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「玲沙、好きだ」
中也さんに初めて告白されてから二年。顔を合わせる度に同じ事を云うのは止めてほしい。
「何度云えば判ってくれるのですか。私は太宰さんが好きなんです!」
ついムキになってしまうし、何より心が痛む。
「いやぁ、傑作だったよ!あの怒りと恥しさが混合した様な、何とも云えない表情!」
そんな事で此処まで喜べるのかと云うほどに、太宰さんは笑っていた。幾ら嫌がらせが成功したとは云え、たかが嫌がらせだ。若しくは、其れほどまでに嫌っているのか。
取り敢えず、「嫌がらせのお手伝い、一応しましたよ」と云った私に返ってきた太宰さんの第一声が其れだ。
「本当に面白かったよ!私の事を呼びながら現れたかと思えば、拳を握りしめて、今にも殴り掛かりそうなまま止まって。只管私の悪口を云って消えてったよ」
「·····そうですか。ふっ」
想像したら、笑いを堪えきれなかった。可愛い。本人には絶対に云えないけど。
「あの、何時まで続ければいいのでしょう?私、また云われたら·····」
「あれ、若しかして。中也の事好きになった?」
「な、何で判るんですか!?」
「何となく?」
「·····まぁ、そうなんですけど。」
「何時まででも善いよ。君の気が向いたら止めるといい」
そう云う訳で、若し次が有れば、絶対に断らないと決めていたのだが。気持ちを伝えるのには勢いが必要らしい。
二回目の告白は、見事に断ってしまった。
なんてこと。
いざ云おうとすると恥しくなってしまい、どうしようと考えているうちに、云いたい事とは全く別の言葉が出てきてしまう。
其れを繰り返しているうちに、二年も経ってしまった。
因みに、私のその悩みを作ったと云っても過言ではない太宰さんは、今は探偵社の一員になってしまった。
「適当に止めていいよー」と云って消えるなんてずるいと思う。
そんな回想をしている場合ではなかった。中也さんが会ってそうそう、そんなことを云ってくるから気が緩んだが、これから仕事だ。
気持ちを(顔も)引き締めて、気合いを入れる為に首元のリボンをきつく結んだ。
「よしっ」
「そんな気ィ引き締めなくてもいい。俺がいるだろ」
「っ·····。自分の身は自分で守れます」
顔に熱が集まってきた気がして、足を速めた。
そろそろ隠すのも限界かもしれない。