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吐き気に耐えきれず、俺はトイレの便器の前にしゃがみこんでいた。
喉の奥は何度も痙攣するけど、身体が拒むのか、なかなか吐けない。
「だめだ……出ない」
弱々しく呟いた声に、涙が混ざった。
そのとき、背後から若井の声が聞こえた。
「元貴、俺がいる。無理すんなよ」
静かに近づいてきた若井は、俺の肩に手を置き、そっと背中をさすり始めた。
その温かさに、少しだけ気持ちが落ち着く。
「吐け、吐くんだ」
優しく、でも強く促す声。
俺は何度も喉を震わせ、やっとのことで苦い液体と薬の破片を口から溢れさせた。
若井はすぐにティッシュを差し出し、俺の背中を撫で続けた。
咳き込みながらも、若井の手のぬくもりに支えられ、少しだけ楽になった気がした。
「よく耐えたな」
彼の声は震えていたが、確かな優しさがあった。
俺は涙を拭い、弱々しくも感謝の言葉を呟いた。
「ありがとう、若井……」
その夜、苦しみの中にも、ほんの少しだけ救いが差した気がした。
若井は微かに笑い、手をぎゅっと握り返した。
「お前が苦しむのは、俺には耐えられないんだ」
その言葉に、俺は少しだけ胸が締め付けられた。
若井の想いが、痛いほど伝わってきた。
その夜、吐き気と苦しみの中にも、
二人の間には、言葉にできない絆が静かに育まれていた。
その瞬間だった。
若井の鼻から、ぽたぽたと赤い血が滴り落ちた。
「えっ……?」
驚いて目を見開く俺に、若井は慌ててティッシュを鼻に押し当てた。
「ご、ごめん……急に鼻血が…」
顔を赤らめて照れくさそうに笑う彼の姿に、俺は思わず苦笑してしまった。
「なんでこんな時に鼻血なんて出すんだよ」
弱々しく冗談めかして言うと、若井は真っ赤な顔で「バカ」とだけ呟いた。
その後も若井はずっと、俺の手を握ったまま、そっと寄り添い続けてくれた。
苦しみの中で、一瞬のふざけ合いが生まれたことが、妙に心に沁みた。
その夜、吐き気と痛み、そしてほんの少しの温もりを感じながら、俺は静かに目を閉じた。