっちゃいい… やっぱりci受けは健康にいいですね…!🫶💗 本当に書くの上手すぎて…どんどん作品に惹かれていってしまう… 本当に天才ですね…!
口角があがってきちゃうから舌噛んでめっちゃ耐えてた 世界観も設定もこのファンタジー感もものすんごく好みど真ん中でした 描写されてる姿を自分で頭の中で想像してただ単に楽しんでました 今回もとっても素敵な最高な作品でした ありがとうございます🙇♀️🙇♀️🙇♀️
読んでてめっちゃ楽しかったです! 空想の生物?についてあんまり詳しくなくて作中にでてきてたものをひたすら検索してました!それがすっごく楽しくて私もハマりそうです笑 素敵な作品ありがとうございます!
この作品は、ゲーム実況者まじヤバや、その周辺のコーラ星人様、ひょう様、たまご様の名前をお借りした二次創作作品になります。
本作品はボーイズラブがテーマですが、本人様方の性的趣向を表現したものではございませんのでご了承ください。
また、過激な描写が含まれる場合がございますのでご注意ください。
cp→基本zmciのci愛され(utci、shoci、tnciの描写もあります)
小さい頃から俺は、何故かボウリングの玉が好きだったと、両親から聞いた。
何故好きなのか、と問えば、ボウリングのお兄さんが自分を助けてくれたからだと答えたそうだ。
自分でも、その記憶には心当たりがある。
俺は昔、人攫いに遭いそうになったことがある。車に乗せられて、そのまま連れていかれて……泣きそうなまま廃墟に閉じ込められて、これからどうなるんだろう…ってすげー不安だった。変なおじさん数人に囲まれてるんだよ!?しかも手足もガムテープで縛られてるし、口も当然塞がれてるから助けを求めることも出来ない。そうしているうちに、どんどん外も暗い時間になってきて…おじさん達が話してるのを見ては、怖くて不安で…誰でもいいから助けて!って思ってた。そんな時に、その人はやってきたんだ。こつ、こつ、こつ、って、あの人のブーツの音、今でも鮮明に覚えてる。
人より数倍近く大きなあの人はあっという間におじさん軍団を倒して、俺の拘束を解いてくれた。ああ、あの声は忘れもしない。
「僕、大丈夫か?怖かったやろ。アイツらがいっぺん居坐る場所をここに決めてくれたことが幸いやったな」
そして、その容姿も……忘れることは無いだろう。黄緑色のボウリング玉の頭に、透明な体。暑そうなロングコートを着て、黒に青のラインが入った手袋とブーツを着ていた。なんとも癖が強い…人間とは到底思えない容姿だったのだ。
「俺ゾム。僕はなんて名前なんや?」「ちーの。」
「ちーの?可愛い名前やなぁ」
ゾムさんに拘束を解かれた後、彼に手を引かれて夜道を歩いた記憶がある。街頭に照らされる住宅地。何故か誰もいない。
「ゾムさんは、なんであそこにいたの?」
「あそこがオレらの住処やからやで」
「すみか?」
「簡単に言えば家やな」
「お家!…廃墟がお家なの?」
「……うん。俺らは普通の場所には住めへんから」
ゾムさんの言うことは、俺にはよくわからなかった。なぜ住めない?住めばいいのに。そう思った。
「な、ちーの。二度とあんな奴らには捕まるなよ。そして二度と、あそこに来たらあかん」
「どうして?ゾムさんのお家なんでしょ?いっちゃいけないの?」
「ダメや。あっこにいるんはみんな楽しい奴らやけど、人に害を及ぼすやつもおるんや。それに、人間はバケモンに気に入られちゃあかん。」
「ばけもの?ゾムさんも、ばけものなの?」
「おん。そうやで。俺はバケモンや」
見たらわかるやろ?と、ゾムさんは楽しげに笑ったように見えた。確かに人間離れした容姿ではあるけれど、当時の俺が知っている化け物と言えば、怖くて、人間のことを襲う悪いやつって感じで…目の前のゾムはむしろ自分を助けてくれたから、そうは見えなかった。
「俺にはそうはみえへん。ゾムさん俺の事助けてくれたもん。なんで気に入られちゃあかんのん?仲よぉしたらだめなん?」
ゾムさんは化け物じゃない。ただ、そう言いたかった。
「ちーのは優しいんやな。でもな、だからこそよく聞きや。人には人の、バケモンにはバケモンの、住むべき世界があるんや。けど、人とバケモンとの間で愛が生まれたら…連れていかれてまう。人の世界から、バケモンの世界に連れてかれて、人は人じゃなくなってまうんや。だから、人が人である為に、バケモンと関わりを持っちゃいかん。」
ゾムさんは、真剣な眼差しで俺に言い聞かせるように言った。当時はよくわからなかったが、今ならなんとなしには分かる。連れていかれる…連れていかれて、人の領域を超えてしまえば、人でないものの仲間入りをしてしまう。そうならない為に、化け物と交流を持ってはいけないという話だったのだろう。
「……はぁい」
「素直に聞けて、ちーのは偉いな」
ゾムさんに頭をくしゃくしゃと撫でられながら、何となく抱えられて、何となくその首に手を回して。
「さあ、もうすぐお家や。もう疲れたやろ?少しの間、眠ってるんやで」
そう言われて、まるで魔法にかけられたみたいにうとうとし始めた俺は、歪む意識の中で、ゾムさんに声をかけた。
「…ゾムさん、また会おうね」
「…………会えるとええな」
その言葉を聞いたのが最後だった気がする。ゾムさんに抱えられたまま眠ってしまって、目を覚ましたら俺は自分の部屋のベッドに寝ていた。外に俺を探しに行っていた両親に見つかるやいなやこっぴどく叱られ、酷く抱きしめられたことが鮮明に思い浮かぶ。それがゾムさん…ボウリングの玉との出会いだった。
「ゾムさんは…元気かな」
ゾムさんと別れて早数年。俺は今でも時々、あの時の出来事を思い出す。
机の横の、萌黄色のボウリング玉を見た。ゾムさんの頭にそっくりなそれは、俺の部屋に、それはそれは大切に、大切に飾ってある。
「ゾムさん…ほんとうに、いたんだよね。…会いたいよ」
本当に昔の話で、もうほぼ覚えていないけれど、俺はゾムさんに会いたかった。会って、ちゃんとお礼を言いたい。そうして、あなたのおかげでここまで成長できたと伝えたい。それと……
「ゾムさん……」
「呼んだァ?」
「だーーッ!?!?!?」
勉強机に突っ伏していた俺の真ん前、窓の外に萌黄色のボウリング玉と青のラインが入った黒い手袋が浮いている。
「ゾッ…!?」
「久しぶりやなぁ、僕?」
驚いた俺を無視してゾムさんはせっせと窓の外から窓を開けて中に入ってくる。俺が窓の鍵かけてなかったからだ。だって2階やで?普通に鍵しまってても誰も入られへんと思うやんか
「ど、どうしてここに……どうやって…というか本物!?」
「ん〜?俺は正真正銘本物のゾムやで?どうしてって言われたって、ちーのが呼んだやん?俺は呼ばれたから来ただけで…」
「ずっと呼んでも来てくれんかったやん!」
「いや、だってちょうど近くを通ってたから感知できただけでいつもは離れとるし」
あの頃と何も変わらない様子でゾムさんはそう言った。
「……いきなり来られても、ビビるやん」
「それはごめんて」
「ゾムさん、俺……ずっと会いたかったんよ。ずっと、待っとったんよ。」
「そうなん?それは申し訳ないことしたなぁ」
そう、俺はずっと待っていた。ゾムさんのことを。
「ゾムさん」
「なんや?」
「好きです。俺と、付き合ってください」
「……は?」
俺が告白した瞬間、ゾムさんは固まった。そして「やっぱあんとき関わったんが悪かったか?」「人間の子供なんて俺が助けるべきじゃなかったんや」とか何とかブツブツ言っている。そして俺に向いた。
「ちーのは、人間やろ?しかも未来ある…まだ子供やんか。だから…その…バケモンと付き合うなんて……」
「俺はゾムさんのことが好きなだけです。人間だからとか、子供だからとか、そういうのはよく分からんけど、ゾムさんがいい。ゾムさんじゃなきゃいややねん」
俺がゾムさんに気持ちを伝えれば伝えるだけゾムさんは悩ましそうに唸り声をあげる。
「あんな、ちーの。ちーののその気持ちは、お前の本物の気持ちとちゃう……と思う。バケモンの力にあてられてそう思い込まされてるだけやって…」
そしてやっと口を開いたと思えばそれだった。
「……思い込み?」
「せや。……やから…今は俺の事好きやって思っとったとしても、暫くしたら正気になるから…」
「………それ本気で言ってるんですか?」
「本気や」
まさしく、自分が正しい大人であり子供の俺に諭すかのような言い草だ。化け物の、ゾムさんのせいで、人間、俺の深層心理が誘導されていると、そう言いたいのだろう。俺は化け物が何が出来るとか、化け物から人間への影響とか、そんなものは知らない。だから、俺なんかよりも化け物に詳しいゾムさんが言う事は本当に正しいのかもしれない。けれど、この、数年来ずーっと恋焦がれてきた気持ちを否定されるのは、とても癪に障った。それが、恋焦がれた相手本人であっても。
「…え、なに…?この気持ちが偽物とでも?ゾムさんに出会ったあの日からずーーーーっと抱えて募らせてきた思いの全てが?偽物だって言うんですか?」
俺が詰め寄ればゾムさんは後ずさる。大柄な体が、今やなんの圧も感じられない。
「いや、そうじゃな…」
「俺はそうは思わない。だってこんなに好きなんです」
俺が詰め寄っても、ゾムさんは後退るばかりで。俺に責められて困っているのか、言葉を発する事もままならないようだ。
「こんなに、好きなんです。何故わかってくれないんですか!…行動に起こせば理解ってくれますか?」
俺はゾムさんの、大好きなその頭を引き寄せる。
ボウリング玉の3点の1つ、それに口をつけた。
「ちゅ…ッ」
普通の人間では考えられない、固くて、冷たい感触。それを味わって口を離した。
「これで、すこしは理解してくれましたか…?」
ゾムさんはしばらく固まって、そして決心したように息を吐いてから俺の頭に手を置いた。
「……分かった。そこまで言うんなら…きっと俺が思ったよりも強く魅了してしまったんやな。これは俺の責任や。」
「!」
「ちーの、俺と一緒に暮らそう。そうした方がお前の為やと思う。」
きっと、俺がゾムさんのことを好きな気持ちはまだ分かってもらえていない。そう思ったのは、「俺が強く魅了してしまった」この文章の中の”魅了”とは、一般的に使われる意味ではなく、怪異的な力を指しているのだろうと話しぶりで理解出来たからだ。
この気持ちを疑われていることは気に食わない。けれど、ゾムさんと毎日一緒にいられるチャンスを、逃すやつがあるか?答えは否、無いだろう。
「けど、俺と一緒になるってことは、人間として生きれなくなるってことや。両親も、友達も、家も、地位も、何もかも失う。人間の世界を捨てて、化け物の世界で暮らす事になるんや。それでも、ええか?」
ゾムさんの言葉に俺は頷く。両親への別れは惜しいが、仕方がないと割り切れる。友人だっていない。人間の世界には、丁度飽き飽きしてきた頃やから。化け物でも何でも大歓迎だ。
「大丈夫。俺ゾムさんと一緒がいい」
「…………そっか。じゃあ、俺と一緒に帰ったら、もうこの家に帰ることはないと思うんやぞ。帰る前に、大事なものとか、着替えとか、お親御さんへの置き手紙とか、人間の世界へ別れを済ませてくれ。」
「うん」
着替え、写真、護身道具と、ゲーム機。
「あの、これも持って行っていいですか?」
萌黄色のボウリング玉。ゾムさんそっくりだ。
「……ええ…けど……重ない?」
「ヘーキです。ありがとうございます!」
俺がそう言えば、ゾムさんは困ったように笑った。
そして、おれが大きなカバンに荷物を詰め終わったことを確認して、ゾムさんは言う。
「ちーのはホンマにそれでええんやな?」
「はい。大丈夫です。」
「……よし、わかった」
そう言った瞬間、俺の体は宙に浮いた。……いや違う、ゾムさんに抱え上げられたのだ。
「ほな、行くで」
ゾムさんは窓から飛び出す。そうして俺は、生まれて初めて空を飛ぶという経験をしたのだった。
もう要らないほど開発された街を見下ろす。
「さよなら」なんて形ばかりの別れの言葉を口にしてみて。
目ばかりは先を見ていて、いつの日かの廃墟を待ちわびて探している。
「あ、あれですか?」
そして見つけた。少し苔むしたビル。明らかに人の手が加わって無さそうなそれには見覚えがあった。
「そうや。よく覚えてんな。」
「だって俺とゾムさんの出会いの場所ですから。」
そういえば、ゾムさんは照れくさそうに笑う。そして、ハッとして俺に言った。
「ここ、俺含めて今8…人?匹?のバケモンが住んでるから。まあ、みんなええ奴らやから仲良くしたって。」
「昔ちらっと聞きました。どんな方々なんです?」
「それは会ってからのお楽しみやな」
そしてゾムさんは、地上へ降り立つと、俺の手を引いてビルに入っていく。
「ただいま~!」
「おじゃまします……?」
「ちーの、今日からここはお前の家なんやからただいまでええんやで。」
そう、優しく言われるので俺はなんだか歓迎されているようで嬉しくなる。
そうして入った廃ビルの中は思ったより綺麗で、手入れが行き届いているようだ。
そのうちのひとつの部屋、中が騒がしいようだが、その扉を開ける。
「おかえり〜ゾム…って誰!?そいつ!!」
中には、6人の人がいた。
1人、いまさっきゾムさんにおかえりと言った人。薄い紺色の髪をしていて、双葉のようなアホ毛が付いている。そのタレ目を開けっ広げてこちらを見るのは何となくやめて欲しいものだ。
2人、こちらに興味深そうに寄ってきた金髪にピンクのグラデーションがかかっている男。出来ればそこまでまじまじと至近距離で見てこないで欲しい。
3人、やはり物珍しそうにこちらを見ている中年男性。なぜ足にバナナが着いているのだろうか。
4人、美味そうにコンビニ弁当を食べていた中年男性。頭からキノコが生えているのは飾りだろうか?
5人、他とは違い俺に全く興味を示さず、一瞬見てからずっとスマホを眺めている濃色の髪をしたサングラスの青年。
6人……いや、匹?デフォルメされた豹のような生い立ちの生物…なぜヘッドフォンをつけているのだろうか。上から耳が出ている…耳に当てていないなら意味をなさない気がするが。
「あー、覚えとる?数年前ここにさ、誘拐犯が入ってきてガキ閉じ込めてたの。俺がそのガキ助けたやんか」
「あ〜!おったわ!」
ゾムさんの言葉に、俺をじっと見ていた薄い紺色の髪をした男が頷く。
「あの時のガキや。俺がその時…結構強めに魅了してしまったみたいで、人間世界にいると危ないなーって思ったから連れてきた。」
ゾムさんがそう言えば、薄い紺色の髪をした男は納得した、と満足気に頷き、そしてまた言う。
「え?こいつを引き込むってこと??」
「そうするしかないやん。人として生きるには俺と”混ざり過ぎた”んや」
「ゾムがそこまで言うなんて珍しいやん。そんなにその子お前のこと好きなん?」
今度はキノコの男が問うてきた。
「好きすぎや。だから連れてきた。な?ちーのは俺の事その…好きなんやろ?」
「はい。もちろん大好きですよ」
ゾムさんの問いかけに答えれば、ゾムさんは「そっか」と頭を撫でてくれた。そんな会話を聞いたキノコの男は「あー、なるほどねぇ」と1人納得しているようだ。
金髪の男はもう俺を観察するのは十分なのか、今度は話しかけてくる。
「お前!名前なんて言うん?」
「ちーのです。」
「ちーのか!俺シャオロン!狼男!」
狼男、それは西洋に伝わる怪異だ。普段は他の人間と何ら変わらないが、満月の夜にはその姿を変えて狼へと変貌するとされている。
「シャオロンさんですね。よろしくお願いします!」
金髪の男、シャオロンはにっこり笑って握手をしてきた。その様子を見て、自分たちも自己紹介をした方がいいと思ったのか次々に男たちは自己紹介してくる。
「僕、鬱先生っていいます~。一応吸血鬼やってま〜す」
と、薄い紺色の髪の男が。
吸血鬼、とは西洋に伝わる怪異だ。その名の通り、人の血を吸い生きている。特に若い女性の血が彼らにとっては美味らしく、女性に色仕掛けをして誘い、油断しきったところで血を吸うそうだ。そして聞くところによると、日光と十字架とにんにくに弱いらしいが、この人もそうなのかは分からない。
「俺はひょう太朗っていいます!見ての通り、ひょうです!」
と、ヘッドフォンをつけた豹が。種族がひょう、という言葉には驚いた。一般的に知られる豹、とは普通の動物を指し、こんな風にヘッドフォンをしていることも、コミュニケーションを取ることも、二足歩行で歩いていることもありえないのだ。そういった事が出来るからこそ化け物だと言われるのだろうが。
「私はエーミールと申します。種族はおとろしです。よろしくお願いしますちーのくん」
と、足にバナナを付けていた中年男性。おとろし、とは正確な伝承は無いのだが、一般的には神社で悪さをする者の上から大きな頭だけの姿で落ちてくるとされている日本の妖怪だ。今は人型に化けているのだろうか。それともこれが正式な姿で、伝承中の大きな頭だけの姿が化けた姿なのかはよく分からない。
「俺はトントンや。種族は憑依ダケ」
と、頭からキノコが生えた男性が。
「憑依ダケ?」
「ヒトに寄生するキノコの事や。つまり、俺の本体は頭の上のこれって事やで」
「へぇ…」
なるほど、俺がトントンさんだと思っている部分は他人に過ぎず、本体はキノコであるそうだ。なんとも不思議な怪異である。
「あ、俺すか。ショッピです。ただの幽霊ですよ。」
そして、スマホを弄っていた彼はやっとこちらを向きそう言った。
幽霊、それは人が死後現世への未練で天まで昇れず、現世にとどまっている姿。…彼の未練はスマホだろうか?やたら熱心にいじっているようだ。
「…あれ、ゾムさん含めて8人いると聞いたんですけど、ここにいるのは6人だけなんですね」
俺がそう言えば、鬱先生が「あー」と声を上げる。
「コーラな。あいつは自由奔放なやつやから…多分今は人間に紛れてパチンコでも打ってるんとちゃうかな」
「コーラ?」
有名な炭酸飲料の名称としてならその名に聞き覚えはある。しかし、それは人名なのだろう。それならば何も分からない。
「最高コーラって言うてな。遠い星から留学に来た宇宙人や。普段はイケイケな人間の姿しとるけど、本当はちょっとでかいハムスターやで」
問えば、鬱先生は丁寧に教えてくれる。つまり、コーラさんとは宇宙人なのだろうか。どんな人なのか、会ってみたい。
「まああいつに関してはええやろ。すぐ会えると思うで」
俺がふむ、と考えていればゾムさんがそう話しかけてくれた。
コーラさん、一体どんな人なのか、今から楽しみになった。
そして、各々の自己紹介が済み、ゾムさんは俺にこれからの事を話してくれた。俺はこれからここに住むことになること。ゾムさんの影響でもう、人間として暮らすには危ないのだということ。ここで過ごしていくうちに、俺も人ならざるものに近づいていくということ。
「…ごめんな。これは俺のせいやから…ほんまに、すまん」
「ゾムさんのせいじゃないですよ!俺が自分で望んだんです。俺が勝手に好きになったんです!」
ゾムさんは俺の事を思ってくれているようで、だからこそ俺は大丈夫だ、と声を大にする。そうだ。これからわかっていってもらえばいい。
俺がゾムさんのことが本当に好きなんだって。そうかな、とゾムさんは不安そうな顔をしていたと思うけれど。
そして、俺はその後、ゾムさんにビルの中のどこに何があるーとか案内して教えて貰って、そして部屋を用意してもらった。ゾムさんが使ってる部屋の隣。
ちなみに、各自の部屋分けは、3階の階段前から奥に向かい、鬱先生、シャオロンさん、ショッピさん、ひょう太朗さん、4階の階段前からコーラさん、エーミールさん、ゾムさん、俺という並びだ。
「じゃあ、部屋はそれなりに片付いとると思うから、気になる所は自分で掃除してくれな。もうここはお前の部屋やから。」
「はい!ありがとうございます!」
「ん。じゃあ色々やることもあるやろうから、俺はここで分かれるな。」
ゾムさんはそう言うと俺の頭にぽん、と手を置いて、部屋を出ていった。
置き去りにされた俺は、部屋を見渡す。シンプルな部屋だ。各々の部屋が用意できている点や、俺がいま見ている部屋の作りからして、多分ここは元はホテルかなにかだったのだろうと推測できる。入ってすぐは靴箱。次に廊下と、別々のトイレとバスルーム。もう少し先には広い空間にベッド。まあまあな大きさのクローゼットと、壁際に机と椅子もある。それは、一般的な”ホテル”と呼ばれる施設の個室によく似た風景だろう。
「よし、じゃあ荷物片そう。」
俺は持ってきたカバンから荷物を取り出し、着替えはクローゼットに。写真やボウリングの玉は机の端に。護身道具はベッドサイドに。と、どんどん部屋に荷物を置いていった。
「ふぅ……こんなもんかな」
あらかた片付け終えたところで、俺はベッドに横になった。
「ここで暮らして、皆と一緒にいることで、体内に魔力、または妖力が蓄えられる…か。」
ゾムさんに教えてもらった、人ならざるものになる方法。皆さんと仲良くなればなるほど、人間からは遠のいていくそうで。種族を完全に人間から切り離すには数日に渡り”仕上げ”をしないといけないらしいけど、それについての詳細はまた今度と言われた。
ちなみに、ゾムさん曰く今の俺は、皆と仲良くせずとも、もとより常人のそれよりも遥かに多い魔力?妖力?を保有しているらしい。その原因は、幼少にゾムさんに出会ったことに加え、そのような”化け物”に強い憧れを抱く気持ちから、俺がその場をただ浮いてるような力の弱い妖から無意識に魔力、妖力を吸い取ってしまっていたためらしい。
そうして、人間にもかかわらず魔力や妖力を保有した俺や、俺の身の回りの人間は、怪異に狙われやすくなり、危険な状態だった。
だから、ゾムさんは俺や、俺の身の回りの為に、俺が妖の類になることが良いと判断した。…俺も、その説明を受けて、それが良いと思った。
ただの人間で、なのに中途半端に魔力、妖力を持っていて他の人に迷惑かけるくらいなら、化け物になって、両親の元なんて去ってしまえ。それで、両親の安寧は保たれるし、俺だって化け物になれば、そうやって寄ってきたやつを返り討ちにできる。…これが、俺の身の回りの人間からしても、俺としても、最善策だと思った。きっとゾムさんも、そう思ったんじゃないだろうか。
だから、後悔はしてない。むしろ、ここの人はみんないい人そうだし、何より、憧れの人とひとつ屋根の下という状況が嬉しかった。
俺は起き上がり、部屋を後にする。皆と、もっと話したい。それに、挨拶してからしばらく経ったから、最高コーラさんも帰ってきてるかもしれない。
最初にみんな集まってた場所、談話室に向かえば、丁度そこには皆さん揃っている。そして、そのなかに混ざるようにいる、赤と白の派手な髪の美少年…
「ん?こいつが話してたちーのか?」
間違いない。こいつが最高コーラだ!
「はい!ちーのと申します!」
「はい。よろしく〜」
アレ、見た目は派手派手で、陽の者ってカンジなのに意外と塩…
「俺のことは聞いてると思うけど、最高コーラっていいますー。サイコウって書いてモリタカって読むんや。年齢は506歳。よろしゅう」
「クソジジイやないか」
「は?」
506歳という発言に口をついて出た言葉は、その場にいたコーラさん以外の皆にウケた。特に、シャオロンさんとショッピさんは爆笑してくれた。
「ちゃうぞ!?コーラ星周期で506歳!!地球とは歳の数え方が違うんや!俺はまだピチピチやぞ!!」
「ち、のさんッふふ…ふッ初見で…ふ…そのノリでコーラさんに突っかかれるのなんて、あんただけっすよ!!」
「ショッピ!シャオロン!…今笑ったやつら全員許さんからな???」
まあ、結果を言えば、コーラさんはいい人だった。キレると勢いがすごいけど、普段は落ち着いてる。それに、ギャグが面白かった。やっぱ、ここの人達はみんないい人だ…と、その時にやっと確信できた。
「ちのさんは、何になりたいとかあるんですか?」
「え?なにが?」
「いや、なるんでしょ?怪異」
俺がここにきてしばらく経ち、ようやくここにも慣れてきて、俺は歳も近いショッピくんとよく話すようになった。俺とショッピくん、2人っきりで話しても気まずくないし、良い友達になれたと思ってる。
そして、そんなショッピから問われた「何になりたいか」という問い。俺は、今この瞬間にそれに明確に返すことが出来なかった。
「あー、まあ。怪異になりたいとは…思ってるけど…何になりたいか…か。考えてもなかったな。」
「ふーん。なら、早めに決めた方がいいっすよ。」
ショッピくんは、少し語感を強くして、そう言ってきた。まるで咎めるみたいに。
「どうして?そうしないと、なにか不味かったりするの?」
「はい。」
「え」
曰く、「何かになりたい」という意志は、種族を変える上ですごく大事な事だそうで。
例えば、明確に種族を意識しないまま「怪異になりたーい」だけで怪異になる”仕上げ”をすれば、俺が前、魔力や妖力を吸い取っていたと言われた様な意思も持たない弱い怪異になるそうだ。
的確な目的意識を持たないと、魂が耐えられないと。強い意志こそが、魂を崩壊から守るのだと。俺には、さっぱり理解できない世界だが、そういうものなのだと覚えておいた。
「何になりたいか……か。」
「これからゆっくり決めていけば……と言いたいところなんですけどね。時間はあまりないっすよ」
「え?ガチ?」
「ガチです。ちのさん、あなたは常に魔力や妖力を他の怪異から奪ってると思ってください。あなたが来てから、ビルの中に漂う雑魚は跡形もなく居なくなりました。この意味がわかります?」
「……」
こくり、頷く。
「俺が…そいつらから魔力や妖力を奪うから…消滅、したんやろ?力が尽きて…」
「正解です。」
ショッピくんが、普段から淡々と喋るタイプだから、俺がしょげると途端に空気が重くなる。苦手だな。こういう雰囲気。
「つまり、今ちのさんはほんまに人間なんか疑うくらい力を持ってるってこと。しかもそれを操って消費することも無いからどんどん蓄積される。魔力や妖力は、ある一定まで貯まれば人体を犯し始めます。」
例えば、体調が悪くなったり…吐血したりね。と、具体例を聞くと、身体がゾワゾワと栗立つのがわかった。
「お腹いっぱいだと吐きそうになるでしょ?…それでも詰め込まれたら吐いちゃいますよね。要は、魔力や妖力もそれと同じことなんです。」
「一定数溜まると…漏れ出す…?」
「そうっす。そしてさんざん苦しんで…結果色々あって死にます。だから、今のまま人間の状態で力を蓄え続けることは、長くは出来ないんです。」
“色々あって死にます”それほどまでに怖い言葉があるか??は、はよ仕上げとやらをして貰わんと…いや、そのためにまずはなりたい種族を確立させて…
「はは、目に見えて焦ってますね。」
「当たり前やんか……!」
「まあまあ。焦らず決めればいいですよ。時間は……言うほど無いですが、あるにはあるんで、気楽にいきましょう?」
焦るなという方が難しい。だって死ぬんやぞ??死んだらもうゾムさんとも会えんくなるんやぞ?
「まあ、とりあえずは、どんな怪異になるか決めて、そしてその怪異になるという目的意識を忘れることの無いように。絶対ですよ。」
俺の焦りなんて知らぬ存ぜぬとでも言うように、ショッピくんはけろりと言ってのけ、部屋を出ていったのだった。
「なあ、大先生…ええ?」
「ん?どうしたんやちーの。そんな思い詰めた顔して珍しいやん。」
「大先生なら、色々詳しいかなって思って…」
「んー。できる限りの怪異と、その特徴を教えて欲しい?まあ、”仕上げ”するのも時間の問題やからな。早めに決めるのも悪くは無いけど…それホンマに俺に頼む事なんか?」
こちらをめんどくさいと語る瞳で見つめる鬱にそこをなんとかと両手を合わせる。
「大先生が1番聞きやすいし…頼れるんは兄さんしかおらへんねん!人助けだと思って!!」
ギュッと目を瞑り、合わさった両手を掲げてみせる。頼む、断ってくれるなよ。
「ええ…お前にはゾムがおる…………いや、ええで。引き受けたる。」
するとどうやら祈りが届いたのか、鬱は発しかけた言葉を止め、しばらく考え込んだ後オーケーと言ってくれた。
「あ、ありがとうございます兄さん〜!!」
「ただし、条件があるで!!」
承諾してくれた鬱に抱きつく勢いの俺を、鬱はそんな言葉と共に止めた。
「え…俺の血?」
「ああ。血を飲ませてくれ」
「なんで?」
吸血鬼とは、若い人間の血を好む。特に、若い女性の。そして鬱も例外ではないそうで。しかし騙して人間にかぶりつくだなんてとても出来ず、好物に飢えている…そこで、俺の頼みを聞く代わり、女では無いが若い人間である俺の血を飲ませてくれという事だった。
「なるほど…まあ、いいですよ。こちらから頼んだわけですし、できる限りの事はしたいですからね」
「ああ、ありがとうーちーの!!」
そして、教えてもらった怪異の話。
『エルフ』
怪異の中でも特に長寿な種であり、主に魔法が使える者が多い種族だそうだ。特に薬の調合のセンスが良いやつが多く、エルフ製の魔法薬にハズレは無いと言われる程。そして、エルフの女には美人の巨乳が多い。しかも血が美味しいらしい。
「最後の2ついりました?」
「ん?どれ?」
「血が美味しいってのと、巨乳美人が多いってやつです。俺が要らない情報話さなくていいです。」
「俺はいる情報やと思って話したんやけどなぁー」
えぇー、と渋った鬱は、その前話題を変える。
「じゃあ、これから1日二種類、紹介したる。そして、一体紹介したら1回血を吸う。これでええやろ?」
1日二種類…少ない気はするが、頼っている側なのだし文句は言わない方が良いかと思い承諾すると、すぐに鬱は俺の首元をはだけさせた。
「ち、ちょっと…もっと体制どうにかなりませんか?こんなとこ誰かに見られたら勘違いされて修羅場確定なんですけど…」
鬱が俺に抱きつく形になり、そして実際に鬱が俺の血を吸い始めたらその鬱は俺の首元に顔を埋めることになる。どうみたってそういう関係にしか見えないだろう。
「気にすんな。別に大丈夫やって。ほらはよ食わせろ」
「わ、わかったよ…どうぞ食べてください…」
目を瞑る。ぷつ、肌に何かが当たる感じがして、ちょっと怖い。けど、痛みはなかった。
「ん…ぢゅーッ……ちゅ、ちゅ…ぅ」
「ッひ!?…ちょ、な……なにこ、れ…」
血を吸われる。その吸われる感覚が予想していたものと大幅に異なり、思わず声が出てしまった。擽ったいような気もするけど、それ以上に気持ちいい。血を吸われるというのは、つまり相手に命を握られてるも同然。だってめっちゃ吸われたら死ぬやん?けど、気持ちいい。なんで?おかしいやろ
身体が、火照っていく。気持ち、いい。その感覚に手や、腰がぴく、と動く。それすらものともせず鬱は吸血をやめない。
「ちょ、ま…ッ……はぁっ…だい、せんせ!」
「あと、ちょっと飲ませてくれ…ちゅ、ちゅ」
「あ……っ……ッは、ぁ……ん……」
身体が、熱い。頭がふわふわする。気持ちいい。もっと吸ってほしい。そんな思考に支配されていくのがわかる。
「……ぷは、ぺろ。…ご馳走さん!ありがとなちーの!めっちゃ生き返ったわ〜!!」
「は、はぁ……っ……はっ……」
鬱が顔を離した途端、俺は力なく地面に膝を着いてしまった。身体に力が入らない。上手く頭が回らない。けれど、1つ頭にあることは、もっと、吸われても良かったってこと。それが異常な思考なのは分かってる。これも吸血鬼の力か…?
「ちーの大丈夫?立てる?」
「……むりです。」
身体が熱い。気づいたら、息も荒い気がする。こんなの、まるで興奮しているような…
「吸血鬼はな、血を吸わな生きていけへん。とくに、人間の血は栄養価が高いから、飲みたい奴が多い。けれど、人間は他の生物よりも頭が良くて、簡単に吸血できやんのや。」
「だから、進化した。より、多くの人の血を吸うために、牙から人を高揚させる成分が出るようになってん。だから、多分ちーのは今それのせいでそうなってるんやろな。」
「な、なるほど……先に言って欲しかったです」
体勢だけでも、かなりこう…妖艶というかそういう雰囲気に見えるのに、俺がこんなんだったら尚更だ。…誰にも見られてないと思いたいが。見られてたら最悪すぎる。
「すまんな。…1回で沢山吸ってもうたから、今日はこれ1回で2種類分教えたるわ。状態回復してきたら話そうか。」
「はい……」
……また、吸われたい。そんな思考を振り払うように首を振り、鬱に向き直った。
「もう大丈夫か?しっかり鉄分取れよ。」
「はい。もう大丈夫です。では、もう一体の話聞かせてください」
「ああ。ええで。」
鬱が教えてくれた、もう一体の種族。それは『ハーピー』。
主に、鳥と人が混ざったいわゆる獣人と呼ばれるような種族。人間社会でも、ファンタジーや神話上の生物として親しみを持たれている。全体の性別の割合で言えば圧倒的にメスが多く、俺がそれになるのだとすれば貴重なオスのため、何者かに狙われる確率も高まるとのこと。
「ハーピーもなぁ、血がこう、鶏肉的な旨みがあるから美味いねんなぁ。」
「鶏肉ですか……」
「おん。あと、ハーピーはエミさんやサイコウみたく人間に擬態することは出来んから、それになったらもう人間社会とはホンマにおさらばやな。」
人間社会に馴染める怪異と、馴染めない怪異がいることは、ここ数週間で理解した。まず、ゾムさんやひょう太朗などの異形はそもそも存在すら悟られぬようにしないと何が起こるかわかったものではないので、人間社会に出れない。エミさんや最高や鬱先生やトントンやシャオロンは人間に擬態、または元から近しい姿をしているのでそのまま出ても大丈夫。ただしシャオロンは、満月の夜だけは姿が変わるのでその夜は人里に出ることは出来ない。
そして特例としてショッピ。彼はそもそも幽霊であり、魔力や妖力を保持していない普通の人間には見えないのでどちらとも言えない。
つまり、ゾムやひょうみたいに人間と永久に関わることの無いようにするか、エミさん達みたいに人間と共存して生きていくか、という選択肢があるのだ。
「なるほど…よく分かりました。ありがとうございます兄さん」
「おう。そんじゃ、今日は終わりやな。また明日もご馳走待っとるで〜」
「あしたは吸いすぎないでくださいね」
鬱に別れを告げ、部屋を出る。
「ハーピー…か。俺、鳥好きやねんな…。」
それから毎日二種類、大先生には沢山教えてもらった。西洋から東洋までたくさんの種類を。
『アマビエ』『1つ目小僧』『鬼』『九尾』『天狗』『青坊主』etc…
『サキュバス・インキュバス』『スライム』『セイレーン』『ドワーフ』『ドラゴン』etc…
話してもらって、血をあげて、また鬱の話を聞いていく。そんな日々がしばらく続いたある日のことだった。
俺が、トントンとゲームしてるとき。
「ゲホッ」
「え…」
手に何か、着いた。なんだこれ、赤い。
「ち、ちーの…!それ…ッ血!」
「え。あ……ほんとや」
手に付着したのは、赤黒くて生暖かい血。…でもなんで?血を吐くなんて…
「お前…!もう魔力も妖力もとっくに人間の許容量オーバーしとるやないか!!」
ああ、もう俺の身体は魔力と妖力でいっぱいいっぱいになってしまったのか。不覚だった。
「急いで”仕上げ”を…あ、そもそもちーのは何になるか決まってんのか!?」
「うん…まぁ。」
「えーっと、それはなんなんや?」
・ ・ ・
「ええやん。ちーのにぴったりや。じゃあ、もう”仕上げ”しても大丈夫やんな!今すぐ全員で相談して誰にしてもらうか決めんで!はよせんと死ぬからな!」
「え。ちょ、まッ!!……ゲホッゴホゴホ!」
「ちーのはよ!」
そしてトントンに手を引かれて、今日は珍しくみんないる談話室へ。
「ちーのが死ぬ!もう何になるかは決まっとるらしいから”仕上げ”すんぞ!」
トントンの声に皆一斉こちらを向いた。
「はぁ!?ちーの血だらけやんか!」
「え、血を吐くほどやばいん?もうギリギリやん!なんでもっと早くやらんかったんや!」
「それは!お前らが自分がやるって駄々こねるから!!」
「やっぱここは間をとって俺がやるしか無かったんよ。俺が1番ちーのと仲ええし」
「君は幽霊だから出来へんやろ!」
「じゃあ俺やりましょうか?」
「ひょうと人間!?過激にも程があるやろ!」
「じゃあ、俺が。」
「お前はただの宇宙人やから仕上げできんやろが。」
「流石にいつも血飲ませてもらってるし僕やろ!」
「は?初耳なんやけど。」
「あ……いや、ゾムさん違うんですよゾムさんッゾム!ゾムやめッ!!」
「お前らうるさいぞ!!ええから早く決めろや!チーノが死ぬやろが!そんな揉めるなら俺がやろか!?」
トントンの怒鳴り声に皆静まる。そしてまた、視線がこちらに集まった。
「…え、じゃあ何になるん?ちーの。ちーののなりたい種族に1番近い種族のやつとやればええやん。そうすれば成功率も上がるし」
ゾムさんがそう問うてくる。 おれは…
・ ・ ・
「なんでゾムやねん!俺やろ!?同じ動物系やぞ!」
「お前は西洋だからダメや。」
「なんでやぁ~!!」
「なんで俺じゃないんや!?俺は同じ日本の、神を守る存在なんやで!?近いやろ!」
「まあ、ゾムさんは付喪神やからな。神本人の方がそれには近いやろ。山の神として崇められることもあるくらいやし」
「くっそぉ~……」
皆が多種多様な反応をする中で、俺の隣に来たゾムさんが言った。
「お前には、まだ”仕上げ”が何か話してなかったよな。話すのが遅くなってすまん。今説明するな」
「はい!お願いします!」
「”仕上げ”ってのはな、人が完全に怪異に変化できるように、体内に入り交じった妖力や魔力をまとめてひとつの力にして体に慣らす作業やねん。まず、ちーのがなるのは日本の妖怪の類やから、体内にある魔力もぜーんぶまとめて妖力に変換する必要がある。そのためには、今怪異として生きてるやつの体液が必須なんや。」
「ち、ちょっと待ってください。体液ですか…??」
「おん」
質問に、ゾムさんは何らおかしなことでは無いが…という態度で平然と返してくる。その表情が読み取れないボウリング頭が今はちょっぴり怖い…
「え、と…もっと具体言うと…?」
「精液」
「エ”ッッ!!!」
身体が、ぶわっ!と熱を帯びたのが分かる。嘘だろ?つまり、つまり俺は…!
「俺はそのど、どうやってそれを受け取るんです?ゾムさん…から」
「そりゃ、中出ししかないやん」
「な、なか……ッ」
「ちーのは男やから問題ないやろ?…人間は女しか孕まないって聞いてんねんけど」
「は、はい…はらみ、ませんけど……でもその中出しって本当に必要なんですか?そ、の…体液なら他の方法でもいいんじゃないですかね……?例えば唾液とか…血液とか…」
「いや、精液が一番効率ええねん。」
ゾムさんはきょとん、としている。ああ、人外ってやっぱ、人に限りなく近いけど、どこかに感覚の違いがあるんだ…。嘘、おれゾムさんと性行為するん?しかも初回から中出し??嘘やん。いや、俺はゾムさんのこと好きだからええんやけど心の準備というかなんというか
「でな、力が全て妖力に変わったら、それが体に馴染んで言って、体が変化していく。それに2日くらいかかるねんけど…その…その2日が、人間からするとだいぶ地獄らしいねん。」
「ほう…?」
「2日の間、ずっとその妖力に身体を犯されてる状態やねんな。で、人間ってのはそういう刺激には慣れてへんやろ?だから、なんて言うんかな……」
ゾムさんが言い淀む。でも俺はなんとなく察した。これはあれだ。俺が想像している通りの答えが返ってくるやつだ。
「……つまり?」
「快楽地獄や。ずっと気持ちいいままの2日間を過ごすことになる。」
「あ”~!!やっぱりねぇ!!??」
叫んだ拍子にまた吐血する。ゾムさんはそんな俺の血を拭ってくれた。
「ちーの、俺らはお前を死なせたくないねん。その…辛いとは思うけど耐えてくれ。」
「…ゾムさん……分かりました。頑張って耐えます!俺!」
ゾムさんは嬉しそうに、微笑んでくれた。…多分。
そして来たのは俺の自室。
「じゃあ、早速始めよか。」
「は……はい」
ゾムさんのベッドに押し倒される。これがゾムさんがいつも使ってるベッド…!!
「ちーの、まず上脱げる?」
「は、はい脱げます!」
上を脱いで、上半身を露わにする。するとゾムさんの手が俺の胸に伸びてきて……なんか揉まれてる!!??
「なんか意外に柔らかいねんな。ふかふか」
「そ、そうなんですね……っゲボ!」
これは……恥ずかしい。とくに男性の胸とは性的なものという扱いは受けないのだが、それでもこう…実際にこのような手つきで触られるのは恥ずかしいと感じる。
「あ、すまん…こんな事してる場合じゃないな。はよ妖気をまとめんと…」
ゾムさんはそう言うと、胸から手を離して俺の下腹部に触れてきた。ああ……俺は童貞より先に処女を卒業してしまうのか……!
ずるり。ズボンとパンツを一気に引き抜かれた。ああ、俺ゾムさんとヤるんや…
「じゃあ、ローション垂らすから。ちょっと冷たいかもしれん。」
「はい……」
ゾムさんはローションを俺の後孔と自分の、手袋を外した指に垂らす。そして、その透明な指を俺の後孔に宛てがって……
ずぷッ!と、挿入した。ゾムさんが指を動かす度に、水っぽい音が部屋に響く。俺はというと、異物感に内心首を捻っていた。ちょっと苦しいだけだ…と。油断していたのだ。けれど、その油断は次の瞬間には打ち砕かれる。
「ッあ”!?」
突然、全身に電流が走ったかのように快感が俺を襲った。ゾムさんが俺の中のある1点を掠めた途端、身体がびくんと跳ね上がる。
「あ……ここか」
ゾムさんはそう呟くと、そのしこりを集中的に責め始めた。俺はもう声を抑えることも出来ずに喘ぐことしか出来なかった。
「ん”っ…あ、そこ、きもち、きもちいですッ♡」
「気持ちいい?それは良かった。」
「きもち♡から、ッちょ、と…弱めてほしッ♡♡」
「弱める?分かったわ。…こんくらいでええ?大丈夫?」
ゾムさんの指の動きが弱くなり、やっとまともに息ができる。
「ふーッ♡あ、っう♡気持ちい…です♡ゾムさんすごい…」
「ん、良かったわ。じゃあ続けるな」
ゾムさんはまた指を動かし始めた。今度は先程よりも優しく、ゆっくりとした動きで。
「あっ♡あ…ッゾム、さん♡優しい…すき♡すきです♡♡」
「うん、知っとるで…ちーの。なあ、そろそろ、本番やってもええかな…?」
ゾムさんはそう言うと、後孔から指を引き抜いた。その刺激にすら感じてしまう。
「ん……はー…っ♡」
「じゃあ、挿れてええんか?」
ゾムさんの言葉に俺はこくり、と頷いた。そしてゾムさんはいつものコートを脱ぐから、もう顔以外の体のパーツがどこにあるか、全く分からない。「……ちーの、挿れるで」
「はい……」
ゾムさんは多分今、それを俺の後孔にあてがってる…そして、ずぷぷぷ…との音と共に、それが入ってきた。
「ッ…♡あ…♡」
「大丈夫か?ちーの」
ゾムさんが心配するように俺の顔をのぞき込む。
「だ、大丈夫ですッ…から……♡全部挿れて下さい♡」
「……分かった。痛かったらすぐ言うんやで」
ゾムさんが更に俺の中に入り込んでくる感覚がある。指の比じゃないくらい、大きくて熱いモノが……俺の中に…。
「ちーの、全部挿入ったで……」
「あ゛ッ♡う、ぞむさん、の…おっきい…♡」
「すまん、苦しいか?こればっかりは慣れてくれ。…じゃあ、動くで?ちーの」
ゾムさんがゆっくりと動き始める。最初は苦しさもあったが、次第に快感の方が勝ってきた。
ずぷッ♡ずちゅん♡と、いやらしい音が部屋に響く。
「……っあ♡あ、あ”〜♡♡きもちい♡ゾムさ……♡♡」
「俺も気持ちええよ……ちーの……」
「良かったぁ……♡♡ね、すき♡ゾムさん♡キスして?♡お願い♡♡」
俺がそう強請ると、ゾムさんは少し躊躇うような仕草を見せた後……キスをしてくれた。再開した日と同じ、唇に当たるのは冷たい感覚。
けれど、それが嬉しかった。
「ん……ッ♡んんッ♡♡ぷは……」
「ふふ。ちーの可愛ええな。」
ゾムさんがそう笑ってくれるから、俺も嬉しくなる。ああ、幸せだ。
「あ”っ♡…そこぉ♡もっと突いてくらさ……♡♡」
「ン?ここ?」
「ッあぁ~…♡♡そこ♡そこすきれす……ッ♡♡」
ゾムさんが俺の一番敏感な所を刺激してくる。その度俺はだらしなく嬌声を上げて、背をしならせた。うーん、恥ずかしい。
「あ”ッ♡ん、ん……ッ♡」
「ちーの、そろそろイくか?」
「は、はいぃ……も、いきそ…♡」
ゾムさんの言葉にこくこくと頷く。するとゾムさんは更に動きを早めた。
「あっ♡ん”、んん〜ッ♡♡」
「っは……」ゾムさんが俺の中に欲を吐き出すと同時に俺も果てた。
ちょっと、幸せ、過ぎないか…?ゾムさんは自身を俺からずるりと引き抜き、コートを着直した。
「あー、と。もう暫くすると…身体の変化が始まるからな。」
「はい……ゾムさん、ありがとう」
「ん。」
ゾムさんはちょっと照れ臭そうにそっぽを向いて、一言だけ返してきた。
どくん!
「う゛ッ!?」
身体が芯から熱くなる。暑くて、熱くてたまらない。
「始まったみたいやな…」
「あ……っ、ゾムさ、これ……ッ」
「大丈夫やで、ちーの。俺らが着いとるから。な。」
ゾムさんが優しく笑う。安心、する。
けど、身体の異常は止まらない。息苦しくて、あつい。
「はぁ……っ、はぁっ♡ゾムさん、あつい…」
「そやな…」ゾムさんに言ったってどうにも出来ないことなんて知ってるけど、言葉に出したくなってしまう。つらい。つらい…。
「ゾム~!終わった~?」
ゾムさんの部屋のドアが、大きな音を立てて開く。そこにいるのは、シャオロンだ。
「ああ、シャオロンか。仕上げ終わって、今変化が始まったところや。」
「お、ちーの苦しそうやな」
シャオロンはそう言いながら俺の元へ寄ってくる。
「しゃお…ろ…♡おれ…ッ」
「おーよしよし。大丈夫やで~」シャオロンは俺の頭を撫でてくれる。
「他のみんなは?」
「あー。ジャンケンで順番決めて来たから談話室。」
「そっか。……じゃあ、シャオロンにちーの任せてええの?」
「ええよー。俺がしっかり面倒見たるから安心せい」
「じゃあ…よろしく。ちーのも、頑張ってな」
ゾムさんはそれだけ言うと、部屋から出ていく。
「ん…ッう…♡なん、で…こんな…♡」
触られてないのに、さっき、ゾムさんと交わっていた時みたいに気持ちいい。
「はーッ♡…ッあ゛ー♡う…う♡」
「もうイきそうなん?人間って結構繊細なんやなぁ」
シャオロンは俺の頭を撫でてくる。
「ほーらよしよししたるよ。安心して絶頂してええで笑」
シャオロンの手が、頭に添えられる。むかつく…!むかつく、けど…それどころじゃない…!
「は……ッあ♡いく……♡いぐ…ぅ゛♡」
「ほら、イっちゃいな」
シャオロンが耳元で囁く。ぞくぞくとした快感と共に俺は絶頂を迎えた。
「はぁ……っ!あ……♡あー……ッ♡」
もう、寝たい。けどまだ、身体は熱いし苦しいし、刺激が絶え間なく与えられる。
「い…った゛の…に゛♡」
「キツそうやなぁちーの」
「うる…せッ……あッ♡あ”ぁ~ッ♡♡」
シャオロンは、口だけではキツそうだとか寄り添ってくるけど、行動では俺を無視して、俺の下腹部を優しく撫で始めた。
「あ”ッ!?♡♡ちょ、よけい…な、こと…ッひ”ぁ…♡♡する、なぁ゛…♡」
「えー?だって暇なんだもん」
「うッ……あ”ぁ~ッ♡♡♡や、だ……♡も、むりぃ゛……ッ♡」
またイった。もうやだ。早く終わってくれ。
「ちーの、今どんな感じなん?教えて?」
「……っはー♡はぁーっ♡……しぬほど……つらい……」
もう、本当にしんどいのだ。地獄という言葉がまさにお似合い。
「あたま…おがしく゛…な゛る…♡」
「……おかしくなっちゃえよ。」
シャオロンは何かを言うけれど、俺はよく聞き取れなかった。その間にも、俺の身体は熱くなり、疼きが止まらない。
「ちーの?」
「な、に……♡」
「さっきゾムとヤった時、気持ちよかった?」
「……っえ?あ………うん…♡」
「そっかぁ……」
そう言うと、シャオロンは俺の耳元に口を近づけた。
そして……一言だけ言った。
「じゃあさ……俺ともシてみぃひん?♡」
「……へ?」
欲に支配される身体はずっと気持ちいいし、ビクビクと鬱陶しい。けれどその身体を優しく撫でる奴がいる。
「ちーの」
シャオロンは真剣な顔で俺の目を見つめた。その目には情欲が滲んでいる。
「俺はな、ちーののこと助けたいんやで?」
シャオロンは俺を押し倒した。そしてそのまま俺に口付ける。
「んッ!?」
「ふ……ちゅ……」
舌が入ってくる。ゾムさんとは、絶対できない深いキス。
「ん、ふッ♡は……ッ」
「ぷは……。可愛いちーの」
シャオロンが優しく微笑んでくれる。気持ちいいけど…俺には…ゾムさんが…!
「しゃおろ、俺は…ぞむさんが…!♡」
「好きなんやろ?だからここに来たんやん。…知っとるよ。」
シャオロンはそう言うけれど、行為を辞めない。
「ちーの、今だけでええよ。お前が魅了とか関係なくゾムが好きなのは知ってるけど、今だけは俺を見てや…お願い」
シャオロンはまた俺にキスをした。今度は触れるだけの優しいキス。
「ちーの、俺はお前のことが好きだよ。それは、俺だけに限らず…な。」
シャオロンは絡んでくる。けれと俺はそれに抵抗できない。だってもう、身体が疼いて仕方がなくって、気持ちいいことに頭が支配されそうで…。
「ちーの、俺を見てくれ。今だけで、ええから…」
シャオロンは弱々しく呟く。もう……仕方ないのだ。今だけだから……こいつに身体を預けてしまおう……。今はただ、熱くて苦しくて仕方ないのだ。俺は小さく頷いた。するとシャオロンは嬉しそうに笑って、俺の身体に手を伸ばした。
1度行為が終わっても、体の疼きはやまない。なんなら、どんどんとその強さを増している気がする。
「ちーの…その、どう?1人の時と、誰かとヤってる時、どっちが楽?」
「ん゛ッ♡は、ぁ……っ♡そんな、の…♡だれかと、のほうがぁ…♡幸せだし…ッきもち、いいよ♡♡」
「そっかぁ」
それだけ言うとシャオロンは俺の身体を撫で始めた。その手つきはとても優しくて気持ちよくて…でも、とても寂しい。
「なあちーの。もしも俺らがさ、ほんとにみんなちーのの事大好きでしゃーなくて、この2日間ちーのとみんなでヤりたいって思ってたとしたら、どうする?みんなにヤらせる?」
「へ……?」
シャオロンの突然の発言に、思わず間抜けな声が出た。
でも、もしそうだったら……。
「それ…は……♡やって…欲しいくらいだなぁ♡♡」
快楽に支配された脳は、俺の理性を無視して言葉を紡ぐ。そんなことしたら…!とか、俺はゾムさんが好きなのに…!とか頭に思い浮かんでは一瞬で消えてしまう。
「じゃあさ、ちーのが俺らとヤりたくなったらいつでも呼べよ。この2日の間ならさ、俺らはお前んとこすぐ駆けつけるし」
「うん…♡」
「じゃあ…1発やったら帰ってこいって言われてんだよね。寂しいと思うけど…また。」
シャオロンはそう言うと俺の額に軽くキスをした。そしてそのまま部屋を出ていった。
俺は一人になった部屋でぼんやりと考える。俺は、みんなとヤるんだろうか?このマンションにいる、みんなと?鬱先生と、トントンと、エミさんと、ショッピと、最高と、ひょう太朗と?
「は…ッあ”っぅ…♡」
いや、俺はゾムさんが好きで、みんなとヤるなんてとても…いやでも、もうシャオロンとはヤってるわけだし…
「ぃ…う゛ッ♡~~ッ゛ッ゛♡♡……ッはぁ”…♡」
もう、吹っ切れてしまってもいいのでは?そもそも今から俺は怪異になるわけだし…人間の倫理なんて気にしなくていいよな。そうだよな。
「ふ…ッ♡ふ…ッ♡ッァ゙ぁあ”♡」
ゾムさんは、許してくれるかな。こんな、浮気者でも。
きっと、笑顔で許してくれますよね…?
「ふ……ッう゛♡ん、ンンッ♡」
絶頂を繰り返しながら俺は考える。ゾムさんへの謝罪の言葉を。でも口から出るのは淫らな声ばかりだ。
「あぁッ♡♡♡またイクぅ゛ッ♡♡あァア”ッ♡♡♡」
ビクビクと身体が震える。快楽で頭が塗りつぶされそうだ。
「はぁッ♡あ……ッ♡も、だめ……♡」
ゾムさん、ごめんなさい。俺、あなたの事大好きなのに、シャオロンともエッチしちゃいました。でも、だれかとエッチしてるとなんだか心地よくて、やめられなくなる。もう、正常な判断ができない。ごめんなさい、ゾムさん…
ガチャっとドアが開く音がする。誰か入ってきたみたいだ。
「ちーの〜おつかれ~。調子どうや?死にそう?」
「あ”…ぇ…ッ♡とん、と…♡♡」
トントンだ。俺は彼を認識した瞬間また軽く絶頂を迎えてしまう。
「あぁあぁ…すげーな。思ったより大変そう…」
トントンが、近づいてくるから、俺はその袖を引く。
「ね…とんとん♡いっしょに…ッきもち、よくなろ…?♡♡」
「……ええよ。」
トントンはそれはそれは優しく笑ってくれた。その笑みに、また身体が熱くなるのを感じながら、トントンと…一緒に…。
「は…ッ……は…ッ」
酸素を取り込む。朝日を浴びて、ようやく訪れた静寂を噛み締める。
「はぁ……ふー……」
自分の身体が、変化しきった。
ふと、コンコンとドアが音を立てた。
「はぁい……どうぞー。」
腰が抜けて動けないから、勝手に入ってきてもらうしかない。入ってきた相手は、ゾムさんだった。
「…おはよう。ちーの」
「おはようございます」
ゾムさんは俺の隣に腰かける。
「もう、終わったんやね」
「はい。…とても長かったです」
俺はそう言って微笑んだ。ゾムさんは相変わらずの異形頭でどんな表情かは分からないけれど、微笑んでくれてる気がする。
「羽、綺麗やね。似合っとるで」
ゾムさんは、俺の羽をそっと撫でた。その感覚が、しっかり伝わってくる。感覚が無ければまるで取って付けたような飾りにしか思えないのに。それはしっかりと俺の背から生えていた。
「烏天狗…いい種族やない。ちーのにもよく合っとる」
「へへへ…ありがとうございます」
この、尖った耳も、背中から生えた黒翼も、最初からあったみたいにしっくりくる。ああ、俺人間じゃなくなったんや。
「ゾムさん」
「ん?」
「……本当にごめんなさい。俺、貴方のことが好きだなんて抜かしながら…皆と…交わってしまって…俺は屑の淫乱です…」
これは懺悔だ。昨日一昨日、俺は妖力に犯されていたとはいえ、皆と大人びた関係になってしまった。それは一途とは言い難く、人が言うところの「浮気者」にあたる。それはとてもゾムさんには失礼で…場合によっては傷つけるような行為だ。ゾムさんの顔を見ることが出来ない。今はその顔を見るのが怖い。
「…ええよ。別に」
ゾムさんが口を開いた。その声はとても優しいものだった。
「仕方ないやん。身体の変化は辛いことやから、少しでもちーのが軽くなったんやったらよかった。」
「けど……俺…」
「ええねんって。昨日一昨日は特別やった。シラフんときにちーのの意思で他の奴と性交するんとは意味が違うやん。だからそんなに自分を責めなくてええねんで」
ゾムさんは俺の頭に手を置いた。そして優しく撫でてくれる。
「ちーのは、怪異になってもまだ俺のこと好きなんやね」
ゾムさんは以前人間である俺が怪異の力に中てられて、ゾムさんのことが好きなのだと錯覚していると言った。だから、それには応えられないと。
けれど、人間じゃなくなってもその気持ちが変わらないのなら、それは、ゾムさんが言っていた”魅了”のせいではなくて、俺が単純にゾムさんに惚れていたという証明になる。
「…はい。勿論です」
「そか……魅了は、関係なかってんな」
「はい」
ゾムさんの手が止まる。
「俺の方が、よっぽどちーのを傷つけてたんや。よっぽどちーのの気持ちに失礼やった。……ごめんな」
ゾムさんはそっと俺を抱きしめた。その感覚が、温かい。
「なあ、ちーの、俺さ、お前のこと好きやで」
「え……っ?」
ゾムさんは俺を抱きしめる力を強めた。痛いくらいに強く、けれど痛みなど吹っ飛ぶほど優しく。
「ずっとちーのを蔑ろにしてきた。アホな俺をお前は許してくれるか?…俺もお前のことが好きや。番になって欲しい。」
ゾムさんの言葉に胸が締め付けられる。それは俺がずっと望んでいたこと。ゾムさんと、両想いになるという夢が叶う日が来たのだ。
「はい……!俺も、貴方のことだいッだい…大好きです!!なれるものなら…なりたい!ならせてください!!」
そうして双方が気持ちを伝え合い、どちらからともなくキスをした。俺も彼の背中へと手を回す。しばらくそうして抱き合っていた。唇に触れるのは冷たい感覚のはずなのに、前よりもちょっと、温かい気がした。
「好きです…ゾムさん」
「俺も好きや、ちーの」
ゾムさんはそう言うとそっと離れて行った。
「じゃあ、今後は他の奴と性交とかせんといてな?約束やで」
「はい、もちろんです」
ゾムさんは俺の頭をポンと叩く。その感覚が心地いい。
俺とゾムさんは、結ばれた。たくさんたくさん、大変なことがあったけれど、それを乗り越えられた。そう考えると、俺はとても嬉しくて、胸が高鳴るのを感じる。背中の羽もパタパタと嬉しそうに動く。
けれど、ここに居るみんなの気持ちを俺は知ってしまった。彼らの気持ちに答えられない以上、彼らの気持ちを踏みにじることはしたくない。…俺は、彼らとは以前と同じく仲良く出来れば良いと思っている。それは、決して簡単なことでは無いと思うし、そこは俺が頑張っていきたい。
これからも、俺の人生は続いていく。人間としてではなく、烏天狗としての新しい人生。ボーリングを好きになったことで、ここまで人生が変わるとは思っていなかったけれど、今までと違う生活というのは、別に不幸ではない。むしろ、好機だとも捉えられるのだ。これからは、普通の人にはできないユニークな生活が待っているのだから。
苦労することもあるのかもしれないけれど、新しい未来に心躍らせ、俺はゾムさんの隣に駆けた。
はい!!
ここまで読んでくださりありがとうございました!作者の夕暮です!!
どうですか?夕暮としては珍しい愛され風味です。みんなと結ばれる感じじゃなくて申し訳ないですね…
本当は、ciがこれからどういう風にしてみんなと仲良くしていくのかとかも詳しく書きたかったんですけど…なんせ字数が多すぎるんですね。2万越えですよ!!
連載にするかも迷いましたけど…やっぱ私は連載向いてないんで完結しないで放置される未来しか見えませんでした…だからそこらへんは皆様のご想像にお任せという形で…!!
最近は、翼の生えたciの概念に狂ってますね…前回の研究員と鳥とボウリングもそうですし。…ファンタジー生物が大好きなんですよ。天使とかもそうですし、妖怪とかUMAとかね。好きなんで今作は本当に書いてて楽しかった。
では、あとがきもここらへんで終わりたいと思います。ここまで読んでくださり本当にありがとうございました!!では、おつぐれ〜!