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ユキが身支度を整え、リヴァイに促されて食堂へ向かおうとした、その時だった。
「リヴァーイ!起きてるかーい!」
ドアがノックされる間もなく、大きな音を立てて開いた。同時に、ハンジ・ゾエが目を見開いて突入してきた。その後ろには、静かに笑みを浮かべたエルヴィン・スミス団長の姿がある。
ハンジはユキの顔を見るなり、キラキラと目を輝かせた。
「おや、ユキじゃないか!顔色はもう大丈夫そうだね!良かった!」
ハンジはユキの周囲をぐるぐると回りながら、熱心に顔を覗き込む。
「昨日のリヴァイったら、君が熱を出したって聞いて、**『てめぇの健康管理ができていないからだ!』**って怒鳴りながら、誰よりも早く俺たちの薬箱をひっくり返して解熱剤を探していたんだよ!ああ、まったく、まるで父親のようだ!」
「おい、ハンジ。余計なことを喋るな」
リヴァイは血相を変えて、ハンジに向かって一歩踏み出した。
「うるさいな、リヴァイ!事実だろう?リヴァイの部屋が、普段よりも清潔な無菌室レベルになっていたんだからね!徹夜で雑菌を駆除したんだろう?まさか、この服も、熱湯消毒済みかい?」
ハンジはさらに畳み掛けるように、リヴァイの白いシャツを指差す。
リヴァイは怒りで顔を真っ赤にし、すでに普段の仏頂面すら保てていない。
「四つ目、てめぇ……今すぐその口を縫い付けてやる!」
「待て、リヴァイ」
ここで、エルヴィンが静かに口を挟んだ。
「ハンジの言うことも一理ある。リヴァイ、君が看病で疲弊したなら、今日の団長会議の資料作成は私の方で担当しよう。もちろん、君が徹夜で看病にあたっていたという事実は、兵団内で広く共有するべき情報だろう?」
エルヴィンは、まるで巨人討伐の作戦を練るかのように、淡々と、そして優雅にリヴァイを追い詰めていく。
「やめろ、エルヴィン!てめぇまで加担するな!」
リヴァイは珍しく声を荒げ、ユキを背後に隠すように一歩前に出た。
ユキは、そんなリヴァイの背中を見て、笑いをこらえるのに必死だった。ユキにとって、人類最強の兵士長が、看病の事実を知られるのをこれほど恐れる姿は、何よりも愛おしく思えた。
「ユキ。彼は昨晩、君がうなされるたびに、優しく子守唄を……」
「ハンジーーー!!」
リヴァイの怒声が、兵団本部に響き渡った。
「すまないね、ユキ。彼の看病が熱心すぎて、我々も心配していたんだ」
エルヴィンは静かにそう言うと、リヴァイに聞こえるか聞こえないかの声で、ユキに囁いた。
「この調子では、今日の会議どころではないな。リヴァイをなだめるのは、君の特別な任務としておこう」
そしてエルヴィンは、リヴァイの怒りの炎に油を注いでいるハンジを連れて、颯爽と部屋を後にした。
「ああ、愉快愉快!リヴァイ!ユキにたくさん甘やかしてもらって、熱を出した分隊長の仕事を全て肩代わりできるように元気になってくれよ!」
ハンジの笑い声が、廊下に遠ざかっていく。
静寂が戻った部屋で、ユキは背中越しにリヴァイの制服をそっと握った。
「リヴァイ、兵長命令です。私を抱きしめてください」
ユキがそう言うと、リヴァイは深い溜息をついた。そして、怒りではなく、深い愛情を込めて、ユキを強く抱きしめた。
「……勝手にしろ。ただし、この恥をかかされた借りは、必ず利子をつけてあの二人に返してやる」
彼はそう宣言したが、その声はどこか嬉しそうに聞こえた。